新築の住宅購入費用について調べていくと「諸費用(しょひよう)」という見慣れない言葉を目にすることがよくあります。 諸費用は、物件そのものの購入代金と同様に、住宅の購入時には必ず支払う費用です。
しかし、諸費用という具体性に欠けた名前の費用を目の当たりにして
「諸費用にはどんな項目が含まれているのだろう」
「一体どのくらいの金額が必要なのか」
といった、漠然とした不安を抱く方も多いかと思います。
本記事では、新築の購入時に必要な諸費用について、支払い方法、金額や項目の内訳を解説していきます。
また、購入する新築の物件の種類が、マンションなのか、建売住宅か注文住宅なのかによっても、かかる費用は異なります。
ご自身が購入を検討している物件の種類に注目しながら、ご覧ください。
新築の購入に必要な諸費用とは
諸費用の内訳や支払い金額について詳細を解説する前に、まずは諸費用とは何なのかを簡単にご説明していきます。
諸費用に関する基本的なことが理解できると思いますので、目を通してから読み進めてください。
諸費用は税金や手数料の総称
新築を購入する際にかかる費用は「物件の購入代金」と「諸費用」の2つの費用から構成されています。
新築の購入時には、印紙税や仲介手数料など、物件の購入代金とは別に数千円~数十万円単位の様々な費用が発生します。これらの税金や手数料などを総称して「諸費用」と呼びます。
諸費用は現金で支払う
物件の購入代金は数千万円単位と高額なため、一般的には住宅ローンを組み、30年~35年ほどの年月をかけて分割払いをします。 しかし、住宅ローン借入金に含まれるのは物件の購入代金のみで、諸費用に関しては現金で支払うことが一般的です。
また、諸費用と同じく現金で支払う費用に「頭金(あたまきん)」という費用があります。 頭金に関しては、住宅の購入代金の一部を現金で予め支払うものなので、住宅の購入代金をフルローンで支払うことで、頭金を0円にすることが可能です。
最近では、預金が少なかったり、手元に現金を残しておきたい人が、フルローンで住宅を購入なさるケースも珍しくありません。
フルローンでの購入を考えていた方も、諸費用の支払いに必要な現金だけは用意しておく必要があります。
なお、頭金について詳しくまとめられた記事もございますので、気になる方は合わせてご覧ください。
諸費用をローンで賄うリスク
原則として現金で支払う諸費用ですが、例外として「オーバーローン」を組むことが出来ます。
オーバーローンは、諸費用を支払うための現金が手元に無くても、家を購入できるメリットがあります。 しかし、オーバーローンには様々なリスクが伴うため、一般的には推奨されていない方法です。
オーバーローンを組むリスクは、下記の通りです。
オーバーローンは審査が厳しい
住宅ローンは、いくつかの基準をもって審査が行われ、融資が不利になる条件が複数ある場合は、ローン自体が組めなかったり融資額の減額などが行われます。
融資が不利になる条件の例としては、
- 年収に対しての返済比率が高い
- 自営業者など収入が安定しない職業に就いている
- 年齢が高く定年退職まで間もない
などがあります。
オーバーローンを組むこと自体も「自己資金が少ない人=貯金をする能力のない人」という印象を与えることになります。
そのため、オーバーローンの審査は、一般的な住宅ローンの審査よりも厳しくなる傾向にあります。ローンを組むこと自体が難しいため、利用者が少ないのも無理はありません。
オーバーローンは金利が高くなる
一般的な住宅ローンと比較して、オーバーローンの場合は金利が高くなる場合が多いです。
金融機関によっては諸費用を「住宅の購入に関わる費用」と捉え、住宅の購入代金と同じく住宅ローンに組み込むケースがあります。
住宅ローンは、購入代金に対する融資率が高くなるほど延滞のリスクが高くなり、金融機関は金利を引き上げる傾向にあります。 そのため、融資率が100%を超えるオーバーローンにおいては、住宅ローンの金利の中で最も高い水準まで引き上げられることが想定されます。
一方で、住宅の購入代金とは別枠の「諸費用ローン」として別枠のローンを組む方法を取る場合もあり、諸費用ローンは住宅ローンと比較して、元々の金利が高いことが多いです。
金利が上がることで総支払額も上がりますから、諸費用をローンで賄うことは得策とは言えないでしょう。
オーバーローンで購入した家は売却しづらい
住宅ローンを組んで購入した物件には、金融機関の抵当権がついており、抵当権はローン完済まで消えることはりません。
オーバーローンの場合、抵当権が消えるまでに相当な期間を要します。 持ち主の意思で物件を売りたい状況が訪れたとしても、抵当権が金融機関にあるうちは勝手に売ることが出来ないリスクがあります。
このように、オーバーローンには様々なリスクがあるため、ほとんどの方が現金での支払いを行います。
- ローンの審査が厳しくなる
- 金利が高くなる
- 家を売却しづらくなる
よほどの事情がない限り、現金での支払いを想定し、備えをしておくことをお勧めします。
諸費用はいくらかかるのか
諸費用は、原則として現金で支払う費用であることがお分かり頂けたかと思います。次は、諸費用の支払い金額はいくらなのかについて、解説していきます。
諸費用の金額は物件の種類によって異なる
諸費用の金額について目安を示す際に、代表的なのが「物件の購入代金の〇%」という割合で示す方法です。
新築で購入する物件の種類は、主に「新築マンション」「建売住宅(戸建て)」「注文住宅(戸建て)」の3つに分類されますが、物件の種類によって、物件の購入代金に対する割合が異なります。
これは、物件の種類ごとに、かかる費用とかからない費用があるためです。
物件の種類ごとの費用の目安
物件の種類ごとにかかる諸費用の、物件の購入代金に対する大まかな割合は下記の通りです。
新築マンション | 3~5%前後 |
---|---|
建売住宅 | 6~8%前後 |
注文住宅 | 10~12%前後 |
物件ごとに、かかる諸費用の割合は異なることが分かります。 マンションは比較的安く、注文住宅の場合は高額になることが分かります。
また、下記の表は、3,000万円、4,000万円、5,000万円のそれぞれの住宅を購入した時に、3%~12%の諸費用がかかった場合の、諸費用の金額を一覧にしたものです。ご自身が購入を検討されている物件の種類と照らし合わせてご覧頂き、ご参考になさってください。
3,000万円 | 4,000万円 | 5,000万円 | |
---|---|---|---|
3% | 90万円 | 120万円 | 150万円 |
4% | 120万円 | 160万円 | 200万円 |
5% | 150万円 | 200万円 | 250万円 |
6% | 180万円 | 240万円 | 300万円 |
7% | 210万円 | 280万円 | 350万円 |
8% | 240万円 | 320万円 | 400万円 |
9% | 270万円 | 360万円 | 450万円 |
10% | 300万円 | 400万円 | 500万円 |
11% | 330万円 | 440万円 | 550万円 |
12% | 360万円 | 480万円 | 600万円 |
ご自身が購入を検討されている物件の種類では、どの程度の諸費用がかかるか大まかにお分かり頂けたかと思います。実際に家を購入する時になって慌てることがないよう、多めに見積って準備をしておきましょう。
諸費用の具体的な項目
諸費用は、物件の種類によって、物件の購入代金に対する割合が大きく異なることがお分かり頂けたかと思います。 これは、諸費用には様々な項目があり、ケースバイケースで、必要な項目と不要な項目があるためです。
具体的にどのような項目があり、どのようなケースで必要なのかを、解説していきます。
新築の購入で必ずかかる費用
物件の種類やケースに関わらず、新築の購入時に必ずかかる諸費用の項目をご紹介していきます。
印紙税
「印紙税」は、いわゆる収入印紙代のことで、ある一定の金額以上の経済取引を行う場合に課せられます。
新築の購入において、印紙税が課せられる主な項目は下記の通りです。
- 土地や建物を売買する際の「売買契約書」
- 注文住宅を建てる際の「建設工事請負契約書」
- 金融機関から住宅ローンを借りる際の「住宅ローン契約書」
登録免許税
不動産を取得した際は、土地や建物が自分のものであることを第三者に示すための「登記」が必要になります。
「登録免許税」は、登記をすることに対して課せられる税です。なお、登記は、法務局の登記簿に記載することで完了します。
司法書士報酬
上記の登記をする際は、一般的に司法書士に手続き代行してもらいます。 その際にかかる「司法書士報酬」も、諸費用として考えられます。
なお、報酬の相場は5万円~10万円前後です。
融資事務手数料
「融資事務手数料」は、住宅ローン契約時に金融機関に支払う手数料です。 住宅ローンを組まない場合はかからない費用ですが、全額キャッシュで購入する方はごく稀だと思いますので、ほとんどの方が支払う費用だと言えるでしょう。
金融機関によってかかる費用は異なりますが、借入金額に対して1~3%程度の割合で決定するケースと、3~5万円程度で予め金額が決まってるケースがあります。
購入時のケースによってかかる費用
購入する時の状況や金融機関の定めによって、必要性の有無が変わる諸費用の項目をご紹介します。
ローン保証料
「保証金」は、万が一、住宅ローンの返済が滞った場合の備えとして、返済を保証する保証会社に支払うお金です。
なお、フラット35を利用して住宅ローンを組む際は、保証料がかかりません。
物件検査手数料
「物件検査手数料」は、主にフラット35を利用する際にかかる費用です。
フラット35を利用して住宅ローンを組む場合、融資の対象となる物件が住宅金融支援機構が定めた技術基準に適合しているか、証明をする必要があります。検査の際には手数料がかかります。
火災保険料
住宅ローンを組む際、金融機関がほとんどが「火災保険」への加入を必須としています。
火災保険の契約期間は1年から最長10年で、契約期間が長いほど保険料は割安になります。
新築マンションでかかる費用
購入する新築物件が、マンションの場合のみかかる諸費用の項目をご紹介します。
修繕積立基金
「修繕積立基金」は、マンションを購入する場合にかかる費用です。
マンションでは、建物の状態を良好に保つため、10~15年ほどの周期で大規模な修繕を行います。 修繕積立基金は、大規模修繕に備えて住民が積み立てる基金です。
エリアや物件の規模によっても金額は異なりますが、20~40万円ほどが相場です。
建売住宅でかかる費用
購入する新築物件が、建売住宅(戸建て)の場合のみかかる諸費用の項目をご紹介します。
仲介手数料
「仲介手数料」は、不動産会社などが売買の仲介をしている物件を、購入する際にかかる費用です。
建売住宅の場合、ほとんどが不動産会社の仲介での購入になります。なお、仲介手数料の上限は、売買代金の3%+6万円+消費税となっています。
注文住宅でかかる費用
購入する新築物件が、注文住宅(戸建て)の場合のみかかる諸費用の項目をご紹介します。
地盤調査費
「地盤調査」は、物件を建てる前に土地の強度を調べて、物件を安全に建てられる土地かどうかを見極める調査のことです。地盤調査は法律で義務化されているわけではありませんが、安全な住まいを建てるために欠かせない調査です。
調査自体にかかる費用は10万円前後です。なお、調査の結果、地盤の改良が必要だと判断されれば、地盤改良工事を行います。 地盤改良工事には、別途費用がかかります。
地鎮祭
「地鎮祭(じちんさい)」は、家を建てる前に土地が更地の状態で行う、工事の安全を祈願する儀式です。地鎮祭は神主を招いて行い「初穂料」として2~3万円ほどを納めるのが一般的です。
上棟式
「上棟(じょうとう)」とは、木造住宅を建てる際の骨組みまで完成した段階のことを言います。 上棟式は、家が無事に完成することを願い、上棟が出来たことを工事関係者と共にお祝いする儀式です。
諸費用以外で念頭に入れておくべき費用
ここまで、住宅の購入代金と同様に、新築の購入時に必要になる諸費用について解説してきました。
しかし、新築は購入したら終わりではなく、購入後に支払うべき費用も発生します。 諸費用の項目には含まれませんが、新築を手に入れた後で支払う費用まで併せてご紹介いたします。
不動産取得税
「不動産取得税(ふどうさんしゅとくぜい)」は、新しい不動産を取得したことに対して課せられる税です。
不動産を取得してから半年~1年ほどの間に送られてくる納付書に従い、コンビニや郵便局などで納めます。
なお、不動産取得税の金額は、下記の計算式で求めます。
「不動産取得税=固定資産税評価額×4.0%(原則税率)」
なお、不動産取得税について詳しくまとめられた記事はこちらです。
固定資産税・都市計画税
「固定資産税(こていしさんぜい)」と「都市計画税(としけいかくぜい)」という2つの税金が、新しい不動産を取得してから毎年課せられます。
固定資産税は、毎年1月1日時点に所有している不動産の価値に対して算定される税額を、市町村に対して支払うものです。
都市計画税は、都市計画事業又は土地区画整理事業の費用に充てることを目的として税金で、道路や上下水道の整備などに利用されます。
新居への引越し費用
税金や手数料のように支払い義務のあるものではありませんが、新築の購入後には引っ越しがつきものです。 引っ越しにかかる費用は下記のようなものが想定されます。
- 引越し業者に支払う代金
- 新居に合わせた家具や家電の購入代金
- 近隣への挨拶回りで持参する「粗品」の購入代金
新築を購入するにあたっては、購入時の費用とは別に、購入後の費用も念頭に置いておく必要があります。ご参考になさってください。
新築の諸費用についてのまとめ
これまで、新築の購入に必要な頭金について解説をしてきました。諸費用とは何なのか、内訳や金額について大まかにお分かり頂けたかと思います。
諸費用は、原則として現金で支払う費用です。万が一、オーバーローンを利用する際は、リスクについて考慮する必要があります。また、購入する物件の種類によっても諸費用の金額は大きく変わります。
ご自身が購入を検討している物件の種類や、物件の購入代金に合わせて目安を立て、備えをしていきましょう。