お家の建て替えには多額の資金が必要ですね。「でも、せっかく建てるなら多少値が張っても、最新機能を備えた家にしたい!」と考える方も多いでしょう。
国や地方自治体は、新しく家を建てる人に向けて各種補助金を用意しています。さらに、環境に配慮した家づくりをすると補助が受けられる場合もあります。
実際にどのような種類の補助金制度があるのか見ていきましょう。
建て替えで活用できる国の補助金一覧
まずは国が用意している補助金制度についてご紹介します。
すまい給付金
どんな制度?
- 住宅を取得するとき、収入額に応じて10~30万円の給付金が受け取れる(消費税10%になると10~50万円)
- 令和3年12月まで実施される
すまい給付金は、住宅を取得するとき、収入額に応じて消費税8%時には最大30万円が、消費税が10%に引き上げられた後は最大50万円が受け取れる制度です。
◆ すまい給付金の対象者
- 住宅を取得し、自ら所有・居住する方
- 収入が一定以下の方
- (消費税8%のとき)収入額の目安が510万円※以下
- (消費税10%のとき)収入額の目安が775万円※以下
(※夫婦(妻は収入なし)および中学生以下の子供が2人のモデル世帯において住宅取得する場合の夫の収入額の目安)
◆ 物件の要件
- 床面積が50㎡以上の住宅
- 現場検査を実施し、一定の品質が確認された物件
施工中等に現場検査を受け、以下のいずれかに該当する住宅のことです。
- 住宅瑕疵担保責任保険へ加入した住宅
- 建設住宅性能表示を利用する住宅
- 住宅瑕疵担保責任保険法人により保険と同等の検査が実施された住宅
住宅ローンを利用せずに住宅を取得した場合でも、以下の要件を満たす方であれば給付金が受け取れます。
- 50才以上の方(消費税10%時には「収入額の目安が650万円以下」という要件が追加になります)
- フラット35Sと同等の基準を満たす住宅
以下のいずれかに該当する住宅のことです。
- 耐震性に優れた住宅(耐震等級2以上の住宅または免震建築物)
- 省エネルギー性に優れた住宅(一次エネルギー消費量等級4以上または断熱等性能等級4)
- バリアフリー性に優れた住宅(高齢者等配慮対策等級3以上)
- 耐久性・可変性に優れた住宅(劣化対策等級3かつ維持管理対策等級2等)
すまい給付金は、収入に応じて決まる都道府県民税の所得割額を用いて給付基礎額を決定しています。給付金がどれくらい受け取れるかは、以下のシュミレーション機能を使って予想してみましょう。
参考 すまい給付金シミュレーション 会社員の方すまい給付金ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス補助事業(ZEH補助事業)
どんな制度?
- エネルギー収支ゼロを目指した、環境に優しい住宅を建てる人を支援する制度
- 補助額が70万円~と高額!
ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスは、近頃耳にする機会も増えてきたのではないでしょうか?略してZEH(ゼッチ)と呼ばれています。
ZEHとは、高断熱、高性能設備で大幅な省エネルギーを実現し、さらに太陽光発電などの再生可能エネルギーを導入して、年間の一次消費エネルギー(空調・給湯・照明・換気)量の収支をプラスマイナスゼロにすることを目指した住宅を指します。
(参照:環境省「平成31年度のZEH関連事業(補助金)について」)
国は、環境に優しい住宅を増やすためZEH補助事業を立ち上げ、ZEHを建てる人には高額の補助金を給付しています。補助金額はZEHの性能によって変わり、性能が高いほど補助額も高く設定されています。
ZEHとは、厳密には以下のような要件を満たす住宅のことです。
- 強化外皮基準を満たした上で、UA値(断熱性能を数値化したもの)0.4~0.6以下の住宅 ⇒ 高断熱
- 基準一次エネルギー消費量を20%以上削減できる住宅(再生可能エネルギー等を使うことなく)⇒ 省エネルギー
- 再生可能エネルギー等を加えて、基準一次エネルギー消費量を100%以上削減できる住宅 ⇒ エネルギー収支0
各事業について詳しく見ていきましょう。
ZEH支援事業 (ゼッチ支援事業) | |
---|---|
一次エネルギー消費量 (再生可能エネルギーを除く) | 20%以上削減 |
一次エネルギー消費量 (再生可能エネルギーを含む) | 100%以上削減 |
補助額 | 定額 70万円/戸 |
※ Nearly ZEH、ZEH Oriented でも申請可 |
寒冷、低日射、多雪地域は、太陽光発電などの発電量が一般的な地域よりどうしても少なくなってしまいます。そのため地域によっては、一次エネルギー消費量の削減率が100%に満たなくても、75%以上100%未満であれば、ZEH支援事業と同額の補助金を申請できます。(Nearly ZEH)
また、都市部狭小地においては、再生可能エネルギー未導入でも、その他のZEHの要件を満たしていれば、ZEH支援事業と同額の補助金を申請できます。(ZEH Oriented)
国は、各地域の中小工務店等が連携して、良質な木造住宅等の整備に取り組む活動を支援しています。(地域型住宅グリーン化事業)
地域型住宅グリーン化事業に参加している中小工務店などで木造のZEHを建てると、優遇措置として、ZEHの補助額が定額70万円/戸のところ上限140万円/戸となり、さらに地域材を活用していれば上限20万円が、三世代同居への対応で上限30万円が加算されます。
地域の工務店でZEHを新築しようとお考えの場合は、地域型住宅グリーン化事業に参加しているか聞いてみましょう。
ZEH+実証事業 (ゼッチプラス実証事業) | |
---|---|
一次エネルギー消費量 (再生可能エネルギーを除く) | 25%以上削減 |
一次エネルギー消費量 (再生可能エネルギーを含む) | 100%以上削減 |
ZEHにプラスの要件 (2つ以上を実施すること) | ・外皮性能のさらなる強化 (UA値が0.30~0.50以下) ・高度エネルギーマネジメント (HEMSなど) ・電気自動車のための充電設備 |
補助額 | 定額 115万円/戸 |
※ Nearly ZEH+ でも申請可 |
ZEH+R強化事業 (ゼッチプラスアール強化事業) | |
---|---|
一次エネルギー消費量 (再生可能エネルギーを除く) | ZEH+と同じ |
一次エネルギー消費量 (再生可能エネルギーを含む) | 100%以上削減 |
ZEH+にプラスの要件 | ・非常用コンセントを主たる居室内に設置 ・蓄電システムもしくは太陽熱利用システム のいずれかまたは両方を備えた住宅 |
補助額 | 上限 125万円/戸 |
※ Nearly ZEH+R でも申請可 |
さらにZEH+R強化事業では、蓄電システムもしくは太陽熱利用システムを実施するための費用に対しても補助金がおります。
ZEH補助金を受けるためには、ZEHビルダー/プランナーとして登録された事業者によって、設計・建築または販売された住宅を取得しなければなりません。以下のエンブレムが目印です。
(参照:環境共創イニシアチブ「ZEHビルダー・マークおよびZEHプランナー・マークについて」)
ZEHビルダー/プランナーのハウスメーカーや工務店は、以下のページで検索できます。
参考 ZEHビルダー/プランナー一覧 SII 一般社団法人 環境共創イニシアチブ先進的再エネ熱等導入支援事業
「ZEH支援事業」、「ZEH+実証事業」いずれかの交付決定を受けた住宅は、さらに先進的再エネ熱等導入支援事業の補助も受けられます。
対象の建材・設備 | 補助額 |
---|---|
直交集成板 (CLT) | 90万円/戸 |
地中熱ヒートポンプ ・システム | 90万円/戸 |
PVTシステム | 液体式:65万円/戸もしくは80万円/戸 空気式:90万円/戸 |
液体集熱式 太陽熱利用システム | 12万円/戸もしくは15万円/戸 |
蓄電システム | 2万円/kWh加算 (上限20万円または補助対象経費の1/3のいずれか低い額) |
ZEH補助事業の詳細に関しては、以下のファイルをご覧ください。(どちらもPDFファイルで開きます)
参考 ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの推進に向けた取り組み経済産業省 省エネポータルサイト 参考 平成31年度の経済産業省と環境省のZEH補助金についてSII 一般社団法人 環境共創イニシアチブ家庭用燃料電池システム導入支援事業
(参照:TOKYO GAS「エネファーム パナソニック製の主な特徴」)
家庭用燃料電池とは「エネファーム」のことです。エネファームはガスを使って発電し、さらに発電の際に発生した熱を使ってお湯をつくり出す、給湯器付き発電機です。
どんな制度?
- 住宅にエネファームを導入するとき、3万円~補助金が受け取れる
エネファームには、固体高分子形燃料電池(PEFC)が使われているものと、固体酸化物形燃料電池(SOFC)が使われているもの、2種類あります。
補助金は、エネファームの機器価格と工事費を合わせた合計価格(補助対象経費)が基準価格または据切価格を下回っていれば受けられます。
基準価格 | 据切価格 | |
---|---|---|
固体高分子形 (PEFC) | 80万円 | 96万円 |
固体酸化物形 (SOFC) | 123万円 | 134万円 |
残念ながら、2019年度は固体高分子形(PEFC)エネファームの定額補助はありません。しかし、追加補助の対象であれば、追加補助分の補助が受けられます。
補助金額(定額)
基準価格以下 | 基準価格以上 据切価格以下 | 据切価格 を上回る | |
---|---|---|---|
固体高分子形 (PEFC) | なし (追加補助対象) | なし (追加補助対象) | 補助対象外 |
固体酸化物形 (SOFC) | 8万円 (追加補助も対象) | 4万円 (追加補助も対象) | 補助対象外 |
追加補助対象 | 追加補助額 |
---|---|
燃料種類:LPガス対応 | + 3万円 |
システム仕様:寒冷地仕様 |
(※ただし、追加補助は据切価格以下の価格で販売された機器のみ対象)
例えば、固体高分子形(PEFC)であっても、寒冷地仕様でLPガス対応、エネファームの設置費用が据切価格以下であれば、6万円の補助が受けられます。
なお、基準価格と据切価格はエネファームの仕様や燃料種別によって変わることもあります。(例:寒冷地仕様の固体酸化物形(SOFC)のエネファームの場合、基準価格123万円→153万円 据切価格134万円→164万円)
詳しくは以下のページをご参照ください。
参考 補助金額燃料電池普及促進協会(FCA)エネファームは、発売当初とても高価で、現在でも設置費用(機器代+工事費)だけで100万円以上かかることも多く、さらに維持費もかかるため、なかなか普及しないのが現状です。
そこで政府はエネファームの補助金制度を用意し、基準価格・据切価格を設定することで、エネファームの高価格化を防ぎ、自立的な普及が見通せる価格水準へと低減することを目指しているのです。
参考 昨年度からのスキーム変更点と2019年度のポイント燃料電池普及促進協会(FCA)次世代住宅ポイント制度
どんな制度?
- 2018年12月に創設された制度
- 一定の性能を備えた住宅を建てるとポイントがもらえる
- ポイントは家具家電や子育てグッズなどと交換できる
- 新築時には最大35万ポイントがもらえる
- ただしZEHなどの補助制度とは併用できない
次世代住宅ポイント制度は、一定の省エネ性、耐震性、バリアフリー性能などを満たす住宅や、耐震性のない住宅の建て替えなどのために、住宅を新築またはリフォームした場合、さまざまな商品と交換できるポイントを受け取れる制度です。
2018年12月に創設された新しい制度で、予算がなくなり次第終了だそうです。発行されたポイントはオシャレな家具や家電、ベビーグッズなど、さまざまな商品と交換できます。
(参照:国土交通省「次世代住宅ポイント 交換商品を探す」)
住宅を新築する場合、どのような条件でポイントが受け取れるのか見ていきましょう。
A. 標準ポイント | |
---|---|
エコ住宅 (断熱等級4または一次エネルギー等級4を満たす住宅) | いずれかに適合する場合 30万ポイント/戸 |
長持ち住宅 (劣化対策等級3かつ維持管理対策等級2等を満たす住宅) | |
耐震住宅 (耐震等級2を満たす住宅または免震建築物) | |
バリアフリー住宅 (高齢者等配慮対策等級3を満たす住宅) |
B. 優良ポイント | |
---|---|
認定長期優良住宅 | いずれかに適合する場合 5万ポイント/戸 |
低炭素認定住宅 | |
性能向上計画認定住宅 | |
ZEH |
C. オプションポイント | ||
---|---|---|
家事負担軽減設備 | ビルトイン食洗機 | 1.8万ポイント |
掃除しやすいレンジフード | 0.9万ポイント | |
ビルトイン自動調理対応コンロ | 1.2万ポイント | |
掃除しやすいトイレ | 1.8万ポイント | |
浴室乾燥機 | 1.8万ポイント | |
宅配ボックス | 1万ポイント | |
耐震性のない住宅の建て替え | 15万ポイント |
以上のような条件を満たしていれば、A + B + C の合計ポイントを、1戸あたり上限35万ポイントまで受け取れます。
ただ、次世代住宅ポイント制度はZEH補助事業などとの併用ができません。その他の補助金制度との併用可否は以下の表をご参照ください。
(引用:次世代住宅ポイント制度事務局「次世代住宅ポイント制度の内容について」PDFファイルより)
「ZEHの性能には届かなくて、補助金が受けられない…」という場合には、次世代住宅ポイント制度で何万円分かに相当するポイントが受け取れるかもしれません。
また、できたばかりの制度ですので、今後条件の変更などがあるかもしれません。実際に住宅を取得するときになったら、再度、制度の確認をしましょう。
地方自治体の補助金制度も必ずチェックしよう
ここまでご紹介してきたのは、国の補助金制度でした。
実は、補助金制度は地方自治体でも用意され、財源が国庫でない場合は、国からの補助金と併用して受け取ることも可能なのです。
例えば、東京都には以下のような補助制度があります。
対象機器 | 補助率 | 補助額上限 |
---|---|---|
蓄電池システム | 機器費の 1/6 | 4万円/kWh (24万円/戸) |
家庭用燃料電池 (エネファーム) | 機器費の 1/5 | 10万円/台 |
太陽熱利用システム | 機器・工事費の 1/3 | 6万円/㎡ (24万円/戸) |
ビークル・トゥ・ホームシステム (V2H) | 機器費の 1/8 | 5万円/台 |
高断熱窓 | 材料費・工事費の 1/6 | 50万円/戸 |
※以上、戸建住宅の場合
(引用:東京都環境局「東京都住宅関連環境補助金・支援ガイド」PDFより)
東京都で建て替えをし、エネファームを設置する場合、条件を満たしていれば国からも都からも補助金が受け取れます。
さらに例を挙げると、東京都港区では、区でもエネファーム設置に対して助成金を用意していて、国と都の補助金とも併用できるそうです。
(参照:港区公式ホームページ「エネファーム(家庭用燃料電池システム)」)
以上のように、各地方自治体ではさまざまな補助金・助成金制度が用意されており、国や都道府県だけでなく市区町村の補助金制度まで活用できるかもしれません。
以下のページでは全国の地方自治体の補助金制度が検索しやすくなっています。役所のホームページなどでは見つけにくい場合もありますので、以下のページで検索してから、各制度について役所に問い合わせるとスムーズかもしれません。
参考 自治体の給付金(補助金・助成金)情報【goo 住宅・不動産】まとめ
建て替え時に活用できる補助金制度は意外にもたくさんありますね。補助金制度は年ごとに内容や条件などが異なり、特に2019年10月の消費税増税の前後は、新たに制度が創設されたり、増税対策の制度が終了するなど、変化が激しい時期です。
住宅の補助金制度に関しては、ハウスメーカーや工務店の担当者さんも詳しいはずなので、打ち合わせの際には活用できそうな補助金制度について尋ねてみるとよいでしょう。
国や自治体の支援をめいっぱい受けて、環境にも家族にも喜ばれる、素敵なお家を建ててくださいね。