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今、日本で建てられている木造家屋のほとんどは、日本の土地に馴染まないつくりになっています。
特に地震に対する弱さは、巨大な地震によって倒壊した木造家屋の数を見れば明らかです。
しかし、古民家や古い寺社仏閣は、今なお数多く残りつづけています。
古くから伝わる日本の木造建築は、本来地震に強い構造になっているからです。
東京都中野区の松井郁夫建築設計事務所さんは、日本の伝統的な構法を用いて木造家屋を建てているのが特徴です。
代表の松井さんは、大工のもとで修業した経験をもとに、100年もつ「木組の家」をお客様に提供しています。
今回は、なぜ歴史のなかで失われようとしていた日本の建築を蘇らせたいと考えたのか、松井さんにその思いについて直接うかがいました。
日本の伝統的な木組みこそ、もっとも地震に対して粘り強い
スタッフ
松井さんは、どのようなお家を建てていらっしゃいますか?
松井さん
ほぼ金物を使わず、木材を日本の伝統的な構法で組み上げる「木組の家」を建てています。
スタッフ
「木組の家」は、一般の木造住宅と何が異なるのでしょうか?
松井さん
一つ挙げるとしたら、「木組の家」には粘り強さがあるのですよ。
現代に多く見られる木造住宅は強度のみが重視されていて、粘り強い家にはなっていません。
スタッフ
松井さん
外部からどんなに強い力を受けても力を逃がし、倒壊に至らないような構造になっている建物です。
どれほど頑丈な建物でも、強度の限界値を超える大きな地震に見舞われれば壊れてしまいます。
ですが、地震の力を受け流す構造になっていれば、建物が一時的に変形したとしても潰れることはありません。
スタッフ
「木組の家」は、倒壊しないつくりになっているのですね。
なぜ、松井さんは家を倒壊させないことを第一に考えていらっしゃるのでしょうか?
松井さん
地震が起きたときに、家の中にいる人が生き延びられる空間をつくってあげたいからですよ。
家が潰れなければ、住民の命は守れます。だから、何が何でも倒壊だけは避けなければならないのです。
「木組の家」の内観。
地震に対する安全性に優れるうえ、木の優しい香りが心に安らぎをもたらします。
スタッフ
松井さんは、なぜ「木組の家」をつくろうと考えたのですか?
松井さん
阪神淡路大震災で、木造住宅がことごとく倒壊するのを目の当たりにしたのがきっかけです。
阪神淡路大震災とは?
1995年(平成7年)、兵庫県の淡路島付近を震源として起きた巨大地震です。
犠牲者6,400人以上、全壊家屋10万棟を超える大被害をもたらしました。
参考
阪神・淡路大震災Wikipedia
松井さん
阪神淡路大震災は、私にとっても本当に衝撃的な出来事でした。それまで日本の木造家屋は地震に強いといわれていて、私も疑いなく信じていたからです。
ところが、現実には大地震に耐えられた家屋はほとんどなく、多くの方が建物の下敷きになって亡くなってしまったのです。
スタッフ
誰もが信じていた話にもかかわらず、いざふたを開けてみれば真っ赤なウソだったのですか。
松井さん
ウソというよりは勘ちがいでしたね。しかし、昔の民家だけは倒壊せずに残っていました。その民家は、私にとって希望となったのです。
そこで、私は日本の伝統的な構法を学びたいと考えるようになりました。
スタッフ
昔の民家を参考にしてお家を建てたら、地震で亡くなる方を減らせるのではないかと思ったわけですね。
松井さん
その通りです。日本の建築史を振り返ると、先人たちは「頑丈な建物よりも粘り強い建物こそが、地震大国である日本に必要だ」と考えてきたことがうかがえます。
だから、私は今の時代に建築を手掛ける者として、粘り強さを求めた「木組の家」をつくり、大地震で被害に遭う方を一人でも減らしたいと思うようになったのです。
建築にとって住人の命を守ることは使命
スタッフ
ところで、古民家など昔のお家には粘り強さが見られたのですよね?
なぜ、今のお家は粘り強さを失ってしまったのでしょうか?
松井さん
きっかけは、明治時代に起きた大地震ですね。
地震のあと、外国人の建築家が提言したのです。西洋の技術を取り入れて、日本の建物を固いつくりに変えるべきだ、と。
スタッフ
それを機に、日本で用いられる構法が変わってしまったのですか。
松井さん
はい。明治期以降の構法は「在来工法」などと呼ばれていますが、実は我が国に古くから受け継がれてきた構法ではありません。本来の伝統的な構法は、明治になってほとんど失われてしまったのです。
スタッフ
日本の伝統が否定されてしまったのですね。
ちなみに、西洋の技術がもたらしたメリットはなかったのでしょうか?
松井さん
科学技術そのものは、住宅性能を上げるのに役立っています。
私も科学技術を建築に取り入れていますよ。お客様に少しでも住み心地のよい住まいを提供したいですからね。
問題は、建物の強度だけを追い求めるようになって、建築の目的を忘れてしまったことでしょう。
スタッフ
松井さん
先ほども少し触れましたが、住人の命を守り、豊かな生活を送れるようにすることです。
明治時代より前は、建物が壊れなければ人命を守れると考えていました。
ですから、日本の伝統的な構法で建てられた民家はあえて傾くことを許し、大地震でも潰れないようにしているのです。
スタッフ
家が傾いたり歪んだりするだけなら、人命には影響しませんからね。
松井さん
そうです。昔の名もない職人集団は、建物に求められる目的をよく理解して建築技術を築き上げました。古民家などが100年以上を経てもなお残り続けているのは、そのためです。
だから、私は日本の伝統的な構法とともに先人たちの精神をも受け継ぎ、お客様が安心して暮らせる家を提供したいのです。
いつか古民家と呼ばれる家をつくりたい
スタッフ
ホームページで松井さんの経歴を拝見すると、全国町並み保存運動に参加されていらっしゃるそうですね。
町並み保存運動とは?
長い歴史を経て人々が形づくってきた、地域の景観を守るための活動です。
主に歴史的、伝統的な建造物が多く立ち並ぶ地域を対象として運動が行われています。
参考
町並み保存Wikipedia
スタッフ
松井さんが町並み保存運動に参加したのは、何がきっかけだったのでしょうか?
松井さん
1960年代に、新幹線や高速道路の建設計画によって、古い田舎町や田園風景が次々と壊されていったのがきっかけです。
私が大学に進学して東京に出ている間に、故郷である大野の風景がガラッと変わってしまったんです。なんてひどいことをするのか、と憤りました。
さらに、私の実家の敷地にも道路を敷く計画が立てられ、母は行政から「土地を半分譲ってください」などと言われたそうです。
スタッフ
当時、新幹線や高速道路の建設予定地は大変な騒ぎになったと聞いていますが、松井さんにとっても他人事ではなかったのですね。
松井さん
はい。そんなとき、小樽運河をはじめ日本の各地で町並み保存運動が出てきたんです。共感した私も、古い町並みを破壊から守りたいと思いました。
ちょうど大学に環境について研究する学科ができたので、私は一期生として入ることにしたのです。
スタッフ
古い町並みが破壊されることに、問題意識を持つ方が増えていったのでしょうか?
松井さん
そうかもしれませんね。
最初のころは、なぜ町並みを大切にするべきなのか、あまり理解してもらえませんでした。開発は良いことだと信じられていたからです。
ところが、町並み保存運動を粘り強く続けているうちに、世の中で町並み保存の気運が高まっていったのです。
今では、古い町並みの残る地域が観光地となり、他の地域から羨ましがられる存在になっています。
スタッフ
古い町並みを目当てに旅行へ出かける方が、たくさんいらっしゃいますよね。
古い町並みが今も残っている地域は、町並み保存運動によって守られたのですね。
松井さん
町並みは人を育み、原風景となる、人にとってかけがえのない場です。
私は町並み保存運動を通して全国各地を見て回り、多くの美しい町並みが失われていくのを目の当たりにしてきました。
ですから、これからも町並み保存運動を続けて、明治期より150年間で失われた日本の木造建築の文化を少しでも取り戻したいと考えています。
スタッフ
松井さんは古民家再生にも力を注いでいらっしゃいますよね。町並み保存運動の一環でしょうか?
松井さん
古民家再生は町並み保存運動とも深くかかわりますが、それだけではありません。古民家には素晴らしい価値が眠っているのです。
伝統的な構法で地震に強いのはもちろん、良質な木材が使われているためメンテナンスをしてあげれば長持ちします。化学物質の心配が一切ないので健康に過ごせますし、古材ならではの存在感にも恵まれています。
スタッフ
たしかに、それだけの好条件をそろえるお家を建てるのは、簡単ではなさそうですね。
ただ、日本の古いお家は「夏は涼しいが冬は寒い」といった印象があります。今の暮らしに慣れている方でも、古民家に住めるものなのでしょうか?
松井さん
手直しするときに断熱材を入れるので、まったく心配いりません。
むしろ、古民家の構造は温熱に向いているので、少し工夫するだけで現代の暮らしにマッチします。世の中に増えている庇も軒もない家より、よほどエネルギーを効率的に使える構造になっているのですよ。
スタッフ
古民家は単なるリサイクルの対象ではなく、積極的に活用するべき財産なのですね。
松井さん
その通りです。
また、人は自然の素材に囲まれていると、豊かでよい暮らしが送れます。本物の自然の素材に触れたときに、人の気持ちは落ち着き、活性化するからです。
目が覚めたときに木が見えたり、触ると温かい土壁があったりしたら、素晴らしいと思いませんか?
スタッフ
本当に素晴らしいと思います。憧れますね。
やはり、人は自然から離れて暮らせないのですね。
松井さん
古民家は先人たちの知恵の結晶です。だから、私は古民家を大切に守っていきたいのです。
加えて、伝統的な木組みの構法そのものも、未来につないでいきたいと考えています。私自身も、のちの時代に古民家と呼ばれるようになる家をつくりたいですね。
口コミ、評判
松井郁夫建築設計事務所さんの口コミを調べてみると、「木組の家」がもつ機能性の高さや使いやすさ、美しさにお客様が満足していることがうかがえます。
また、松井さんの理念や人柄、美的感覚にひかれて依頼を決めた方も少なくありません。
充実した日々を過ごしています。
松井先生のご著書を読んで、「木組の家」に住みたいという思いが募り、先生の設計事務所に伺いました。敷地が準防火地区であることを踏まえて、色々とご相談していく中で、シンプルにパッケージされた「木組の家」に断熱性能の良さを付け加えた住宅設計をお願いしました。竣工後には、温熱測定器を付けて家の温熱環境を測っています。外の温湿度と比較すると、家の中の温湿度は安定していることが分かりました。また、越屋根の窓を開けると家を中の空気がゆらぎ、空気がこもった感じがしません。一方、家の中心には吉野杉の大黒柱(180mm)があり、頼もしい限りです。最後に、日差しがたっぷり入る「木組の家」で、充実した日々を過ごしています。
松井さんの現代的な美的感覚にも惚れました。
実をいうと、松井さんのほかに数カ所、ラフスケッチまで描いていただいていたのですが、松井さんにお会いして、すっかり惚れ込んでしまいました。木組みで丈夫というだけでなく、松井さんの現代的な美的感覚にも惚れました。ご経歴に東京芸大のご出身とあり、なるほどと納得しました。家を建てるということを考えるまで松井さんのことは存じ上げず、本屋で妻が「夫はこういう家なら好きかも」と思って松井先生の本を手にとり、夫がその本を読んで「この人に会いにいこう」と即断したのがはじまりです。住みはじめて1年半以上が経ちますが、松井さんにお願いして本当によかったなぁとしみじみ思います。室内は無垢の木と漆喰でできているので、湿度も高くならず快適です。5才くらいの女の子がお父さんと家のまえの道を通り、「わたしこういう家に住みたいな」と言うのを聞いたときは、とてもうれしくなりました。
仕事ぶりに私はいつも敬意を抱いています。
友人の新築祝いに招かれそこで見たのが松井建築事務所の建物でした。木をふんだんに使い伝統的な造りで、それでいてモダンな設計に圧倒され私はその家に一目ぼれしてしまったのです。すぐにご連絡をして設計をお願いしましたが、私の用意した土地は狭小で、南側には大きな建物がある条件の悪いものでした。「完成しても狭い、そして暗い家になるのだろうな」と予想していたのですが、できあがってみるとその不安をふき飛ばすほどの完成度の高い建物があったのです。狭小なのに広い、南に建物があるのに明るい家が私の目の前に現らわしたのでした。(中略)わが家には除湿器、加湿器、または空気清浄機などの外部動力の設置は必要ありません。家自体がそういう性能を備えているからです。家というのは雨露をしのぐ「囲い」なのではなく、住む者を守ってくれるパートナーなのだと、ここに暮らして感じています。こうした昔からの素材や仕組みを現代に活かす松井事務所の仕事ぶりに私はいつも敬意を抱いています。
引用:houzz|株式会社 松井郁夫建築設計事務所
株式会社松井郁夫建築設計事務所まちづくりデザイン室のインタビューまとめ
文学に親しむ人にだけ、他人の心の声は聴こえます。
音楽をたしなむ人のみが、画一的でない多様なものを生み出せます。
建物は総合芸術です。文学や音楽を理解している人でなければ、本当のよい建築はつくれません。
よい建築は主張せず、静かに私たちへ語りかけます。
自然と調和し、美しい町並みの一部となり、私たちの心に安らぎをもたらすのです。
松井さんは「よい建築」を生み出すことに情熱を注いでいらっしゃいます。
あなたとご家族の心が安らかでいられるお家は、松井郁夫建築設計事務所さんが実現します。
株式会社松井郁夫建築設計事務所 まちづくりデザイン室の詳細情報
会社名 |
株式会社松井郁夫建築設計事務所 まちづくりデザイン室 |
所在地 |
〒165-0023 東京都中野区江原町1-46-12 江原ジュールカースル102号 |
代表者名 |
松井郁夫 |
電話番号 |
03-3951-0703 |
営業時間 |
9:00~17:00 |
公式HP |
http://matsui-ikuo.jp/ |
対応する工事 |
住宅の設計・施工監理 |
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