桃建築計画室

仕事風景

小沢桃子(おざわとうこ)さんは、11歳の娘さんを持つママさん建築士です。

小沢さんが代表を務める、桃(とう)建築計画室
時には事務所を開放し、ワークショップが行われるなど、地域の人々が集まる憩いの場にもなっているそうです

そんな小沢さんの家造りは、主婦目線の設計や、お客様の真意を汲み取る丁寧なヒアリングが特徴で、女性建築士ならではの魅力が盛りだくさんです

小沢さんの家造りのこだわりを、千葉県市川市の小さな商店街の中にある事務所にてお伺いしてきました。

絵本『ちいさないえ』に影響を受けた幼少時代

ちいさいおうち

事務所に飾られている本の実物。秋田の田舎で育った小沢さんは、ちいさないえのエピソードがご自身の人生に重なる部分があるとお話されました。

スタッフ

お邪魔してすぐに感じたのですが、桃建築計画室さんは、とても可愛らしい雰囲気の事務所ですね。
オシャレな絵本や洋書が飾ってあったり、女性の建築士さんならではの暖かみを感じます
3年前に事務所を移転されたとお聞きしていますが、こちらの事務所には何かこだわりがあるのでしょうか?

小沢さん

ここの事務所はもともと雑貨屋さんで、居抜きの状態で前のオーナーさんに譲って頂いた物件なんです。
インテリアは「事務所の雰囲気に合うから洋書や絵本を飾った方が良い」と友人からアドバイスを頂いて、お気に入りの本を置かせて頂いてます。
飾ってある本の中に『The Little House』という絵本あるのですが、実はこの本が、私が建築家を目指すきっかけとなった本なんです

スタッフ

絵本がきっかけで建築家を目指されたというエピソードは、初めてお聞きしました。
とても素敵ですね。

小沢さん

もちろん幼少期に突然「よし!建築家になろう!」と開眼したわけではないですが、うまれてはじめて「建築家」という人が居ることを知ったのは、まちがいなくこの本ですね(笑)
この絵本の日本語版の『ちいさいおうち』を幼少期に読んでいて、大人になってからも潜在意識の中にずっと残っていたんだと思います
有名な絵本なので、コノイエの読者の方にも、ご存知の方はいらっしゃるかもしれません。
ちいさいおうち
バージニア・リー・バートン(著)
出版からおよそ80年以上経った現在も、世界中で賞賛される人気作品。
内容:主人公の「ちいさいおうち」は田舎の自然の中で四季を感じながら、幸せに暮らしていた。しかし、時代の流れとともに開発が進み、かつての美しい自然は失われ、悲しみに暮れていた。ある時に、家主の子孫がちいさなおうちを田舎に運び、再び心穏やかに幸せな日々を送ることになる。

スタッフ

子供の頃に見たり聞いたりしたものって、記憶に残りますもんね。
影響を受ける気持ちはすごく分かります。

小沢さん

そうですね。
幼少期の影響で言うと、子供の頃から工作も好きでした
母が子供用の小さな工具を買ってくれたので、夢中で何時間も遊んでいたんです
「桃子は、カマボコの板と金づちと釘を預けておけば静か」と母がよく言っていましたね(笑)

家庭と仕事の両立を図るために事務所を構えた

オフィス

スタッフ

小沢さんは元々、有名な建築家である池田靖史先生の事務所や、三菱地所やプランテック総合計画事務所といった大手の会社で、お仕事をされていたとお聞きしています。
現在はお一人で桃建築計画室を運営されていらっしゃいますが、働き方が変わったきっかけは何だったのでしょうか?

小沢さん

きっかけは“結婚と出産”ですね。
おっしゃる通り結婚前は、有名な設計事務所や企業で働いたり、大きな組織に属する働き方をしていました。
しかし、徐々に家庭との両立のために家で仕事をしたいと考え、10年以上前に桃建築計画室を設立したんです
ただ、当時はまだ住宅の設計はやっておらず、下請けの仕事がメインでした。

スタッフ

仕事の規模を大幅に縮小されて、心境に変化はありましたか?

小沢さん

確かに働き方は大きく変わりましたが、ポジティブな意味での変化なので、とくに不満はありませんでした。
これまで頑張ってきた自分の資格を活かせて、世の中に対して何かしらのお役に立てる
この働き方であれば、仕事と家庭を両立できると手ごたえを感じました。

スタッフ

ご自身にピッタリな働き方が見つかって、良かったですね。
住宅の設計は、いつ頃からされるようになったのでしょうか?

小沢さん

娘を出産し子育てをしている時に、初めての住宅を設計するきっかけが訪れました。
当時、幼稚園のママ友が家を建てようとしていて、色々なハウスメーカーや工務店などから話を聞いて回っていたのですが、私はセカンドオピニオン的な感じで相談に乗っていたんです
友人として色々とアドバイスをしているうちに「小沢さんに頼んだほうが良い」と自然な流れで言って頂けて、私が設計することになりました
その時に設計した家は、ホームページにも載っています。

スタッフ

ホームページを拝見しましたが、初めて設計した住宅とは思えないくらい素敵なお宅ですよね。
初めての住宅の設計は、大変でしたか?

小沢さん

ママ友からは、前々から「エアコンが嫌い」という話を聞いていたので、家全体の空気循環をしっかりと考える必要があると思っていました。
ですが、住宅の設計に関しては経験が浅く、まだ自信のない部分があったので『エアコンのいらない家』の著者である山田さんに声を掛けて、一緒に設計をして頂きました
ママ友が求めてることと、山田さんがお持ちの専門性が、ピッタリ合いそうだと思ったんです。
エアコンのいらない家
『エアコンのいらない家~自然のチカラで快適な住まいをつくる仕組み~』
山田浩幸 (著)
内容:「なぜわが家は窓をあけても外から風が入らないのか」「使っていない電化製品のコンセントを抜くと本当に節電になるのか」など、建物と住環境の快適さに関する素朴な疑問と解決策がたくさん詰まった1冊。

引用:ヤマダマシナリーオフィス合同会社|執筆書籍

スタッフ

ご自身の出来る範囲で片付けようとせずに、依頼主であるご友人や建築士のお仲間との繋がりなど、輪を大切されて一つのものを造られたのですね。さすがです。
コミュニケーション能力の高さは、女性の建築士さんならではの強みだと思います
ご友人も、要望が汲み取られた良い家が建って「小沢さんに頼んで良かった」と喜ばれたのではないでしょうか?

小沢さん

喜んで頂けたと思います。
友人が希望している住まい方を最大限に叶えるために、かなりこだわって設計しました
私としても、住宅の設計を始める良いきっかけになりましたし、感謝しています。
ワークショップの様子1

桃建築計画室で行われたフラワーアレンジメントのワークショップの様子。とても華やかです。

お弁当販売

コロナ禍をきっかけに、たまに駅前のカフェのお弁当販売もするようになったそう。

工作

かつて行われた英語だけで工作を教えるイベント。ガラス貼りの子育ては、ステキな縁をはこぶそうです。

主婦目線の設計と子育てママならではの仕事観

スタッフ

小沢さんの娘さんは、今年11歳になられたとお聞きしています。
今まで、子育てとお仕事の両立をされてきて、正直大変ではありませんでしたか?

小沢さん

大変かも知れませんが…(笑)
実は、建築家として仕事をしている時間は、出産前に比べたら5分の1にも足りません。
ですが、何かしらの形で、自分の出来る範囲でも良いから“仕事を続けていくこと”が大切だと思っています

スタッフ

あくまでも、お仕事とご家庭との両立を大切にされているわけですね。
ですが、そこまでしてお仕事を続けることにこだわっているのは、なぜでしょうか?

小沢さん

社会の風潮として「女性は結婚・出産をしたら仕事を辞める」という考えが、まだまだ根付いていると思うんです。
ですが、自分で娘を育てる上で、その考え方にはどうしても矛盾を感じてしまうんです

スタッフ

なるほど。
子育てママさんならではの目線ですね。
どのような点に矛盾を感じるのでしょうか?
是非、お聞かせ頂きたいです。

小沢さん

子供の頃から社会人になる頃までは、誰でも「頑張って勉強しなさい」「やりたい仕事を見つけなさい」と言われて、アイデンティティの確立を目指しますよね。
ですが女の子の場合は、生活に困らない程度に収入があるパートナーと結婚をしたら、途端に周りから「なんで働いてるの?」と悪気無く言われてしまいます。
私の子供も女の子なので、同じ経験をさせてしまう可能性があります。
娘には、仕事を辞めなくても良い選択肢があることを、伝えたいと思ってるんです

スタッフ

今まで考えたこともなかったですが、確かに大きな矛盾ですよね。
それまで頑張ってきたことが、結婚によって無くなってしまうのは勿体ないです。
それに、仕事を辞めることが大前提の人生だとしたら、頑張って勉強したり、やりたい仕事を見つけるために切磋琢磨するための、モチベーションが保てないですよね。

小沢さん

おっしゃる通りです。
もちろん、仕事を続けるか辞めるかは本人の自由です。
ですが、そうは言っても、私が結婚を機に仕事を完全に辞めてしまっていたら「勉強しなさい」「やりたい仕事を見つけなさい」などと自分の子供に堂々と言えないと思うんです
私が、家のことをしながらこの桃建築計画室で設計の仕事を続けているのには、娘に対してはウソをつきたくないという想いもあるんです。

スタッフ

凄く大切なことですよね。
共感される女性の読者も、きっと多いと思いますよ。
小沢さんは、とても思慮深く、感受性が豊かな印象を受けました。
住宅の設計は大きな建物の設計と比べて、お客様一人一人の価値観や考えを反映させることが大切だと思います。
小沢さんならば、お客様の想いに寄り添った住宅が建てられそうな気がします。
ギャラリー

ギャラリーのような桃建築計画室の一角。これまで小沢さんが設計されてきた住宅が紹介されていたり、設計中のお客様から送られてきたイメージを壁に貼り、お客様の「言いたい事」をひもといているそうです。

小沢さん

確かに、大きな建物の設計をする時は、クライアントの人となりなどは関係ありませんでした。
住宅の場合はお客様である人の心にダイレクトに触れられるので、面白いですし、やりがいがあります
色々なお客様の間取りに触れることは、それだけ色々なお客様のライフスタイルや人生にに触れることですからね。

スタッフ

些細な事でも、人によってこだわりのポイントが違ったりしますよね。

小沢さん

本当にあたりまえですが、同じ人って一人もいないんですよ。
例えば、洗剤のストックを置く場所は人によって全然違いますね
トイレットパーパー、玄関入ったそこに収納?!」と、驚いたこともあります(笑)
色々な人の価値観に触れるたびに違った発見があるので、本当に面白いです
私は主婦でもあるから、余計に面白く感じるのかもしれません。

お客様の想いの真意を汲み取ることに最大の注意を払う

スタッフ

小沢さんが住宅を設計する時、デザインはどのように決められているのでしょうか?

小沢さん

最近はインスタなどで参考になる住宅の写真がたくさん出回っているので、お客様の方から「こういうのが素敵」というアイデアが飛んでくることがほとんどです。
それに加えて、私は自分のデザインを強く持っているタイプの建築家ではないので、基本的にはお客様が希望されているデザインを叶える方向で設計をします
ただ、お客様がおっしゃることを丸飲みにするのではなく、プロとしてお客様の想いの真意を汲み取るようにしています

スタッフ

素晴らしいです。
私も含め建築の素人は、頭の中の漠然としたイメージや要望を、上手く伝えられるか不安があります。
そんな中で、きちんと真意を汲み取ろうとして下さる建築士さんが担当であれば、すごく安心ですよね。
お客様の真意を汲み取る際は、どんなことに気を付けてますか?

小沢さん

お客様からお話しを伺う時に、その一言ごとに最大の注意を払っています
例えば「リビングから子供の気配を感じられるようにしたいから、リビングの隣に子供部屋を作って欲しい」とお客様が希望されたとします。
このお客様が希望している真意は「リビングの隣に子供部屋を作りたい」のではなく「リビングから子供の気配を感じたい」なんですよね。
真意に気づかず設計してしまうと、お客様にとって理想の家造りは叶わなくなってしまいます

スタッフ

確かにその通りです。
担当する建築士さんによっては「リビングの隣に子供部屋を作れば良いのか」と安直に考える方も多いと思います。

小沢さん

ただ間取りを考えるのではなく、“その先の暮らしでどうしたいのか”を間取りに昇華することが重要だと思っています
実は「お客様の深い所の真意を紐解け」というのは、今まで働いてきた会社のボス達から言われてきたことです。
ですから、結婚前の職業人生で培われてきた感覚でもあります。
真意の紐解きには十分な時間をかけるようにしてますし、想いをカタチに組み立てることで、これから家を建てる人のお手伝いが出来ればと思っています
対談の様子

お客様の理想の家を設計するためには、お客様がおっしゃっていることの真意を汲み取ることが重要であると語られる小沢さん。

スタッフ

いままで色々な建築家の先生にインタビューをしてきましたが、その中でも小沢さんの家造りは、とくに丁寧な印象があります。
失礼な質問かもしれませんが、利益は出ているのでしょうか?

小沢さん

正直に言って、利益はあまり…(笑)
この事務所を継続するための経費を稼ぐのがやっとです。
設計事務所で利益を上げる為には、作業効率を上げることが鉄則であることは、経験からも既に答えは出ています。
ですが、仕事の目的をお客様の理想の家造りにフォーカスするならば、“フォーマット化”や“簡略化”など、企業が利益を上げる方策とは、違うアプローチをする必要があると思っています

スタッフ

なるほど。
ご自身のお考えで、お客様第一の経営をされているんですね。

小沢さん

私が利益を追求しなくて良いのは、生活費を稼いでくれ私を理解してくれるパートナーがいるからというところは、正直あります。
いち企業経営者としては、そもそも私は失格です(笑)

家造りは建築士に気楽に相談に乗ってもらえる環境が大切

スタッフ

小沢さんが家造りをされる上で、大切にしていることはありますか?

小沢さん

どんな家を建てようか、なかなか頭の中でまとまらないお客様ってすごく多いんです。
そんな時に「あなたの中で一番大切なのはこれでしょ?」「じゃあ、これはやめてみよっか?」と、建築士に気楽に相談に乗ってもらえる環境が大切だと思うんです
私はたまたま女性だし、普通の主婦ですので、話しやすいらしいです(笑)
談笑

スタッフと談笑する小沢さん。とても気さくで、話しやすい建築士さんです。

スタッフ

小沢さんのホスピタリティの高さを感じます。
これから家を建てようとお考えの読者の方に、ぜひアドバイスをください。

小沢さん

一番に想うことは家造りを「楽しんで欲しい!」ということですね
家造りは、プランニングとか打ち合わせとか、あっという間に数ヶ月経ちます。
建築士とは、半年とか、1年以上のお付き合いにもなります。
私自身、これまでの仕事を振り返ると、お客様に恵まれたお陰で、楽しくお仕事させていただいています。

スタッフ

お客様と建築士の関係が上手くいかない場合もあるんでしょうか?

小沢さん

あるんでしょうね。きっと(笑)
建築士側からすると「お客様が分かってくれない」とか、お客様側からは「建築士がきちんと対応してくれない」とか、たまに聞きますね。
家造りって、打ち合わせもショールームの見学も、お互いに真剣になりますから、心身共に疲れてあたりまえ。
そんな時こそ、楽しむことが必要だと思います。

スタッフ

これから住む家を建てるわけですから、造る過程も楽しんで、良い思い出にしたいですよね。

小沢さん

おっしゃる通りです。
楽しんで作るか、お互いにイライラしながら造るかどうかは、現場に影響しますし、不思議と建物の結果にも表れるんです
大工さんが上機嫌で、ちょっとした無理もニコニコ笑いながら請け負ってくれる現場がある一方で、嫌々仕事をしている現場もあります。
その二つを比べると、出来上がるものが全然違うんです。
ですから、良い家を建てるためには、苦労を楽しむ姿勢が大切です

スタッフ

“苦労を楽しむ”って大切ですよね。
その方が、良い時間が過ごせそうな気がします。

小沢さん

もしかしたら、建築士が悪気無く難しい言葉を並べたてることで、お客様は気持ちが疲弊してしまうことがあるかもしれません。
私は、出来るだけお客様に家造りを楽しんでもらえるように、上手く通訳したり配慮するなど心がけたいと思っています

まとめ

看板

幼少期に培われた建築への潜在意識がきっかけとなって、建築士を志した小沢さん。

小沢さんの家造りは、主婦目線の設計や、お客様の真意を汲み取る丁寧なヒアリングなど、女性建築士ならではの繊細な対応が魅力です。

また、女性が子育てをしながらも仕事を続けていくことに対して向き合われているお話も、とても印象的でした。

小沢さんに家造りのご相談をしたい方は、桃建築計画室までお問い合わせください。

会社名 桃建築計画室
代表者名 小沢 桃子
住所 〒272-0824
千葉県市川市菅野3-1-21-103
Mail tohko_oz@to-a.ptu.jp
公式HP https://to-a.net/
営業時間 9:00~1700
主な業務 注文住宅の設計、管理
対応エリア 首都圏