高額な商品を購入する際はクーリングオフが出来るのか事前に分かっていると安心ですよね。でも、クーリングオフは全ての取引や契約で利用できるものではありません。そもそも対象外の場合があります。
では、不動産のような極めて高額な取引を行う場合、クーリングオフの制度はどのようになっているのでしょうか?この記事では、不動産売買でのクーリングオフ制度について詳しく紹介しています。
不動産の売買は基本クーリングオフ出来ない!
クーリングオフは、正しい判断ができずうっかり契約をしてしまった時に契約を白紙に戻すための法律です。
ポイントはうっかり契約をしてしまった場合です。なので、不動産など高額な取引をうっかり結ぶケースはほとんどないので不動産の売買では基本的にクーリングオフができません。ただし、契約相手と申し込みを行った場所が例外だった時はクーリングオフの適応が認められます。なお、不動産売買でクーリングオフを適応させる条件は2つあり、どちらも満たしていなければなりません。
条件1 契約した相手は誰?
契約相手が個人の場合はそもそもクーリングオフの対象になりません。例えば、親せきや友人、知り合いなどから不動産を購入した場合です。クーリングオフの対象になるのは、取引相手が宅建事業者の場合のみです。
宅建事業者とは、主に不動産の取引で収益を上げている事業者を指します。具体的には、宅地建物取引業の免許を持っているかどうかが基準です。
条件2 申し込みをした場所はどこ?
2つ目の条件は不動産売買の申し込みをした場所がポイントです。クーリングオフの対象になるのは、冷静に正しい判断が出来ないような場所で申し込みをした場合です。宅建業法の37条の2項では以下のように定められています。
宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約について、当該宅地建物取引業者の事務所その他国土交通省令・内閣府令で定める場所(以下この条において「事務所等」という。)以外の場所において、当該宅地又は建物の買受けの申込みをした者又は売買契約を締結した買主(事務所等において買受けの申込みをし、事務所等以外の場所において売買契約を締結した買主を除く。)は、次に掲げる場合を除き、書面により、当該買受けの申込みの撤回又は当該売買契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。
特に注意が必要なのは、マーカーを引いた「事務所等において買受けの申込み・・」の部分です。つまり、事務所等で申し込みをした場合は、クーリングオフの対象になりません。逆に、事務所等以外の場所は冷静に正しい判断が出来ないような場所だと認められるわけです。では、事務所等とは具体的にどんな場所なのでしょうか?
宅建業法でいう事務所等とは?
事務所なら不動産屋さんのお店なんだろうと見当が付きますね。なので重要なのは後ろについている『等』の部分です。事務所等に含まれる場所は全部で3つです。
事務所等に含まれる場所 | 具体例 |
1.事務所 | 不動産屋のお店、店舗 |
2. 土地に定着していて、宅建士の設置義務がある場所 | 住宅展示場、案内所、継続的に営業可能な事務所以外の場所 |
3. 買主から申し出た場合の、買主の自宅や勤務先 | 買主の自宅、買主の勤務先 |
1つ目の事務所はそのまま不動産屋さんのお店や店舗なので問題ありませんね。ゆっくり落ち着いて申し込みが出来る場所なのでクーリングオフはできません。
2つ目の土地に定着していて、宅建士の設置義務がある場所のポイントは「土地に定着していて」の部分が重要です。例えば、住宅展示場の前に机を一つ置いただけでは土地に定着しているとは言えませんよね。なので、事務所等には含まれません。上に簡素なテントを張っても同様です。事務所等には含まれません。しかし、継続して営業が出来るような建物がある場合は事務所等に含まれます。雨風の影響を受けず安心して申し込みが出来ますからね。
3つ目の買主から申し出た場合の買主の自宅や勤務先は「買主から申し出た場合」のみです。売主から申し出た場合は無効です。
以上が、事務所等に含まれる場所です。紹介した3つの場合以外で申し込みをした場合はクーリングオフの対象になります。
条件を満たしていても対象外になるケースがある
ただし、取引相手が宅建業者、かつ事務所等に含まれない場所で申し込みをした場合でもクーリングオフができない場合があります。それは、クーリングオフが可能な期間を超えた場合です。クーリングオフが可能な期間は書面でクーリングオフが可能な旨の説明を受けた日から8日以内です。
さらに、不動産の引き渡しが終わり、代金の全額を支払った場合もクーリングオフが出来なくなります。
- 書面でクーリングオフが可能な旨の説明を受けた日から8日を過ぎるとクーリングオフが出来なくなる
- 不動産の引き渡しを受けて、代金を全額支払ってしまうとクーリングオフが出来なくなる(不動産の引き渡しが終わっていても、代金の一部しか支払っていない場合はクーリングオフの対象)
この場合クーリングオフできる?できない?
不動産の売買に伴うクーリングオフ制度はトラブルに備えて詳細になっていますね。一度見ただけでは分かりづらい部分もあるので、いくつかのケースでクーリングオフが出来るのか?できないのか?考えてみましょう。
【ケース1】近くの喫茶店で申し込みをした場合
ケース
回答
【ケース2】展示場の中で申し込みをした場合
ケース
回答
【ケース3】代金を支払ったけど登記が済んでいない場合
ケース
回答
どうしても判断できない場合
クーリングオフの対象になるかどうか判断が難しい場合は公的機関を利用して相談しましょう。
(電話相談) 電話:03-5320-4958(直通)(面談相談:当日受付)
相談窓口:新宿区西新宿2-8-1 都庁第2本庁舎3階北側 不動産業課内
窓口受付時間:都庁開庁日9時~11時、13時~16時
実際にクーリングオフをするには?
続いて、クーリングオフの手順と記入例を見ていきます。
参考 クーリング・オフ(テーマ別特集)国民生活センタークーリングオフでの注意点
クーリングオフを利用する際に一番注意しなければならないのは、必ず書面で行う点です。口頭や電話では言った言わないの水掛け論になってしまいます。
クーリングオフを行う際はハガキや手紙にクーリングオフをする通知の内容を記載して、「特定記録郵便」か「簡易書留」で販売元の不動産会社に送ります。わざわざ、配達記録を残すのはクーリングオフの意思を通知した事実をしっかりと残すためです。
郵便の記録方法 | 料金 |
特定記録郵便 | 通常料金+160円 |
簡易書留 | 通常料金+310円 |
いずれも、必ず郵便局の窓口で手続きが必要です。ポストに投函はできません。ただし、特定記録郵便の場合は日曜日に配達がなかったり、直接手渡しでの配達ではないのでどちらかといえば簡易書留の方がお勧めです。簡易書留なら配達員さんが受領のサインをもらってくれるのでより確実です。
書面の書き方は?
続いて書面の書き方を見ていきます。 ちなみに、クーリングオフの書面は決まった書式がありません。ネットで検索するといくつも記入例が出てきます。書面の書き方はポイントさえ抑えて書けば難しくありません。
通知書類の記入例
通知書の記入例を紹介します。
不動産売買でのクーリングオフ通知書の記入例
文言は記入例と全く同じにする必要はありません。記入した日付、相手先と自分の住所と名前、解約の意思、それと契約内容の詳細が記載されていれば十分です。
不動産に関するクーリングオフについてのまとめ
不動産の売買契約は基本的にクーリングオフの対象になりません。あくまで、申し込みを行った場所が例外的だった時のみ余地があります。さらに、クーリングオフの期間は8日間と非常に短いです。
いざクーリングオフを利用しようと思っても期日を間違えていたり、期限を過ぎていた場合は無条件で対象外になってしまいます。何よりもまず、不動産の売買では慎重に契約を結ぶようにして下さい。