「今住んでいる家を新しく、きれいに生まれ変わらせたい!」そう考えたとき、候補として挙がるのは、建て直しやリフォームですよね。
少しでも費用を抑えようとするとリフォームのほうが魅力的に見えてきますが、「やっぱり基礎とか柱の強度も気になる…」と、思い切って建て直してしまう方も多いようです。
この記事では、建て直しを考えている方に向けて、建て直しには何にどれくらいの費用がかかるのかを詳しくご紹介していきます。
建て直しにかかる費用を見てみよう!
それでは早速、建て直しにかかる費用の詳細を見ていきましょう。
建物本体価格
まず、ハウスメーカーが提示している坪単価と、希望する延床面積から算出できる価格は、建物本体のみの価格です。実際は建物本体価格に付帯工事費と、諸経費がかかり、新しい家を建てる総費用となります。
付帯工事費と諸経費は、目安として家づくりにかかる費用のだいたい30%ほど、内訳は付帯工事費(20%)、諸経費(10%)ほどとされています。
例えば、本体価格1750万円となっている家を購入するとすると、家づくりにかかる総費用はおおよそ2500万円ほどになるということですね。
付帯工事費(20%)
付帯工事とは、古い家を取り壊す解体工事、庭やカーポートを整備する外構工事、電気・ガス・水道などを新居に合わせて整備する工事など、建物本体の工事とは別に必要になる工事のことです。
具体的には次のようなものがあります。
- 解体工事
- 地盤調査・地盤改良工事
- 屋外給排水・電気・ガス工事
- 仮設工事
- 外構工事
- インテリア工事など
解体工事
解体工事とは、古いお家を取り壊して更地にするまでの工事のことです。
「壊すだけだから費用はそんなにかからないだろう」と考える方も多いのですが、環境保護を推し進める今の日本では、解体工事に関する法令はとても厳しくなっているため、解体工事にもある程度の費用がかかってしまいます。
私たち、あんしん解体業者認定協会がご対応した解体工事でかかった費用の平均をご紹介します。
東京都の木造住宅※坪数 | 坪単価(平均) | 解体費用(建物のみ) |
20坪 | 41,148円 | 74~90万円 |
25坪 | 39,591円 | 89~108万円 |
30坪 | 38,373円 | 103~126万円 |
(※敷地内に重機・トラックがおける、隣の家と1m以上空いている、布基礎の木造家屋を解体する場合)
ただし、提示されている金額は家屋のみの解体費用です。実際に敷地内を更地にするためには、前の道から玄関までの土間コンクリートや、庭にある草木や庭石、ブロック塀なども取り除かなければなりません。
このように、解体工事にも付帯工事が必要です。付帯工事費は、解体工事にかかる費用全体のだいたい20%ほどです。
家屋のみの解体費用(約80%)+ 付帯工事費(約20%)= 解体工事の合計金額
(例)家屋のみの解体費用90万円の場合、付帯工事費約22万円、合計金額約112万円
また、上でご紹介した坪単価や解体費用は、47都道府県で最も工事費が高い東京都のものです。地域によって坪単価には大きな差があり、重機が家の前まで入っていけない環境にある家屋など、それぞれの条件によって金額にかなりの差が出ることもあります。
平成12年5月に制定された「建設リサイクル法」という法律により、解体工事で取り壊した家の建材は、一つ一つ分別し、木材やコンクリートなどは資源として回収しなければならなくなりました。そのため、解体工事の工法は以前よりとても丁寧になったのですが、その分手作業が増え、工事期間も以前よりは長くかかる傾向にあります。
また、廃棄物が最終的に行き着く最終処分場のスペースも年々ひっ迫しているため、廃棄物の処分費がどんどん高額になっています。このように、解体工事には必ずかかる費用があり、工事費をより安くするために削れる費用は、人件費などと限られてきているのです。
地盤調査・地盤改良工事
今まで家が建っていた土地でも、住宅を新築しようとする場合、地盤調査をしなければなりません。
地盤調査費:3~8万円程度
地盤改良費:100万円ほどかかることも…
調査をして、地盤改良が必要だと判断された場合、かなり高額な地盤改良費がかかることがあります。30万円で済んだ例もあれば、100万円ほど、あるいはそれ以上かかることも。かなり大きな金額なので、予算として組んでおくべきでしょう。
建築基準法により一部例外を除いて、新しく家を建てるときには地盤調査が義務付けられています。 また、家を建てる会社は10年間、住宅の「瑕疵担保責任」を負う義務があり、建てられた住宅に外部からは発見できない欠陥があった場合は責任を負わなければなりません。
責任をとるには、その分の資金を確保しておく必要があり、建築会社は「住宅瑕疵担保責任保険」に入っています。この保険に加入するためには、地盤調査が必須とされているのです。
地盤改良費は、土地の広さや、地表から頑丈な地盤までどれくらいの深さがあるのか、改良後の土地をどれくらいの強度にするかなどによって違い、さらにはハウスメーカーによって請求額がまったく違う場合もあるようです。
地中の状態は地表からはわかりません。地盤調査の結果も素人には判断しかねるでしょう。そこにつけこみ、高額な改良費を請求するハウスメーカーや工務店が存在するのも事実です。おかしいと感じたときは、第三者(一級建築士など)の意見を聞くなど、別の手を使うことも考えましょう。
屋外給排水・電気・ガス工事 75~120万円ほど
建て直しの場合、以前の家で使っていた給排水管、電気配線、ガス管が使える状態であれば、まっさらな土地に新築を建てる場合よりも工事費は安くなります。
仮設工事 20万円ほど
工事をするために必要な足場や養生、電気、水道、仮設トイレなどを設置するための費用です。
外構工事
お庭や門扉、駐車場や塀などを作る工事です。実現したいデザインにより費用に違いが出ます。
- 門まわり(門扉・門塀など):15~30万円程度
- カーポート(車1台用):50万円程度
- 塀:40~60万円程度 など
インテリア工事
室内設備には照明、エアコン、カーテンなどがあります。外構工事と同様、こだわればどこまでもお金がかけられる部分です。
諸経費(10%)
残る諸経費は、原則として現金で支払う必要があります。諸経費の分は現金で支払いができるよう、資金をとっておきましょう。
ただし、諸経費も込みで組める住宅ローンを用意している金融機関もあるし、諸経費のためのローンを別契約として利用する人もいます。
- 住宅ローン関連
- 保険料
- 税金・登記など
住宅ローン関連
- 印紙代 2万円
住宅ローンを組むときに作成する契約書には、印紙を貼ります。借り入れ金額1000~5000万円の場合、印紙代は2万円です。
- 融資事務手数料 約3~5万円
融資手数料とは、金融機関から住宅ローンを借り入れる場合にかかる手数料のことです。金融機関によって違いますが、3~5万円であることが多いです。
- ローン保証料 借り入れ金額の2~3%
ローン保証料とは、ローン返済不可となったときに備えて、連帯保証人の代わりに保証会社に支払う料金です。こちらも金融機関によって違いますが、だいたい借り入れ額の2~3%であることが多いです。
(例:3000万円借り入れ、ローン保証料2%の場合=60万円)
住宅ローンは借り入れる金融機関によっても、借入期間や金利、返済方法によっても保証料や総支払額が異なるので、ご自身に合ったプランを各金融機関でじっくりと比較することが大切です。
保険料
- 火災保険 10年間:20~30万円ほど
火災保険は住宅ローンを組むときに加入が義務づけられています。最長で10年の契約で、安く済ませようとすれば10年一括払いで17万円ほどからあります。
水災・風災・破損などにも備える場合は25~30万円ほどかかるなど、保証範囲によって保険料は違います。
- 地震保険 5年間:4万1千円ほど
住宅ローンを組むとき、地震保険の加入は義務ではありません。ただ、地震保険は単独で入ることはできないため、加入するのであれば、主契約である火災保険とともに手続きします。
地震保険は、建物の所在地と建物の構造ごとに国で保険料を決めているので、どこの保険会社で加入しても補償内容も保険料も変わりません。火災保険と同じ会社で契約してしまいましょう。契約期間は最長5年間、建物も家財も保証されるプラン、5年分の保険料一括払いで4万円ちょっとです。
- 団体信用生命保険
団体信用生命保険とは、ローンを借り入れた債務者が死亡する・重度の障害を負ってしまうなど、返済が難しくなった場合に残りのローン残高を保証してくれるものです。
フラット35では加入は義務づけられていませんが、銀行系住宅ローンなどは借り入れの条件になっていることが多く、保険料として請求されるよりも、保険料が金利に上乗せされていることが多いです。
税金
- 印紙税
- 登録免許税
- 不動産取得税
印紙税 1万円
注文住宅を建てるときは、工事請負契約を建設会社と結びます。この工事請負契約書にも印紙が必要です。印紙代は1000~5000万円の契約で2万円ですが、2020年3月31日までに作成されるものは軽減措置がとられ、1万円となっています。
登録免許税
建物を新しく建てるなどしたときは、その建物がどこにあって、どのくらいの大きさで、所有権は誰にあるのかなどを登記所で登記しなければなりません。登記の手続きにかかる税金のことを登録免許税といいます。
建て直しするときには、以下のような登記が必要です。
法務局の課税標準価格※× 面積 × 税率(0.4%)
ただし、2020年3月31日までは軽減税率が適用されるため、法務局の課税標準価格 × 面積 × 税率(0.15%)となります。
課税標準価格 95,000円(東京都)× 面積(82.6446㎡(25坪)) = 7,851,000円(1000円未満は切り捨て)
通常の税額:7,851,000円 × 0.4% = 31,400円(100円未満は切り捨て)
軽減後:課税価格(7,851,237円)× 税率(0.15%)= 11,700円(100円未満は切り捨て)
- 建物滅失登記
建物滅失登記は、古い家屋を取り壊して更地にしたときに必要な登記です。登録免許税はかからないので、自分で手続きすれば特にお金はかかりません。もし専門家に代行してもらうなら、3~5万円ほどかかります。
- 建物表題登記
建物表題登記は、新しく建物を建てたときに必要な登記です。建物表題登記にも登録免許税はかかりませんが、必要書類の中に新しい建物の図面などがあるため、自分で作成するには少しハードルが高い書類かもしれません。専門家に書類作成を依頼すると6~10万円ほどかかります。
- 所有権保存登記
所有権保存登記は、建物の所有権が誰にあるかを登記するものです。届け出は任意となっていますが、住宅ローンを借りる場合には必須です。登録免許税額は以下のように算出します。
債権金額 × 税率(0.4%)
ただし、2020年3月31日までは軽減税率が適用されるため、債権金額 × 税率(0.1%) となります。
通常の税額:3000万円 × 0.4% = 120,000円
軽減後(2020年3月31日まで):3000万円 × 0.1% = 30,000円
- 抵当権設定登記
住宅ローンを組んだときには、債務者(お金を借りた人)に何かがあってローン返済が困難になったときのために、金融機関は住宅を担保に抵当権を設定し、登記します。そして債務者が返済不可となったときは、住宅を差し押さえ、貸したお金を回収するのです。登録免許税は以下のように算出します。
所有権保存登記の登録免許税を算出する際には、本来なら「固定資産評価額 × 税率」で計算したいところですが、新築建物の場合は建てられたばかりなので固定資産評価額が定まっていません。そのため、地方法務局ごとに定められている「新築建物課税標準価格認定基準」を参考に登録免許税を算出するのです。例えば、東京法務局では以下のように新築建物の課税標準価格が定められています。(リンクはPDFファイルです)
参考 東京法務局管内新築建物課税標準価格認定基準表東京法務局不動産取得税
不動産取得税とは、売買・贈与で不動産を取得したとき、また新築・増築したときに都道府県に納める税金です。計算方法を見てみましょう。
建物の固定資産評価額 × 税率(4%)
ただし、2021年3月31日までまでは軽減税率が適用されるため、 建物の固定資産評価額 × 税率(3%)となります。
固定資産評価額は、行政の職員が現地調査・評価をしたのち決定され、不動産の取得後6ヶ月~1年半くらいの間に届く「納税通知書」によって知ることができます。目安としては建築費の40~60%程度が評価水準と言われています。
また、床面積が50㎡以上240㎡以下の新築住宅は1200万円の控除が受けられるため、計算式は以下のようになります。
固定資産評価額 - 控除額(1200万円)× 3%
その他の費用
- 引っ越し費用
- 仮住まい費用
- 式祭典費用
- その他費用
引っ越し費用
建て直しのときには仮住まいへの引っ越しと、新居への引っ越し、2度行わなければなりませんね。引っ越し業者さんの中には「建て替えパック」という建て替えのためのプランを用意しているところもあり、家財などを倉庫に預け放題のサービスがあることも。
各社で見積りを出してもらい、条件・費用を比較しましょう。同じ条件でも10万円単位で費用に差が出ることもあります。
参考 引越し屋さんの見積 ( 住居 )豆介の建て替え徒然草仮住まい費用
仮住まい費用は、解体工事と新居を建てている間の家賃と手数料、敷金礼金などが必要ですね。
式祭典費用
地鎮祭や上棟式などを行いたい場合には、地鎮祭5万円ほど、上棟式は10万円~費用がかかります。 ただ近頃は、ハウスメーカーで家を建てる場合、地鎮祭は行っても上棟式を行う人はとても少なくなっているようです。
その他費用
建て直し工事が始まる前のご近所への挨拶まわりで持参する手土産代や、大工さん、業者さんへの差し入れ代、また、光回線の工事費(18,000円~30,000円前後)など、細かい費用も「ちりも積もれば…」でなかなかお金がかかるようです。5~6万円ほど見ておくといいかもしれません。
費用を少しでも抑えるには?
このように家を建て直すときには、本当にたくさんの費用がかかりますね。
「できるだけ費用を抑えたい!でも新しいお家にはしっかり手を入れたいし…」そんなとき、どの費用なら抑えられるでしょう?どうしたらもっとお得に建て直しができるでしょう?以下で見ていきましょう。
- 解体工事を別注にしてみる
- 引っ越し業者も相見積もりをとる
- 助成金などがないか調べてみる
解体工事を別注にしよう!
建て直しの際、古い家の解体工事は、新居を建ててくれるハウスメーカーがまとめて行ってくれます。
ただし、ハウスメーカーは下請けの解体業者さんに工事を依頼するため、そこに中間マージンが発生し、工事費が割高になる傾向にあります。
この記事を執筆している私たち、あんしん解体業者認定協会には、解体工事を終えたお客様の声がたくさん届きますが、よく「ハウスメーカーの解体工事の見積りよりもずっと安く済んだ」というご報告をいただきます。
解体工事の見積もりは無料です。お近くに解体業者があれば、3社ほどから見積もりを出してもらい、工事費と工事の項目を見比べてみましょう。業者さんによって数十万円もの差が出ることもあります。
引っ越し業者も相見積もりをとろう!
上の項目でもお伝えしたように、引っ越し費用も各業者さんによって数十万円単位の差が出ることがあります。 必ず数社から見積もりをとってもらい、費用と各社の雰囲気を見比べてみましょう。
助成金・補助金制度がないか調べよう!
家の建て直しをする人たちに向けて、国や各地方自治体はいろいろな制度を用意しています。受けられる支援はバッチリ受けられるよう、必ずチェックしましょう。
(出典:国土交通省すまい給付金サイトより)
- すまい給付金
- 住宅ローン減税
- 各地方自治体の助成金・補助金制度
すまい給付金
すまい給付金は消費税が8%に引き上げられたときに、住宅を取得する人たちの負担を減らそうと創設された制度です。
対象は「収入が一定以下の購入者」とされていますが、2019年10月には消費税が8%から10%に引き上げられるため、対象者も拡充され、給付額は最大30万円から最大50万円に引き上げられます。
住宅ローン減税
住宅ローン減税制度は、住宅ローンを組んで住宅を取得した人たちの金利負担を減らすために創設された制度です。
住宅ローン減税が受けられれば、ローン借入金額の1%が10年間に渡って、所得税額から、所得税分だけで控除できない場合は住民税額からも控除されます。
控除額はローン借入金額の残高1%を限度としているため、借入金額が少なくなっていくと控除額も少なくなっていきますし、所得税+住民税額が限度額に満たない場合は限度額満額の控除は受けられません。
しかし、借入金額が3000万円だった場合、年間30万円近く税金の控除が受けられるため、かなり助かる制度と言えます。
また、消費税10%が適用される住宅を取得した場合、控除期間は13年間に延長されます。詳しくは以下の国土交通省のページをご覧ください。
参考 住宅ローン減税制度の概要すまい給付金すまい給付金と住宅ローン減税などの制度は併用することができます。以下のページではすまい給付金と住宅ローン減税のシュミレーションができますので、ぜひご覧ください。
参考 すまい給付金シミュレーション 会社員の方すまい給付金各地方自治体の助成金・補助金制度
各自治体も、建て直しや古い家屋の解体工事に助成金・補助金を支給している場合があります。例として、東京都葛飾区の助成金情報ページをご覧ください。
助成金を受けるには以下のような要件を満たしている必要があります。
葛飾区では建て替えや解体工事でも、要件を満たしていれば、助成金の支給があるようです。
このように、国だけでなく、各地方自治体でも建て直しをする人たちを支援する制度を設けているかもしれません。インターネットで「自治体名 新築 助成金」と検索をかけたり、役所で聞くなどして、支援制度がないか確認してみましょう。
まとめ
お家の建て直しには多額の資金が必要になりますね。
新居を構えたあとも幸せに、穏やかに暮らしていくためにも、何にいくらかかるのか、全部でいくらくらいかかるのか、しっかりと把握して計画を立ててから行動しましょう。
私たち、あんしん解体業者認定協会も、解体工事に関することでは、みなさまのお力になれると思います。ぜひ、お気軽にご相談くださいね。
また、リフォームと建て替え(建て直し)どちらにすべきかお悩みの方は、こちらの記事もぜひ参考になさってください。