不動産業者に土地売却の依頼をしてみたものの、契約内容や手続きの説明が専門的で分かりづらく、不安に感じることはないですか?
難しいことでも、内容を理解せず不透明のまま契約するのは辞めたほうがいいでしょう。 なぜなら、不動産のプロである業者に任せ、無事に土地を売却できても、契約後に発生するトラブルが原因で損をしてしまう売主が多いからです。
土地売買において、おおよそのトラブルで責任を負うのは売主といっても過言ではありません。
この記事では、個人の買主へ土地を売却する場合に起こり得るトラブルを中心に原因と解決策についてご紹介します。
トラブルはなぜ起きてしまうのか
平成29年度に調査した『原因別トラブルの相談件数の割合』を見ると、実際に起こり得るトラブルで多い項目はこちらです。
- 重要事項の説明等(不告知含む)36.4%
【重要事項の説明とは】不動産会社(宅地建物取引業者)が不動産取引の代理・媒介をする場合、取引当事者に対して契約上重要な事項を説明すること。売買契約を締結する前に行なわなければならない。
- 契約の解除(ローン不成立による解除を含む)8.9%
- 瑕疵問題(瑕疵補修を含む)4.3%
【不動産における瑕疵とは】売買契約時、買主に対して事前に説明がなかった欠陥のこと。
引用:『国土交通省宅地建物取引業法 施工状況調査(平成29年度)売買の媒介・代理部門の相談件数の割合』
参考 重要事項説明とはアットホームこれらのトラブルは、売主と買主のあいだで「契約内容の認識が違っていた」「決めるべきことを決めていない」の2点でよく起こります。
トラブルを避けスムーズに売却をするためには、売主自身で確認すべきことがあります。 よくあるトラブルを例にチェックしていきましょう。
トラブルを防ぐために売主が確認すべき優先事項3つ
1.土地の境界をはっきりとさせる
「家との境目に塀があれば、そこが土地の境界線だろう」と思われている方は多いでしょう。 しかし現状は、土地の範囲が記載されている「地積測量図」と実際の土地の状況が異なり、境界線があいまいになっていることがあります。
- 塀の内側か外側、真ん中のどれが境界なのか認識が隣家と異なる
- 境界だと思っていた塀が、実は境界ではなかった
境界線の認識が隣家と相違があるまま売却した場合、買主と隣家が揉めてしまい「想定していた規模の建築ができない」とクレームにつながる場合があります。
境界があいまいな土地は、売却する前に隣家所有者と境界確認書を交わすことで境界線を明確にすることができます。
境界確認書を作成するには「現地にて隣家所有者と境界確認に立ち会い、署名と捺印をいただくことで境界が確定する」のですが、承認を拒否することもできるため、どちらかが承認を渋ってしまうと境界を確定することができません。 こうしたケースで利用したいのが、筆界特定制度です。
土地面積と使用できる敷地面積が同じとは限らない
隣家の軒先や樹木の枝が、自分の土地に越境している場合があります。地中部分は境界確定後に気づきやすいですが、空中部分の越境物は見落としがちです。
隣家に占有された土地を売却する場合は、まずは越境している部分の改善を申し出ましょう。すぐに改善できないときは、売却する土地の面積とは別に建築基準法上有効な敷地面積を明示することで、買主との食い違いを防ぐことができます。
2.手付金や違約金は慎重に設定する
売買契約を交わしたからといって無事に売却できるとは限りません。不動産の契約において、契約時に買主が売主に手付金を支払うことがセオリーとなっています。
手付金の存在意義としては、引渡しよりも先に一部のお金のやり取りをすることで、契約を履行しようとする意識を高めるのが目的です。
ところが、引き渡しの直前で解約となってしまうことがあるのです。
買主の私的諸事情でのキャンセルを防ぐ
買主の私的諸事情は、急な転勤や他に良い物件が見つかったためにキャンセルとなってしまうことがあげられます。
この手付金を手放すことで、買主は一方的に契約解除をすることができます。 契約解除となると、一から買主を探すことになり費用の負担が増えるため避けたいです。
民法は「買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる」と定めています(民法557条1項)金額が安すぎると、買主にカンタンに契約解除されてしまうので、しっかり話し合いをしたうえで適切な金額設定をするようにしてください。
買主がローンの審査に落ちたら、手付金は手元に残らない
買主の多くは、住宅ローンの融資が受けられることを前提に契約をすすめてきます。しかし、必ずしも銀行の審査に通るとは限らないため、審査に落ちてキャンセルせざるを得ないことがよくあります。
住宅ローンを前提とした取引には、契約書に「住宅ローン特約」が付けられているのが一般的です。
これにより手付金は買主に返却されてしまい、買主の事情による解約よりもダメージは大きくなります。
3.売却する土地の欠陥について共有できているか確認する
土地売却の際、「現状と契約内容が違うけど、価格が下がるかもしれないから、不利になることは黙っていよう」と考えている方はいませんか?
「買主に不利益な情報」を知っているのに隠していた場合、現状が明らかとなったときに「契約不適合責任」を負うことになります。
とくに見落としがちなのが、土地のみを売却するとき。 「家を解体して更地化すれば土地のみが残るのだから、大丈夫だろう」と安心していても瑕疵問題が起こるケースはあります。
物理的瑕疵 | |
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心理的瑕疵 | |
環境瑕疵 |
これらの事実を知っているにもかかわらず、事前に買主に説明しないまま売却をした場合は責任を免れることができないとされており、損害賠償を求められることになってしまいます。
「土地調査」で見えない瑕疵の有無を調べることができる
売却する土地の情報をどんなに惜しみなく告知しても、知らなかった瑕疵の場合はトラブルを回避することはできません。そのため、目で見えない瑕疵を見つけるために土地調査をして「知らなかった瑕疵」を無くしましょう。
土地調査は、地盤調査、土壌汚染調査、液状化の判定があり、費用はそれぞれ5万円前後かかります。すべて行うとなると安い金額とは言えませんが、土地調査をした証になるので、土地売却後に瑕疵におけるトラブルを避けることができます。
参考 土地調査三井のリハウス不動産会社選びが重要
買主が土地に興味をもち買うことを前向きに考えていても、不動産の担当者の対応がいまひとつだったため、契約をやめたというケースもあります。
不動産はそう簡単に売れるわけではないので、せっかくの購入希望者を逃してしまうのは嫌ですよね。 また、やるべきことが多く、すべてに労力をかけるのは難しいですし、素人では予想できない問題が出てくる可能性もあります。
不動産会社選びにおいて、すぐできる3つの確認
安心して土地売買をするためには、信頼できる不動産会社を見つけることも重要です。 不動産会社を選ぶ基準はたくさんあり、すべて確認するのは難しいので、すぐできる最低限確認すべき項目をまとめました。
- 依頼する不動産会社に、宅地建物取引士がいる
「宅建業を営むには専任の宅地建物取引士が必要」と法律で決まっています。免許を提示してもらい確認しましょう。
- 担当する営業の接客態度
電話対応や店頭でのやり取りに好感が持てるか、親身になって疑問に答えてくれるかどうかを確認しましょう。 信頼できる「人」かどうかを見定めましょう。
- サイトに掲載されている物件情報の更新頻度
不動産会社が物件を掲載しているサイトにアクセスし、不動産会社が広告に出している物件の情報が、いつまでも同じ情報を載せていないかを確認しましょう。頻繁に更新されていれば、部件を売ることに力を入れていることが分かります。
信頼できる不動産会社にサポートしてもらい、スムーズに取引をすすめましょう。
まとめ
土地売買で起こり得るトラブルは、売主に責任が問われてしまうケースが多いです。 不動産会社はあくまでも仲介をする立場なので、すべて任せきりにするのではなく、売主自身が起こり得るトラブルを予測することが大切です。
しかしながら、不動産取引に関しての法律や契約内容が複雑なので、すべてを理解することは難しいと思います。 予測できないトラブルを防ぐためには、売買契約を結ぶ前に、疑問に感じる点が少しでもあれば、業界のプロである不動産会社へ都度確認することがおすすめです。
人生に何度もない大きなお金が動く取引なので、しっかり意識して円満な土地売却を目指しましょう。