不動産の売却で不動産会社に支払う仲介手数料の上限額は決まっています。 なのに、利用できる媒介契約にはいくつか種類がありますよね。「専任」「一般」などなど結局どの媒介契約を結ぶのが賢いのでしょうか?
一般媒介契約とは
不動産の媒介契約を大きく分けると一般媒介契約と専任媒介契約の2つに分けられます。 まずは、一般媒介契約について見ていきましょう。
複数の不動産と契約して効率UP
一般媒介契約は複数の不動産会社と同時に契約ができるので、さまざまな買主にあなたの物件を知ってもらえるチャンスが広がります。もし、駅チカなどの好立地にある物件なら不動産会社も営業しやすいので、割と早くに買い手が見つかるかもしれません。さらに、一度に複数の不動産会社から営業をしてもらえるので、相場よりも高い値段で買主が見つかるケースもあります。
- 優良物件は早く売れる可能性が高い
- 相場より高く売れることもある
明示型と非明示型
一般媒介契約はさらに明示型と非明示型に分かれます。一般媒介契約は複数の不動産会社と媒介契約を結べるのが特徴ですが、明示型の場合、どの不動産会社と媒介契約を結んでいるかそれぞれの不動産会社に通知する義務があります。一方、非明示型の場合はそれぞれの不動産会社に契約している他の不動産会社を通知する義務はありません。
一般媒介契約の種類 | 通知義務の有無 |
明示型 | あり |
非明示型 | なし |
明示型の場合、媒介契約を結ぶ会社が増えるとその都度、契約済の会社に通知をする手間が掛かるので少し面倒ですね。
一方、非明示型は通知の義務がないので、契約している不動産会社はそれぞれ何社と契約をしているのか分かりません。 さらに、お互い競合が分からない非明示型なら、不動産会社も必死に営業を頑張ってくれるのでは?と考えられそうですが実際は逆です。
実は、一般媒介契約をするなら明示型を選択した方が早く決まるかもしれません。 理由は非明示型の方が不動産会社にとって不利だからです。
明示型の場合、どこの会社に依頼しているかがはっきりわかります。もし、競合している不動産会社がライバル会社だった場合「○○不動産には絶対に負けたくない」とか「××不動産が苦手なのはどんな物件か」など、契約している不動産会社は情報をもとに、なんとなくでもどれくらい頑張ればいいのか目安を立てられます。
一方、非明示型の場合、闇雲に営業をしなければならないので不動産会社は不安です。 もし、頑張って営業をしても他の不動産会社に先に決められたらそれまでの苦労は水の泡です。そうなると、最初から全力で営業をするのはリスクが高いですよね。
すぐにでも売れそうな人気物件なら非明示型でも十分買い手が見つかるかもしれません。 でも、一般的には明示型の方が売却できる見込みは高くなりそうです。
しかし、実際には一般媒介契約を利用する人はそれほど多くありません。 なぜなら、一般媒介契約の物件では不動産会社はそれほど広告費を掛けてくれないからです。
不動産の取引では広告が重要です。大手の不動産会社をはじめネットやチラシなど様々な媒体を駆使して不動産の営業を行っています。 しかし、一般媒介契約では同じ物件を競合の不動産会社と一緒に営業するので、もし先に売られてしまうとそれまで掛けた広告費を回収できないのです。
やはり、一般媒介契約は不動産会社に不利な仕組みになっています。
さらに、一般媒介契約では営業活動の報告義務がなく、売不動産会社が本当に頑張って営業しているのか分かりません。そのため、売主にとっても不安要素が大きいのです。
専任媒介契約とは
専任媒介契約は一社とだけ契約を結ぶ媒介契約です。不動産会社は定期的に営業活動の進捗を報告する義務があり、売主は専任媒介契約を結んでいる不動産会社意外を通して売買契約をした場合、違約金が発生します。
- 不動産会社に営業活動の報告義務がある
- 専任媒介契約を結んでいる不動産会社意外と取引をした場合は、違約金が発生する
一般媒介契約に比べて、不動産会社は嫌でも頑張らないといけない契約形態です。 売主は他の不動産会社と契約ができないので、自分のところで売らないと依頼を受けた物件はいつまでたっても売れません。
しかも、定期的な報告義務があるので専任媒介契約は不動産会社にとって負担が大きい内容になっています。 でも、他の不動産会社に契約を横取りされるリスクは完全になくなります。なので不動産会社は安心して営業活動に専念できます。 広告費を掛けても契約に結びつければ費用は回収できます。そのため、チラシやDM、ポータルサイトなどなど、あらゆる広告媒体を利用して営業活動を頑張ってくれます。
専任媒介契約の種類
なお、専任媒介契約は報告の頻度と売主自身が買い手を探せるかどうかでさらに専任媒介契約と専任専属媒介契約の2つに分けられます。
専任媒介契約の種類 | 報告頻度 | 自分で買い手をさがせるか |
専任媒介契約 | 2週に1回 | 探せる |
専任専属媒介契約 | 週1回 | 探せない |
専任媒介契約の場合、媒介契約をしている不動産会社は2週間に一度、営業活動の報告をしなければなりません。さらに、売主自信でも自分で買い手を探して来られるのが特徴です。 一方、専任専属媒介契約の場合、報告頻度が週に1回と専任媒介契約に比べて多くなります。また、売主自身は自分で買い手を探すのも禁じられます。
なので、専任専属媒介契約にすると売主の自由度が一気に下がります。もし自分で買手を探してきた場合は違約金を支払わなければなりません。
ただ、専任専属媒介契約は不動産会社にとっては100%営業活動を邪魔されない保証が付きます。そのため、不動産会社はとりっぱぐれがありません。交渉次第では仲介手数料を事前に値下げしてもらえる場合もあるようです。
さらに専任媒介契約を詳しく!
売り手にとっても不動産会社にとっても専任媒介契約の方がメリットが多そうですね。でも不動産の売買では本当に専任媒介契約が正解なのでしょうか?最後に専任媒介契約についてもう少し詳しく紹介していきます。
レインズとは?
一般媒介契約に比べて専任媒介契約が支持される理由は他にもあります。それはレインズへの登録です。専任媒介契約を結ぶとあなたの物件はレインズに登録され、多くの不動産会社から閲覧されるようになります。
レインズとは、Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)の略称で、迅速に取引の相手方の探索を行い、成約可能性を向上させるために構築された不動産業者間の物件探索システムです。 「専任」もしくは「専任専属」媒介契約の売り物件は、レインズに登録されることとなっています。
引用元:売却依頼主物件確認案内書
レインズの登録義務はそれぞれ媒介契約ごとに決められています。
媒介契約の種類 | レインズの登録義務 |
一般媒介契約 | なし |
専任媒介契約 | 媒介契約締結後7日以内 |
専任専属媒介契約 | 媒介契約締結後5日以内 |
レインズに登録されている不動産情報は全ての不動産会社が閲覧できるようになっています。そのため、レインズに掲載されると買い手が見つかる可能性が格段にアップするのです。
レインズに物件情報が掲載されるのは売り手にとって販売チャンスを広げるチャンスであり、買い手にとっても効率的に物件を見つけ出せので双方にとって非常に大きな役割を担っています。
囲い込みによる不正
しかし、レインズに登録されたからといって安心はできません。なぜなら、不動産業界には「囲い込み」と呼ばれる悪質な不正行為が存在するからです。
不動産会社の理想は両手取引
例えば、レインズに掲載されたあなたの物件に興味を持った不動産会社が、あなたと専任媒介契約を結んでいる不動産会社に問い合わせをしてきたとします。 その際、問い合わせに応じて契約が成立すればあなたの物件はめでたく売却できますよね。
でもその場合、あなたと専任媒介契約を結んでいる不動産会社は売主であるあなたからしか仲介手数料をもらえません。
実は、あなたと専任媒介契約を結んでいる不動産会社が自分で買主も見つけてきた場合、売主であるあなたと買主の両方から仲介手数料がもらえるのです。
これを「両手取引」と言います。それに対して、片方からしか仲介手数料がもらえない場合を「片手取引」と言います。
不動産会社はできれば両手取引で売主であるあなたと買主の両方から仲介手数料をもらいたいのが本音です。なので、他の不動産会社から「物件を見せて下さい」と問い合わせが来ても「今ちょうど商談中なんです」や「購入予定が決まっています」など何とか言い訳をして購入を阻止しようとする場合があります。
もちろん、すべての不動産会社ではありません。中には、そういった売主にとって都合の悪い不動産会社も存在するようです。
レインズの登録確認
また、最悪の場合レインズの登録さえもやってくれない不動産会社があります。そのため、レインズでは自分が売却依頼をしている物件がちゃんと登録されているか確認できる手段を用意してくれています。
まとめ
一般媒介契約に比べて専任媒介契約の方が成約率が高くなるのは納得できます。ただし、専任媒介契約を結べるのは1社だけです。どの媒介契約を結ぶとしても、一度契約をすると期間満了(3ヵ月)までは解約できません。 媒介契約は複数の会社を比較して、安心して任せられる不動産会社に依頼したいですね。