敷地内には、建物がある空間とない空間とがあります。建物がない空間は主に庭として整えられ、敷地の一部でありながら敷地外の世界とともに一つの風景をつくり出します。
このような風景を、ランドスケープと呼びます。ランドスケープは、都市の景観や自然の景色を含んだ幅広い風景を意味します。
東京都渋谷区に事務所がある捨象(すてぞう)設計ランドスケープさんは、建築と造園を手掛ける建築設計事務所です。
捨象設計ランドスケープさんは、家と庭とが一体となった風景をデザインしていらっしゃいます。
今回は、捨象設計ランドスケープさんの事務所にうかがってインタビューしました。
代表の小林さんが、どのような考えのもと建築や造園に携わっているのか、ご紹介いたします。
家と庭を一つの空間ととらえる

事務所の窓から見た風景。
超高層ビルを背景に、アガパンサスの花が咲いています。
スタッフ
小林さん
スタッフ
建築士を目指すきっかけが、何かあったのでしょうか?
小林さん
私は田舎育ちで兄弟が多いので、自分の部屋がありませんでした。だから、廊下の片隅に自作の机を造り付けて、そこを自分の”部屋”にしていましたね。
スタッフ
ところで、小林さんは建築に加えて造園も手掛けていらっしゃいます。造園についても、子どものころから興味があったのでしょうか?
小林さん
私は自然豊かな田舎で育ち、山遊びや川遊びが好きな子どもだったので、風景に対する敏感な感覚は幼少期から養われていたんだと思います。
私にとって、造園の原点は子どものころに見ていた風景にありますからね。
スタッフ
造園の仕事を始めようと決めたのはいつですか?
小林さん
大学卒業後に勤務した設計事務所は、建築設計がメインで造園はやっていませんでした。だから、独立前後の2年間くらい尊敬する造園家のもとで勉強させてもらいました。
スタッフ
小林さん
しかしながら、建築士と造園デザイナーは別々であることが多く、建築と造園の両方をやっている事務所はあまりありません。ですから、自分自身で両方に取り組んでみたいと思ったんです。
スタッフ
身近にある自然を庭の風景に取り入れる
スタッフ
小林さん
スタッフ
小林さん
環境を意識して建築と自然とをつなげるような庭をつくりたいと考えています。
ですから、借景もその一つの手法として使ったりします。
小林さん
ただ、庭と公園との間に道路が横たわっている場合は、ちょっとした工夫が必要です。

公園側から見た庭。
庭と公園の間に道路が横たわっている。
小林さん
そこで、塀で道路を隠して、手前の庭と遠くの風景があたかもつながっているように見せるのです。

庭側から見た公園。
建物の外壁と同じガルバリウム鋼板の塀で道路を隠し、公園の緑だけを借景として取り入れた。
小林さん
スタッフ
小林さん
スタッフ
小林さん
たとえわずかな敷地でも、土があって雨が当たり、天空の光があれば植物は育ちます。それも叶わなければ、鉢植でも借景でも、苔むした庭石一つでもよいのです。
そこにある自然風景を取り込み、建築と一体の空間をつくるという発想が大切なんだと思います。
消えゆく風景を大切にしながら新しい風景をつくる

所狭しと並ぶ住宅やランドスケープの模型と、雑誌に掲載された屋上庭園の作品。
スタッフ
小林さん
スタッフ
小林さん
そして、この失われていく風景は、誰かにとっての大切な風景かもしれません。なので、私は建築や造園の仕事に誇りをもっている一方で、どこかに罪の意識も抱いています。
スタッフ
小林さん
たとえば、クライアントのお母さんが生前大事にしていた樹があれば、なんとか植え替えられないか、あるいは、その樹をもとにプランを考えて、新しい風景に加えられないかと。
手を加える前の風景を、写真に残すようにもしています。
スタッフ
小林さん
環境がもっている意味や価値、ポテンシャルを読み取り、そしてクライアントの”思い”を大切にしてカタチにすることが、設計者に求められる作法だと私は考えています。

ランドスケープの模型。
鋼板で阿蘇外輪山の山並みを360度トレースして、さまざまな形に切り取った窓から阿蘇の山々が見えるというランドスケープアート作品。
スタッフ
小林さん
土地(敷地)のもつ環境特性を活かし、住まい手の”思い”を大切にして職人さんたちと協力しながら”世界に一つだけの家と庭”をつくりたい。私の作品ではなく、そこに生まれるべきあなたの住まいを!
スタッフ
本日はお忙しいなか、ありがとうございました。
まとめ
新しいモノが生まれれば、古いモノは失われていきます。
誰も意識しなければ、古いモノはただ消えゆくだけの存在です。
だから、小林さんは建築や造園を手掛ける際に、今ある風景を大切にします。
誰かが親しんだ風景を、その方の想いとともに守りたいと考えているからです。
それこそが、小林さんがつくる新しい風景が、最初からそこにあったかのように違和感なく馴染む理由でしょう。
新しいのに、どこか懐かしさを覚える風景。
誰かにとっての懐かしい風景を、あなたにとっての懐かしい風景にしたい。
そんな信念が、捨象設計ランドスケープさんにはあります。
会社名 | 一級建築士事務所 捨象設計ランドスケープ |
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代表者名 | 小林 捨象 (すてぞう) |
住所 | 〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町30-3 カヲリビル5F |
電話番号 | 03-5728-3611 |
公式HP | http://stezo.mmp.jp/ 【屋上庭園~空中のパラダイス~】 |
営業時間 | 10:00~20:00 |
主な業務 | 建築、造園、インテリア、ランドスケープ等に関する調査・企画・計画・設計・工事監理 |
対応エリア | 全国 |