不動産の買い替えでは税金が大きな負担になります。できれば支払う税金は少しでも抑えたいですよね。そこで注目なのが特定居住用財産の買換え特例です。
特定居住用財産の買換え特例を利用すれば税金が実質非課税になるケースがあります。 マイホームの買い替えを検討している方にとっておきの特例です。詳しく見ていきましょう。
特定居住用財産の買換え特例とは?
特定居住用財産の買い替え特例とは、本来なら不動産を売却した時点で発生する税金の支払いを一旦ストップして、再び不動産を買い替えた時のみ税金が課せられる制度です。ただし、買い換える不動産は売却した不動産よりも高い金額でなければなりません。
特例の概要
特定のマイホーム(居住用財産)を、平成31年(2019年)12月31日までに売って、代わりのマイホームに買い換えたときは、一定の要件のもと、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができます
引用:国税庁|No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例
もちろん、税金の支払いを先延ばしにしているだけ税金を支払う義務がなくなるわけではありません。ただ、一度しかマイホームの買い替えをしなければ実質的には非課税になる可能性があるわけです。特定居住用財産の買換え特例の仕組みをもう少し詳しく見て行きましょう。
税金が発生するタイミング
通常、不動産の買い替えでは売却して利益が出た時点で税金が発生します。
ちなみに、不動産を売却して出た利益に対して支払う税金は譲渡税です。
ところが、特定居住用財産の買換え特例を利用した場合、最初の買い替えで利益が出てもすぐには譲渡税の支払いが発生しません。
ただし、再び不動産を売却した場合は譲渡税の支払いが発生します。
なお、支払う譲渡税の金額は最初の買い替えで支払うはずだった金額と2回目の売却で発生した金額を合算して計算します。例えば、もともと1,000万円で購入していた居住用の不動産を5,000万円で売却して6,000万円の不動産に買い替えたとします。
その後、再び不動産の売却を行い6,000万円で購入した不動産を今度は7,000万円で売却しました。
この場合、2回目の売却で発生する譲渡税は1,000万円を対象に計算しますが、1回目の売却では4,000万円の利益が出ているので譲渡税は5,000万円を対象に計算されるのです。
特例の特徴をまとめてみます。
- 1回目の売却では譲渡税の支払いが発生しない
- 2回目の売却で譲渡税の支払いが発生する
- 譲渡税は1回目の売却と2回目の売却で出た利益を合算して計算する
以上が特例の仕組みです。続いて、対象条件も見て行きましょう。
特例の対象条件
特定居住用財産の買い替え特例を利用できれば大きな節税効果が期待できます。ただし、特例を利用するには条件を全て満たしていなければなりません。
対象条件は全部で10項目
- 自分が住んでいる、もしくは以前住んでいた家
- 売った年を含めて3年以内に他の特例を受けていない
- 売買する不動産は全て国内にある
- 売却代金が1億円以下である
- 売却する不動産には10年以上住んでいる
- 買い換える不動産は建物の床面積が50平方メートル以上で、土地の面積は500平方メートル以下である※注
- 家を売った年の前後1年以内に買い替えた家に住む
- 買い替える家が耐火建築物の中古住宅の場合、築25年以内もしくは一定の耐震基準を満たしている
- 買い替える家が耐火建築物以外の中古住宅の場合、築25年以内もしくは取得期限までに一定の耐震基準を満たしている
- 買親子や夫婦などの身内に対して売ったものではない
※注 50㎡=約15.1坪 500㎡=約151坪
3年以内に利用してはいけない他の特例
3年以内に不動産の買い替えに伴う他の特例を利用していた場合、特定居住用財産の買い替え特例が利用できなくなります。なお、3年以内に利用してはいけない他の特例は以下の3つです。
- マイホームを売ったときの軽減税率の特例
- 3000万円特別控除
- 特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
マイホームを売却して利益が出た場合の所得税率は30%です。ところが、所有期間が5年以上であれば特例を利用して税率を半分以下に抑えられます。
所有期間による所得税率の変化 | ||
---|---|---|
5年以下 | 5年以上(特例利用) | 10年以上(特例利用) |
30% | 15% | 10% |
マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡税の対象金額から3,000万円の控除が受けられます。
参考 No.3302 マイホームを売ったときの特例国税庁ローンが残っているマイホームを売却した際に、売却金額がローン残高を下回る場合は特例が利用できます。売却額とローン残高との差額を他の所得から控除して所得税を抑える特例です。なお、売却した年に全ての差額を控除出来なかった場合は、翌年以降の3年以内まで繰越て控除できます。
参考 No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき国税庁一定の耐震基準とは?
買い換える居住用の不動産が中古不動産の場合は、築25年以内もしくは新耐震基準に対応していなければなりません。
建築物の設計において適用される地震に耐えることのできる構造の基準で、1981(昭和56)年6月1日以降の建築確認において適用されている基準をいう。新耐震基準は、震度6強~7程度の揺れでも倒壊しないような構造基準として設定されている。
なお、新耐震基準を満たしているか不安な方は、売り主さんに「建築確認通知書」があるか確認をしてもらいましょう。もし、「建築確認通知書」を紛失していたら、管轄の自治体で発行してもらえる「確認台帳記載事項証明」から耐震基準の確認ができます。
参考 耐震基準、改正のポイントや適合証明書について解説ホームプロ特定居住用財産の買い替え特例を利用するにあたって対象条件に合致しているか不安な方は国税庁の相談窓口で問い合わせてみて下さい。
参考 税についての相談窓口国税庁特例を利用する際の注意点
特例の対象条件を確認してみるとマイホームの売却に伴う特例が複数あり、利用者の選択性になっていたのが分かります。 では、あなたが利用すべき制度は本当にマイホームの買い替え特例で間違いないのでしょうか?
売却金額によっては他の特例が効果的?!
マイホームの買い替え特例は税金の支払いを先延ばしでき、場合によっては実質非課税になるのが特徴でした。 しかし、売却金額によってはさらに魅力的な特例があります。対象条件で触れた3000万円の特別控除です。
マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡税の対象金額から3,000万円の控除が受けられます。
参考 No.3302 マイホームを売ったときの特例国税庁譲渡税の対象金額とはマイホームの売却額から、必要な経費を差し引いて残った純粋な利益です。なお、譲渡税は対象の金額に税率をかけて計算されます。
不動産の売却でかかる費用を徹底解析!手元に残るのはいくら?もし、3,000万円特別控除を利用すれば、純粋な利益から3,000万円を控除した金額が税金の対象になります。なので、そもそも利益が3,000万円を超えなければ所得税は発生しない計算になります。この場合、買い替えの特例を利用していれば所得税が実質非課税になる(かもしれない)のに対して、3,000万円特別控除は確実に非課税になります。
マイホームを売って出る利益が3000万円を下回りそうな時は3,000万円の特別控除もぜひ、視野にいれて特例制度を検討してみて下さい。
不動産の買い替えに伴う特例についてのまとめ
特定居住用財産の買換え特例はマイホームの買い替えで大いに活躍が期待できる特例です。とはいえ、魅力的な特例制度は他にもあって売却金額によっては3,000万円の特別控除の方が効果的なケースもあります。
もちろん、いずれの特例も対象条件を満たしていなければ利用できませんし、手続きも必要です。まずは、ご自身が利用できる特例制度を再度確認してどのタイミングでどのような手続きが必要なのか調べてみましょう。
参考 税についての相談窓口 国税庁