不動産を売却するうえで一番悩むのが「売るタイミング」です。なるべく高く不動産を売却するための時期はいつなのか?何を判斷材料に売却するべきなのか?
情報が溢れているなかで、抑えておくべきポイントを整理すれば、不動産の資産価値を最大限に売却に活かすことが出来ます。
不動産売却のタイミングを見極める4つのポイント
- 市況から見たタイミング
- 季節から見たタイミング
- 築年数から見たタイミング
- 税制から見たタイミング
市況から見た売却タイミング
以下のグラフは、過去10年間の東京都の土地価格と東京23区の中古マンション価格の推移です。
過去10年間を振り返ると、土地やマンションの価格には波があります。2008年に大きなピークを迎えますが、リーマンショックが起こり急激に相場が下落しました。2013年以降は景気が回復し上昇しています。今後2020年の東京オリンピックまでは好況が続くのではないかと予想されます。
不動産の価格には景気に影響されるため、タイミングを逃すと同じ物件でも値幅が生じます。ピークがいつ来るのかは誰にも分かりません。リーマンショックのような景気リスクが突発的に起こると一気に下落します。
季節から見た売却タイミング
これは年間を通じての相場の変動です。日本においては、4月と9月に入学や就職で流動的になります。引っ越しシーズンは変動しないので、非常に分かりやすいです。
特に4月は子どもの新学期が始まるので多くの世帯が引っ越しをします。そのため、マンションや戸建住宅などの需要は高くなり、2~3月にかけて高く売却できます。逆に4月は新生活が始まっているため、売れません。転勤も同じで会社から事前に伝えられるので、2~3月に駆け込みで購入する方が多いのです。
築年数から見た売却タイミング
不動産の資産価値は11~15年目までは10%程度の減少ですが、築15年以上になると下落のカーブが急にきつくなります。その後、15年~30年にかけては価格の下落が続き、一定の価格に落ち着きます。
また、戸建は築15年以上になると、設備の修繕費用等が大きく発生するため、急激に価値を落とします。戸建は土地価格の影響が強いので、下落幅は大きくはありません。築26年以降ほとんど下落しないのは、建物価値が「0」となり、実質的に土地価格で取引されるためです。よって、戸建の場合は、築15年までが売り時です。
マンションは築25年目以降、かなりの勢いで下落していきます。マンションは新築の購入需要が高く、築0~5年で2割程度下落します。マンションは築6~15年の間はなだらかですが、築15年を超えると急激に下落します。マンションの場合は、築6~15年の間にかけてが売り時です。
税制から見た売却タイミング
不動産を売却して譲渡所得が発生すると所得税を納めます。所得税に関しては、所有期間によって税率が異なります。
税率は、所有期間が5年以下の短期譲渡所得と5年超の長期譲渡所得で分けられます。売却対象が住居用財産の場合は、「所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例」が適用され、さらに税率が下がります。
そのため、税制上のタイミングは、所有期間が5年を超えたタイミングで売却するのベストです。
不動産の「履歴書」を作成しよう!売り手「心配」より、買い手の「安心」
ここまで不動産売却の流れとタイミングをご紹介しましたが、売却の前にやっておかなければならない準備があります。
それは自宅の履歴書を作ることです。購入希望者へ自宅の履歴書を提示できるととても分かりやすく、好印象を与えます。近年は長期優良住宅に対して住宅履歴情報の保存が義務付けられたので、「住宅の状態を教えてほしい」という要望は今後ますます増えるでしょう。
住まいの履歴書に入れたい情報をまとめてみました。
- 施工写真
- 施工図面
- 確認申請書
- 施工関係者の情報
- 定期点検の記録
- リフォームや増改築の記録
- 災害が発生した場合は、その記録
「住まいの履歴書」は、設計・施工・維持管理に関するすべての情報を集めた資料です。いつ・誰が・どのように住宅に関わったのかが明確になるので、物件に対する信用度が高くなり資産価値も高まります。
また、売買物件として市場に流通させる場合も、適正な価値を判断する資料として利用できます。新築物件には業者の作成した詳細な資料がありますが中古物件にはないので、今後中古住宅市場では不可欠な判斷材料となるでしょう。
退去しても物件への愛着度は伝わる
もし自分が買主側だったら、現在住んでいる物件を欲しいと思いますか? もし「買いたいと思わない」としたら、物件の機能性も含め、どこを改善すれば「売れる物件」になるのか、自分の住まいを見直してみましょう。
「家をきれいに保つこと=メンテナンス」を欠かさないことで、買主が内覧をする際など「物件自体」にす好印象を与えます。住宅の履歴書だけでなく、買主とマッチングしやすい物件を意識しておくことで購入意欲に繋がります。
避けられない不動産の値崩れ・手残りを考えておく
不動産売却で避けられないポイントとして値崩れ・手残りの2つが挙げられます。
値崩れとは
築年数が古くなればなるほど、不動産の価値は減少します。売却のタイミングを逆算して住めば、ある程度自分の判断で、需要供給バランスと売値をコントロールできます。
手残りとは
不動産を売却における「売却益」です。所得税を支払うことになり、この所得税率は所有期間によって変わります。所有期間が5年を隔てて税率が変わり、さらに居住用財産で有れば10年を超えると税率が下がります。
不動産は相場の変動があるとはいえ、この2つは自分である程度市場価値を判断でき、売却時のタイミングをコントロールできるのです。
例えば、「自宅をバリアフリーに改築した」「マンションの大規模修繕が終わった」など、「履歴書」に新しい項目が追加された時には売却の判斷を検討しても良いかもしれません。
売却時に注意しなければならないこと
一戸建て・マンションを売却する際、公的な資料に不備があるとスムーズな交渉が進みません。売却する不動産の情報・状況について、どのような点に注意するべきか、詳しく見ていきましょう。
登記に相違はないか
不動産売買の際は、基本的に以下の書類が必要となります。
- (A) 身分証明書、実印、印鑑証明書、住民票【すべて所有者全員のもの】
- (B) 登記済権利書もしくは登記識別情報
- (C) 固定資産納税通知書もしくは固定資産税評価証明書
ここで注意したいのは、(B)の「登記済権利書もしくは登記識別情報」です。身内の相続や離婚などで、物件を購入した時点から所有者が変更されているのに登記の情報が更新されていないと、売買契約を進めることができなくなってしまう可能性があります。
戸建て・マンションの売却が決まったら、登記済権利書または登記識別情報を確認し、物件の所有情報に間違いがないか確認しましょう。自分で行うこともできますが、不安のある方は司法書士に相談して下さい。
住宅ローンは完済できる状況か
不動産の売却を検討中の方は、住宅ローン完済前での売却ケースも考えられます。不動産の売却は、「その物件の住宅ローンが完済されている」もしくは「売却したお金で完済できる」という前提で進める必要があります。
「売却後もローンを払い続ければ良いのでは?」と思われる方もいると思いますが、通常ローンには担保が付きます。担保にはローン対象の物件が含まれているので、売却してしまうとローンを継続できなくなるのです。
必ず相場を調べる
売却しようとしている戸建て・マンションの価格はどのくらいなのか?多くの方が「購入時の金額」でイメージしていませんか?
不動産相場は流動的です。想定した価格よりも値幅が上下している事は認識しておくべきです。売却価格をおおよそ決めたうえで相場のチェックを小まめに行うことが重要です。
最寄り駅周辺での都市開発やショッピングモール・工場などの建設が発表されると価値が急激に変動しますので、注意が必要です。
物件の相場を調べる方法は、大きく二2つあります。
- (Ⅰ) 不動産サイトなどで売却する物件と同地域の過去の販売額・価格帯を調べる
- (Ⅱ) 不動産一括査定サイトで複数の不動産会社から見積もりをもらう
売却にかかる期間
戸建て・マンションを売却する期間の平均はどれくらいなのでしょうか?
おおよそ、大体3~5ヶ月ほどと言われています。
戸建てはマンションと比べ、売却が成立するまでの期間は長くなり、マンションの売却期間よりも2倍の期間を要すると言われています。戸建てはマンションよりも手間がかかるのです。
不動産のベストな売却時期についてのまとめ
不動産の売却タイミングは築年数だけでは決まりません。市況や季節、築年数など様々な判斷材料を考慮しなければなりません。
また、戸建てとマンションでも売却方法が異なります。特に戸建ては「土地」も関係してくるので、登記などの確認が必要です。
不動産の相場は需要と供給のバランスによって変動します。ご自身の不動産の価値を高め、物件のニーズとして何が求められているのかを短期・中期・長期の期間で見極めることが大切です。