新築でシックハウスを予防するための基礎知識と素材選び

この記事では、シックハウス症候群を引き起こす要因の1つである「化学物質」の基本的な知識を解説したうえで、「素材選び」の点から専門家の意見をもとにシックハウスを予防する方法について紹介していきたいと思います。

今回ご協力頂いた家づくりの専門家
この記事は、天然素材にこだわった家づくりをしている、「株式会社天然住宅」の田中さんに伺った内容をもとに作成しています。

田中さん

シックハウス対策で最も大切なのは「予防」です。くれぐれも発症する“前に”、そして新築する“前に”、しっかり知識を身に着けて対策をしてほしいですね。

シックハウス症候群とは?

スタッフ

そもそもシックハウス症候群とは一体どんな病気なのでしょうか?

田中さん

化学物質カビなど、空気中に含まれる汚染物質が原因で生じる諸症状のことで、「めまい」や「頭痛」、「のどの痛み」「じんましん」「鼻水・鼻づまり」など、さまざまな症状を引き起こす恐れがあります。
シックハウス症候群の症状

スタッフ

症状は人によって違うんですね。

田中さん

はい。症状に個人差があるのはもちろん、突然発症してしまうケースもあるのでとても厄介なんですよ。

環境を離れると症状が軽くなったり、消えたりするケースがありますが、発症するメカニズムはまだ分かっていません。

なお、シックハウス症候群は重症化すると「化学物質過敏症(かがくぶっしつかびんしょう)」といった重い症状を引き起こしてしまう場合があります。 化学物質過敏症になってしまうと、洗剤やアルコールといった日常的によく使われる化学物質にも反応してしまったり、ごく少量でも症状が出てしまったりするので対策が難しくなります。くれぐれも発症する“前”に”対策をしましょう。

参考 シックハウス対策のページシックハウス対策のページ

シックハウスの原因となる化学物質

スタッフ

ちなみに、シックハウス症候群を引き起こす化学物質には、どんなものがあるのでしょうか?

田中さん

代表的なところでは既に建材への使用が制限されている「ホルムアルデヒド」などがあげられます。しかし、どの化学物質が直接原因になっているかまでは明らかになっていないので、特に制限なく使われている建材にも原因となる化学物質が含まれている可能性は十分にあります

「シックハウス法※」により現在使用が制限されている化学物質は、ホルムアルデヒドとクロルピリホスの2種類のみです。人体に影響が懸念されている化学物質は他にもありますが、いずれも一部制限されているだけで建材への使用は禁止されていません。 ※2003年に国土交通省より「建築基準法」に整備された法律

参考 建築:建築基準法に基づくシックハウス対策について - 国土交通省建築:建築基準法に基づくシックハウス対策について - 国土交通省

さまざまな建材に使われている化学物質

スタッフ

例えば、家のどんなところに化学物質が使われているのでしょうか?

田中さん

化学物質は、床や天井、壁などの見えるところはもちろん、壁内、床下、構造材などいたるところで使われる場合があります。
建物内で化学物質が使われている場所の例

田中さん

なお、一般的に「集成材」や「合板」に使われる接着剤には、何らかの化学物質が含まれている可能性が高いです。また、「ツーバイフォー」や「壁面枠組み工法」と言われる建て方は構造材に「合板」が使われます。

合板の断面。 年輪の異なる複数の木がボンドで貼り合わさって出来ているのが分かります。

「合板」は、フローリングや壁面といった見えるところだけでなく、下地や構造などにも使われるため、化学物質の取り扱いに気をつけている工務店さんであっても、建材の一部に化学物質が含まれている場合があります。

気密性の高い家は要注意

田中さん

さらに、建築技術の進歩により気密性」が高く隙間の少ない家が造られるようになったことで、シックハウス症候群を引き起こすリスクが高まっているのも事実です。

スタッフ

気密性が上がったことで快適に過ごせるようになった反面、今度は化学物質を含んだ空気が家の中に留まりやすくなってしまったわけですね。

2003年には「建築基準法」により、新築する全ての建物に24時間体制で換気が出来る設備の導入が義務付けられました

厚生労働省が発表したデータからは、翌年以降のシックハウスに関連する相談件数が減少したことが分かり、住環境を整えることでシックハウス症候群のリスクを抑えられるという事実が明らかになりました。

シックハウス関連の相談件数の推移

データ参考:科学的根拠に基づくシックハウス症候群に関する相談マニュアル(改訂新版)|厚生労働省

スタッフ

しかし、換気だけに頼るというのはちょっと心配ですね。 小さいお子さんや、体質的に敏感な人は同じ空間にいるだけでも化学物質に反応してしまうと聞きます。

田中さん

だからこそ、シックハウス対策では、なるべく化学物質が含まれていない「自然素材」を使って家づくりをするのが効果的なんですよ。

リフォームなどの前に、工務店や設計者と十分な話し合いを行い、自分の希望をしっかり伝えて材料選びを行うことが大切です。

引用:シックハウス対策のページ|厚生労働省

「自然素材」を使った住宅建材

スタッフ

「自然素材」といっても、具体的にはどのような建材を選べば良いのでしょうか?

田中さん

木材であれば国産の「無垢材」、仕上げ材には「漆喰」や「和紙クロス」などが一般的に良く知られています。
化学物質を含む施工例 天然由来の建材による施工例
木材 集成材、合板 無垢材
壁材 ビニールクロス ホタテの貝殻が原料の塗り壁
下地材 シーラー処理 「でんぷん」を含む自然素材
シロアリ対策 農薬系の駆除剤 ほう酸
ホタテの貝殻でつくった塗り壁

ホタテの貝殻を主成分にした塗り壁。樹脂系の建材が含まれていないのでホルムアルデヒドの影響を受ける心配がありません。

田中さん

特に、天然の木をそのまま切り出して使う「無垢」は、薬品による防腐・防虫処理がされていないので、「合板」に比べてシックハウス症候群のリスクを下げられると言われています

無垢の表面はコーティング加工がされていないので、さらっとした独特な触り心地が特徴です。蓄熱性が高く床材としても人気があります。

無垢材で建てられた家

無垢をふんだんに使ったお家の施工例。

引用:施工実績「記憶をつなぐ家」|天然住宅

無垢を使って建てるお家は、木が持っている本来の魅力が活かせるのも大きな特徴です。 例えば、建材になった無垢材から出る「フィトンチッド」という成分には森林浴の効果があり、防虫効果やリラックス効果、睡眠の質向上といった人に有益な作用があることが分かっています。

参考 フィトンチッドについておしえてください。:農林水産省フィトンチッドについておしえてください。:農林水産省
無垢材の調湿効果

無垢材の表面には「空隙(くうげき)」と呼ばれる隙間があり、水分を吸収・放出する働きがあります。そのため、室内の湿度がある程度一定に保たれるので、「カビ」や「ダニ」などの発生を抑える効果があるといわれています。

空隙が分かる写真

無垢材の表面の拡大写真。

引用:木材博士Dr.矢田の建築士のための木材講座

新築に「自然素材」を使うデメリット

スタッフ

自然素材を使うことによるデメリットはないのでしょうか?

田中さん

自然素材は大量生産ができないので、どうても価格が高くなってしまう傾向があります。また、「無垢材」は合板のように表面がコーティングされていないので、キズがつきやすいのも弱点ですね。
  • 価格が高くなる傾向がある
  • 無垢材は表面にキズがつきやすい

スタッフ

自然素材の家をできるだけ安く建てる方法はないのでしょうか?

田中さん

どこまで自然素材にこだわった家にするかで、使う素材が変わるので一概には言えません。また、作る人の「技術」や「こだわり」によっても費用は異なりますからね。

田中さん

コストを抑えて自然素材の家を建てるには、流通ルートの合理化やプランの規格化、産地の比較など、色々な工夫が必要なんですよ。

スタッフ

現状では、金額面で努力している業者さんを探して家づくりを依頼するしかなさそうですね。
無垢材の値段を抑える工夫

価格を抑える方法の1つとして、「無垢材を仕入れる流通ルートの改善がある」と指摘する田中さん。

従来の木材の流通ルート

従来の方法では、産地から製品になって市場に届くまでの間に、多額の「中間マージン」が発生しているのが現状です。 しかも、この方法では「森」に還元される利益が少なくなり、山の管理や経営維持が難しくなってしまう恐れがあるといいます。

中間マージンを削減した木材の流通ルート

そこで、田中さんは山から直接仕入れをすることで中間マージンを削減して、森に還元されるお金を増やすといった取り組みを行っているそうです。

新築のシックハウス対策についてのまとめ

スタッフ

シックハウス症候群のリスクや予防法が少し分かったような気がします。

田中さん

シックハウス症候群のようなアレルギー反応は、一度発症してしまうと本当に厄介です。不安な方はご予算などの兼ね合いも含めて事前にしっかり相談をして、家づくりをされてください。
「森を守って、健康、長持ち」の家づくり

この記事は、国産の無垢材を使い、「自然素材の家」を提供されている「株式会社天然住宅」の田中さんにご協力をいただいて作成しました。

伐採体験の様子

新築に使う大黒柱を建主さんご自身で切り出してもらう無垢材の伐採体験の様子。

価格を抑えた自然素材の家をもっと多くの方に広めたい」という思いで設立された「株式会社天然住宅」さんでは、森を守りつつ、住む人が健康に、そして長持ちする家を探求されています。興味がある方は、ぜひ問い合わせてみてください。

国産の無垢を消費して森を守ろう!

日本の国土の約68%は森林が占めています。しかし、その多くは人の手が入らなくなって放置されている森です。こうした森は土壌が育っておらず、最悪の場合、大雨や地震などの災害で土砂崩れが発生してしまう恐れがあります。 ところが、安く家を建てるためには安価な集成材を使わざるを得ません。集成材の原料となる木材の半分以上は海外からの輸入に頼っているのが現状です。

スタッフ

無垢の家を建てることは、シックハウス症候群のリスクを下げるだけではなく、元気な森を次の世代に繋げていくことにもなるわけですね。
合板に使われる原料の割合
天然住宅ホームページ
会社名 株式会社天然住宅
代表者名 田中 竜二
住所 〒188-0001 東京都西東京市谷戸町3-26-6 加藤ビル5F
電話番号 042-439-6262
公式HP https://tennen.org/
営業時間 10時〜18時 定休日:土・日・祝(打ち合わせは可)
主な業務 住宅・一般建築の設計・施工監理
対応エリア 設計:全国 施工:東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県

著者情報

コノイエ編集部

コノイエは、東京都港区に本社を置く株式会社アールアンドエーブレインズが運営するオウンドメディアです。累計80,000人以上が利用する「解体無料見積ガイド」の姉妹サイトとして、住宅関連コンテンツを発信しています。人が生活する基本となる「衣・食・住」の中でも、コノイエでは「住」にフォーカスして独自の情報をお届けします。

監修

中野達也

一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事
解体工事業登録技術管理者
公益社団法人 日本建築家協会(JIA)研究会員
一般社団法人東京都建築士事務所協会 世田谷支部会員

日本全国の解体業者1,000社超と提携し、約10年間で数多くの建物解体工事に関与。解体工事のスペシャリストとして、テレビ番組をはじめとする多数メディアに出演。大手から中小まで様々な規模の住宅メーカーへの販促支援、コンサルティング事業に携わり、住宅購入者心理の理解を深める。家を「壊す」ことと「作る」ことの双方に精通しており、全国の提携パートナーと共に家に関する様々な問題に取り組んでいる。

出演メディア
ひるおび!(TBS系列)、情報ライブ ミヤネ屋(日本テレビ系列)、バイキングmore(フジテレビ系列)、他多数...

当協会の運営サイト「コノイエ」は、工務店・ハウスビルダー・建築家・建築設計事務所等の500以上のインタビュー記事を掲載。また、新築・建て替えを検討中のユーザーにとって有益となる情報を発信しています。
当協会は、建て替えに伴うお住まいの取り壊しのご相談を年間で2,500件ほど承っており、各地域の住宅関連会社の情報が集まります。今後も「コノイエ」では、新築ユーザー様の発注先や評価、住宅関連会社様への独自インタビューといった当協会ならではの独自のリアルな情報をお届けします。


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