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一級建築士事務所袴田喜夫建築設計室有限会社の社長・袴田さんは、環境と社会に配慮して建築をつくることを大切にされています。
袴田さんは住宅設計の他にも、幼稚園や保育園などの施設の設計を数多く手がけられているベテランの建築家さんです。そんな袴田さんが抱いている建築業界への想いを、東京都千代田区にある事務所にてお伺いしてきました。
環境と社会に配慮して建築をつくることが大切
スタッフ
袴田さんが建築のお仕事をする上で、大切にされていることは何ですか?
袴田さん
まず第一に、環境に配慮して建築をつくることです。
昨今は世の中全体を通して見ても、環境に対する関心が高まっていますよね。
しかし、1972年にローマクラブが「成長の限界」を発表した当時、私は環境に対して限界があるという考え自体に驚いたことを今でも覚えています。
日本はちょうど高度経済成長期の終わりかけでしたから、当時の私たちの世代は、まだまだ仕事をする上で環境への配慮が積極的に出来ていたとは言えなかったんです。
ローマクラブ「成長の限界」
ローマクラブとは、地球環境や天然資源の枯渇化に対する問題意識を持った、世界各国の有識者や財力を有する人々で構成されている民間の団体です。
「成長の限界」はローマクラブによって発表された研究で、人口がこのまま成長を続けると地球の有限な天然資源は枯渇し、100年以内に成長は限界点に達するという結論を得ているものです。
スタッフ
確かに、今でこそ「サステナブル」などという環境に関与した言葉が若い人たちの間でも飛び交うようになりましたが、当時の日本においては環境への配慮が仕事をする上で優先されることは少なかったかもしれませんね。
時代背景ですから、仕方がなかった面もありますよね。
袴田さん
環境への配慮と同様に、社会の中で建築をつくることも大切だと考えています。
平たく言えば、トラブルがつきものの建築において、できるだけトラブルが起こらないようにつくることです。
もちろん、すべての人が受け入れられる建築をつくることは難しいかもしれません。
ですが、建築業界の大きなベクトルをそこに持っていく必要はあると思っています。
スタッフ
どうすれば、トラブルのない建築が実現するのでしょうか?
袴田さん
家の建て主だけでなく、お隣の人とも一緒に家づくりをするようなイメージを持つことが大切です。
例えば「北側の家にお尻を向けちゃいけない」といった、建築をつくる上でのモラルです。
ですが、まだまだ北側の家に向けてたくさんの空調室外機が立ち並んでいる光景をよく見かけますので、そういったことが無くなるよう最大限の努力をしなければいけません。
本質的な理由があって生まれた景観にこそ意味がある
スタッフ
袴田さんは保育園を数多く手がけられていますよね。
保育園をデザインする際には、子供の視点を意識してデザインをされるのでしょうか?
袴田さん
子供の視点を意識するというよりは「大人が綺麗だと感じるものは、子供も綺麗だと感じる」という考え方をもとに設計をしています。
大人が「自然が多くて気持ち良いなぁ」と感じる空間は、子供も気持ち良いと本能的に感じると思うんです。
たしかに、子供たちが反応するビビットな色を建築に取り入れた「壁が全て水色の保育園」なども街中でよく見かけることもありますよね。
ですが、私は保育園自体をビビットな色にする必要はないと私は思っていて、それよりも建築物として気持ち良いかどうかを大切にデザインしています。
スタッフ
個人住宅でも、時折すごく派手な建物を見かけることがあります。
それについてはどうお考えですか?
袴田さん
私は、派手な建物そのものを否定しているわけではないんですよ。
例えば、有名な楳図かずおさんの「まことちゃんハウス」がありますよね。
建てられた当時は近隣の方々から景観に対する厳しい指摘がありましたが、私はあの家が一概にいけないものだとは思っていません。
あの家はある一定の社会的意図を持って、建てられたものと思うからです。
もちろん、社会的センスを持たずに、何の意図もなく建てられたものだとしたらマズいと思いますよ(笑)
ですが、意図してあのような建築物をつくることは人間の営みでもあると思うんです。
まことちゃんハウス
まことちゃんハウスは、吉祥寺に建てられたホラー漫画家の楳図かずおさんの邸宅で、赤と白のボーダー柄の外壁が特徴的な建物です。
景観上の問題から近隣住民による苦情が相次ぎ、建築工事の差し止めを求める仮処分が東京地裁に申し立てられるなどの騒ぎとなっていました。
スタッフ
景観のことだけを考えて、何もかもを完全に取り締まってしまっては、街並みとしての面白みがないですもんね。
袴田さん
今の景観条例って本当に厳しくて、世田谷区においては使える色の幅がほとんど無いんです。
そこまで景観条例で縛った街並みが将来どのように私たちの目に映るのか、これから何十年も先にならないと良し悪しは分からないと思います。
スタッフ
100年後には「同じ色の家ばかりだなぁ」と思っている可能性もありますよね。
そもそも、景観条例における使える色って、何を基準に決めているのでしょうか?
袴田さん
日本の景観条例によくある茶色系の色は、もともとは土の色や素焼きの色、レンガの色など昔からある自然の材料のイメージから来ているんだと思います。
ですが「レンガ風の街並みって綺麗だよね」というイメージで、それに似せた街並みを人工の塗料で再現する必要が果たしてあるのか、疑問に感じることはあります。
ただ、景観条例そのものは必要だと思いますし、景観を美しくするための努力を否定をするつもりはありません。
建築家の中には「景観条例なんてダメだ」と真っ向から否定する方もいらっしゃいますが、私の場合はそこまで否定的には思っていません。
スタッフ
外国でも、景観が整っていて素敵な街並みなどは多いですもんね。
袴田さん
そうですね。
有名なものだと、カラフルな街並みで有名なイタリアのブラーノ島や、真っ白な街並みのオストゥーニなどです。
ただ、それらは全て、生活上の利便性がもとになっていたり、その地域で一番安く手に入る材料を使うことによって、自然と生まれたものです。
日本の景観条例のように誰かが決めた指定色を使っているのではなく、その土地ごとの事情によって必然的に美しい景観が生まれたケースが多いのも事実です。
そうやって本来の生活ありきで生まれた美しい景観には、意味があると思います。
スタッフ
意味があって生まれた景観なのか人為的につくられた景観なのかは、大きな違いがありますよね。
ところで、袴田さんは建築のデザインを考える際に、こだわっていることはありますか?
袴田さん
デザインは人間がつくるものですが、根源的に美しいものが絶対にあるんです。
例えば、黄金比やプロポーションのようなものです。
ですが、建築の場合は人が暮らすものですから、デザインだけを割り切って考えられない難しさがあります。
工業製品の場合は「良いデザイン」と「悪いデザイン」が分かりやすいと思いますよ。
スタッフ
工業製品のデザインについて、良し悪しをご説明して頂くとしたらどのようなものがありますか?
袴田さん
カメラマニアの方には人気なのですが、ライカというカメラのメーカーがあります。
その中でもとくに「ライカCL」という型のデザインがすごくカッコ良いんです。
ですが、ライカに似せてつくった日本メーカーのカメラがあって、そのカメラはすごくカッコ悪いんですよね。
景観条例の話と重なる部分がありますが、クラシックなデザインを表面的に真似てつくったものなんです。
カメラマニアに人気の型だからといって、意味なく日本のメーカーがそのデザインを真似るのは、私はあまり好きではありませんね。
日本の建築の平均寿命を伸ばすことを考える必要がある
スタッフ
袴田さんが、これからの建築業界に望むことは何ですか?
袴田さん
一番大切なことは、建築を長持ちさせることです。
建築の良さは、本来であれば50年、100年と経った時に分かるものです。
しかし、現状は20年、30年経ったら壊さなければいけない社会の中で仕事をしなければいけません。
これからは、日本の建築の平均寿命を伸ばすことを考えていく必要があると思います。
スタッフ
建築の平均寿命を伸ばすためには、どうすれば良いのでしょうか?
袴田さん
建築の平均寿命には、色んな要素があります。
まずは第一に、耐久性の高い建物をつくることです。
しかし、それだけでは建築の平均寿命を伸ばすことは出来ません。
まだ使える建築であっても、ニーズがなくなったり飽きられたりするだけで、壊されてしまうんです。
そういった社会的要因で壊されないための企画がなされる必要があります。
袴田さん
私たち世代の建築家は新しい建築をつくることしか考えていませんでしたが、今の若い世代の建築家は「建物を残す」とか「古いものを維持する」といったことに目を向けてくれています。
今の建築業界は良い方向に向かっていると思っているので、今後が楽しみです。
一級建築士事務所袴田喜夫建築設計室有限会社のインタビューまとめ
袴田さんは、環境と社会に配慮して建築をつくることを大切にされています。20年、30年で建築が壊される日本の建築業界の現状に対して、建築の平均寿命を伸ばす必要があるというお考えは、とても印象的でした。
袴田さんに家づくりをお願いしたい方は、一級建築士事務所袴田喜夫建築設計室有限会社にお問い合わせください。
一級建築士事務所袴田喜夫建築設計室有限会社の詳細情報
会社名 |
一級建築士事務所袴田喜夫建築設計室有限会社 |
所在地 |
〒102-0093 東京都千代田区平河町2-5-7ヒルクレスト平河町401 |
代表者名 |
袴田喜夫 |
電話番号 |
03-6910-0433 |
営業時間 |
9:30~18:00 |
公式HP |
http://www.atelier-y-a.com/ |
対応する工事 |
建築の企画・設計・施工監理 |
対応エリア |
関東圏 |
その他 |
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