自宅の建て替え費用のうち、解体費用や新築費用を除いた細々とした費用は、一括りに諸費用とされます。ところが、諸費用といっても建て替え費用総額の約1割ほどを占めるケースが多いので、意外と侮れません。つまり、建て替え工事総額が3,000万円だとすると諸費用は約300万円なので、内訳は気になるところでしょう。そこで、本記事では自宅の建て替えで発生する諸費用について解説します。
建て替えではどんな「諸費用」が生じるのか?
まずは、諸費用に含まれる費用を大まかに分類してみます。費用の分類と費用の具体例は、以下の通りです。
1.登記関連 | 建物滅失登記、建物表題登記、所有権保存登記、抵当権設定登記 |
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2.税金関連 | 登録免許税、不動産取得税、印紙税 |
3.ローン関連 | 住宅ローン手数料、つなぎ融資手数料、ローン保証料 |
4.保険関連 | 団体信用生命保険、火災保険、地震保険 |
5.住まい関連 | 引越し費用、仮住まい費用 |
6.儀式関連 | 解体清祓、地鎮祭・上棟式 |
上表から、諸費用には実に様々な費用が含まれていると分かります。 ただし、上表の費用は工事金額等に応じて大きく変動するもの、逆にあまり変動しないものが混在しています。 そこで、費用の項目ごとに目安を算出しました。 仮に、予算3,000万円で建て替えた場合を想定すると、上記分類ごとに発生する費用の目安は以下のようになります。
1.登記関連 | 約24万円 |
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2.税金関連 | 約16万円 |
3.ローン関連 | 約49万円 |
4.保険関連 | 約40万円 |
5.住まい関連 | 約120万円 |
6.儀式関連 | 約15万円 |
その他雑費※ | 約5万円 |
諸費用総額 | 269万円 |
上記の例では諸費用が269万円と、建て替え工事の総額3,000万円のおよそ10%を占めています。
建て替えにおける「諸費用」の目安を知ろう!!
では、上記の例で挙げた諸費用269万円の内訳について、丁寧に確認していきましょう。
1.登記関連
建物を解体、新築した場合には、新たに登記が必要です。
登記関連の費用は、約24万円が目安です。 なお、建て替えにおいては、主に4種類の登記が行われます。
- 建物滅失登記(約4万~5万円)
- 建物表題登記(約8万円)
- 所有権保存登記(約7万~9万円)
- 抵当権設定登記(約3万~4万円)
以下、各登記について概要を説明します。
建物滅失登記
「滅失」は「めっしつ」と読み、「なくなる」といった意味です。 つまり、建物滅失登記とは、建物を解体撤去した際に必要となる登記です。 建物滅失登記は、解体工事の完了から1ヶ月以内に行わなければなりません。 なお、建物滅失登記は土地家屋調査士に対して代行の依頼でき、費用は4万~5万円程度です。
建物滅失登記 | 約4万~5万円 |
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なお、建物滅失登記の書き方などの詳細については、以下の記事がオススメです。 どうぞ、参考にしてください。
解体工事後の必須事項!「滅失登記」とは何なのか?建物表題登記
建物表題登記は、建物を新築した際に必要となる登記です。 新築したばかりの建物は登記情報が無いので、建物表題登記によって登記簿を新たに作ります。 建物表題登記についても、新築工事の完了から1ヶ月以内に行うことが義務付けられています。 登記の代行は、建物滅失登記と同じく土地家屋調査士が行っています。 代行にかかる費用は8万円前後です。
建物表題登記 | 約8万円 |
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所有権保存登記
所有権保存登記は、自身が持っている建物の所有権について、利害関係にある第三者に対抗するための登記です。 一応、建物表題登記でも所有者の名前を書きますが、第三者に対しては対抗力がありません。 そのため、所有権保存登記によって、正式に権利者として自身の名前を登記する必要があります。 なお、所有権保存登記は7万~9万円程度を支払えば、司法書士に代行してもらえます。 ただし、所有権保存登記については登録免許税が別にかかるので要注意です。(登録免許税を参照)
所有権保存登記 | 約7万~9万円 |
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抵当権設定登記
新築費用は高額なので、通常はローンを組んで資金を調達しなければなりません。 ローンを組む際は、新築物件に抵当権を設定してローンの担保とするのが一般的です。
抵当権設定登記では、司法書士への依頼費用として3万~4万円がかかるほか、登録免許税も発生します。(登録免許税を参照)
抵当権設定登記 | 約3万~4万円 |
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なお、ローンを完済したときに抵当権を外す場合には、抵当権抹消登記で1万~2万円ほどが必要です。
参考 iQra-channel抵当権設定登記とはなにかわかりやすくまとめた建て替えにおいて必要となる登記については、以下の記事にてまとめてあります。 ぜひ、ご一読ください。
2.税金関連
税金関連の費用は、約16万円が目安です。 税金については、以下の3つが発生します。
- 登録免許税(約4万円)
- 不動産取得税(約9万円)
- 印紙税(3万円)
登録免許税
建て替えの際は、所有権保存登記と抵当権設定登記について登録免許税がかかります。
所有権保存登記にかかる登録免許税
新築した建物について所有権保存登記を行う場合、以下の登録免許税が課されます。
固定資産税評価額は、土地や建物といった不動産の価格を表します。 建物の固定資産税評価額に関しては、新築価格の約50~70%程度として計算します。 ただし、2020年(令和2年)3月31日までの特例措置として、以下の条件を満たした新築物件について登記する場合に軽減税率が適用されます。
○軽減税率の条件- 自分が住むための住宅である
- 新築してから1年以内に登記する
- 建物の床面積が50㎡以上である
つまり、新築価格を2,500万円、固定資産税評価額を新築価格の60%と仮定した場合、所有権保存登記にかかる登録免許税は以下のようになります。
なお、軽減措置を受ける場合は、条件を満たす家屋として市町村等が発行する住宅用家屋証明が登記の際に必要です。 詳しくは、各市町村等に問い合わせてみてください。
参考 国税庁No.7191 登録免許税の税額表抵当権設定登記にかかる登録免許税
抵当権設定登記にかかる登録免許税の計算式は、以下の通りです。
ただし、2020年(令和2年)3月31日までの特例措置として、以下の条件を満たした新築物件に抵当権を設定する場合には、軽減税率が適用されます。
○軽減税率の条件- 自分が住むための住宅である
- 新築してから1年以内に登記する
- 建物の床面積が50㎡以上である
つまり、借入額を2,000万円と仮定した場合、抵当権設定登記にかかる登録免許税は以下のようになります。
所有権保存登記にかかる登録免許税と同じく、軽減措置を受ける場合は、条件を満たす家屋として市町村等が発行する住宅用家屋証明が登記の際に必要です。 詳しくは、各市町村等に問い合わせてください。 なお、所有権保存登記と抵当権設定登記の2つにかかる登録免許税の合計は、約4万円です。
登録免許税の合計 | 約4万円(軽減措置あり) |
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不動産取得税
不動産取得税は、購入や建築等によって新たに不動産を取得した場合に、取得者に対して課される税金です。 計算方法は以下の通りです。
ただし、新築住宅の取得については、2021年(令和3年)3月31日までの特例措置として税率が3%になり、2020年(令和2年)3月31日までの特例措置として固定資産税評価額から1,200万円が控除されます。
したがって、建て替え工事を行って固定資産税評価額1,500万円の新築住宅を取得した場合、課される不動産取得税は以下の通りです。
軽減措置が無い状態で課される額は45万円(1,500万円×3%)なので、特例による効果は非常に大きいといえます。
不動産取得税 | 約9万円(軽減措置あり) |
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印紙税
印紙税は、一定の文書を作成した際に課される税金です。 建て替えのときは、以下の契約書が課税対象になります。
したがって、印紙税の合計額は3万円です。
印紙税の合計 | 3万円(軽減措置あり) |
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なお、税金については、以下の記事で詳細にまとめています。 どうぞ、参考にしてみてください。
3.ローン関連
ローン関連の費用の目安は、約49万円です。 新築費用をご自身の貯蓄ですべてカバーするのは現実的ではないので、一般的にはローンを組んで資金を調達します。 ただし、ローンを組む際には手数料が色々とかかるので注意しましょう。
- 住宅ローン手数料(約3万~5万円)
- つなぎ融資手数料(約5万円)
- ローン保証料(約40万円以上)
住宅ローン手数料
住宅ローン手数料は、金融機関から借り入れるときの事務手数料です。 3万~5万円と固定しているケースや、「借入金×2.2%」(借入金が2,000万円なら44万円)で計算するケース等があり、金融機関によって大きな差があります。
住宅ローン手数料 | 約3万~5万円 |
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つなぎ融資手数料
建て替えの場合は、新築が完成してからでないとローンが組めません。 そのため、資金が不足している場合、つなぎ融資によって資金の調達をする必要があります。
一般的には、建物が完成するまでは利息のみを支払い、住宅が完成して引き渡しを受けたら住宅ローンを利用してつなぎ融資を清算します。 なお、つなぎ融資の利息は2~4%程度です。 もし、利息3%のつなぎ融資として着工金300万円(4ヶ月)、中間金300万円(3ヶ月)を借り入れた場合は、以下のようになります。
つまり、上記の例では約5万円が利息としてかかります。
つなぎ融資手数料 | 約5万円 |
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また、金融機関によっては事務手数料も別途必要なので注意しましょう。
参考 スゴい住宅ローン探しつなぎ融資とは?必要になるケースと上手な利用法ローン保証料
ローン保証料は、ローン保証会社と住宅ローン契約者(ご自身)との間で契約を結ぶ際に、ローン保証会社に対して支払うお金です。 万が一借入金の返済ができなくなった場合は、ローン保証会社が代わりに借入金を返済します。(ただし、あとでローン保証会社に対する返済が必要です) なお、ローン保証料の目安は借入金の2~3%です。 つまり、2,000万円を借り入れると、40万円以上がかかります。
ローン保証料 | 約40万円以上 |
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しかし、金融機関や返済期間によって、ローン保証料に金額差が生じるので要注意です。
参考 スゴい住宅ローン探し住宅ローンの諸費用って何?どれくらいかかる?節約する方法は?4.保険関連
保険関連の費用は、約40万円が目安です。 ローンを組むにあたっては、金融機関から保険への加入を求められます。
- 団体信用生命保険(金利に上乗せ)
- 火災保険(約15万~40万円)
- 地震保険(約8万円)
団体信用生命保険
団体信用生命保険は、死亡や重度の障害など理由により住宅ローン契約者(ご自身)がローンの返済ができなくなった場合に、住宅ローン残高の返済に充てられる保険金です。 そのため、通常のケガや病気については保障されません。 なお、団体信用生命保険の支払いは、金利に上乗せされるケースが一般的です。
参考 アルヒ株式会社団体信用生命保険(団信)とは火災保険
火災保険では、火災をはじめ、落雷・風災・水漏れといった様々な損害について補償しています。 ほとんどの住宅ローンでは、火災保険への加入が義務付けられます。 契約期間は最長10年で、保険料は損害の補償範囲によって15万~40万円程度と幅があります。
火災保険 | 約15万~40万円 |
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地震保険
地震保険は火災保険の特約として加入します。 地震保険を付けなくとも住宅ローンは組めますが、火災保険では地震による損害について補償されないので、加入をオススメします。 契約期間は最長5年で、保険料は火災保険料の30~50%程度なので、火災保険料が20万円なら8万円程度です。
地震保険 | 約8万円 |
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5.住まい関連
住まい関連にかかる費用は、約120万円が目安です。 建て替え中は自宅が使用できないので、一時的に他の家を借りなければなりません。 そのため、以下の費用が発生します。
- 引越し費用(約10~30万円)
- 仮住まい費用(約100万円)
引越し費用
建て替え工事においては、建て替え前の自宅から仮住まいへ、仮住まいから建て替え後の新築へと2回の引越しが必要です。 さらに、家賃を抑えるために狭い物件を仮住まいとするのが一般的なので、仮住まいに入らない荷物の一時保管場所を確保しなければなりません。 引越し費用は、家族の規模や荷物の量などによって大幅な金額差が生じますが、おおむね10~30万円程度が相場です。
引越し費用 | 約10~30万円 |
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なお、2回の引越しと一時保管をセットにしている引越し業者も存在します。 詳しくは、以下の記事を参考にしてください。
仮住まい費用
仮住まいは短期で賃貸契約を結ばなければならないので、通常の賃貸契約と比べて割高になる傾向があります。 加えて、一般の戸建て住宅を建て替える場合には5ヶ月程度を要します。 ですから、家賃がかさみやすく、諸費用のなかでも特に高額になりやすいので要注意です。 ざっくりと家賃を月12万円、敷金・礼金を20万円、仲介手数料を10万円、諸費用10万円と考えると、100万円程度が必要です。
仮住まい費用 | 100万円程度 |
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なお、建て替え時の仮住まいについては、以下の記事で詳細に説明しています。 ぜひ、ご一読ください。
6.儀式関連
儀式関連の費用は、約15万円が目安です。 儀式は必ずしも必要ではありませんが、ご家族やご近所に配慮してとり行うのが一般的です。 主な儀式は、次の通りです。
- 解体清祓(約4万~6万円)
- 地鎮祭・上棟式(約10万~20万円)
解体清祓
解体清祓(きよばらい)は、家屋の解体工事に先立って行う儀式です。 家屋の守り神に対し、感謝を示します。 儀式には、4万~6万円程度がかかります。
解体清祓 | 約4万~6万円 |
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なお、以下の記事では、解体清祓をはじめ、樹木や井戸のお祓いについて解説しています。 どうぞ、参考にしてください。
家を解体する前に「お祓い」はするべき?費用やお祓いの流れについて地鎮祭・上棟式
地鎮祭は新築工事の前にとり行う儀式で、相場は大体5万~10万円くらいです。 また、上棟式は建物の骨組みが完成した段階で行う儀式で、10万円程度が必要です。 地鎮祭と上棟式を合わせると、10万~20万円ほどになります。
地鎮祭・上棟式 | 約10万~20万円 |
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地鎮祭などに詳細については、以下の記事がオススメです。 ぜひ、ご一読ください。
参考 解体工事のお祓い、地鎮祭、魂抜きは必要? 解体工事の情報館建て替えにかかる諸費用についてのまとめ
今回は、自宅の建て替えで発生する諸費用について紹介しました。 建て替え工事の総額が3,000万円だとすると、諸費用は約300万円にもなります。
現在は税金関連の費用について多数の軽減措置があり、費用が抑えられています。 しかし、それでも諸費用が全体の10%前後を占める状況に変わりありません。
特に、諸費用は住宅ローンでまかなえないため、現金で用意しておく必要があるので気を付けましょう。 なお、紹介した諸費用のなかで、もっとも無理なく費用を削れるのは登記です。
実は、紹介した4つの登記のうち、建物滅失登記・建物表題登記・所有権保存登記の3つについては、専門家に頼らずとも自分で登記ができます。 自分で登記すれば、20万円程度の節約になるので、ぜひ以下の記事を参考にチャレンジしてみてください。
建て替え費用を無理なく抑えるには、諸費用の中身についても知っておくのが大切です。 細かくチェックすれば、意外と簡単に抑えられる費用が見つかるかもしれません。