近頃、将来を見据えてバリアフリー住宅への建て替えを検討する方が増えています。家族の誰かがいつ、身体の自由が効かなくなっても、バリアフリーな家であればすぐに対応でき、安心ですね。
この記事では、バリアフリー住宅に建て替える際に注意すべきポイントや、バリアフリー住宅に強いメーカーについてご紹介します。なお、建て替えで高くなる税金についても触れていますので、ぜひ参考になさってください。
バリアフリー住宅へ建て替えるときに注意すべきポイント
何も知らないところからバリアフリー住宅への建て替えを検討すると、実は思ってもみないところがとても重要な場合もあります。以下でバリアフリー住宅を建てるときに気にしておくべきポイントを確認しましょう。
前の家と同じような部屋数・間取りにするのは難しい?
もし、車椅子での生活も想定してバリアフリーな家を建てるなら、あらゆる箇所をゆとりあるサイズでつくっておく必要があります。
例えば、カーポートは車を停めた状態で、横に車椅子を置き、移乗するためのスペースが必要です。また、雨の日対策で屋根も設置したいですね。もし、1階部分をカーポートに割くなら思ったよりも面積が必要です。
さらに、車椅子はUターンするのに直径1.4m以上のスペースが必要です。玄関やリビング、廊下、水まわりなどは不自由なく使えるよう、特に広くとっておきたいですね。
そのため、以前の家と同じサイズの家を想定していると、各部屋が狭くなってしまいます。以上をふまえて、建て替え時には以下のような工夫をするとよいでしょう。
建て替え時に床面積を広くとる
もし、敷地内に庭や使っていない物置などがあるなら、建て替え前よりも建物の面積を広くとるとよいでしょう。
ただし土地は、面積に対してどの程度の広さの建物なら建ててもよいか、建ぺい率と容積率で規制されているので、確認が必要です。
建ぺい率は、敷地面積の何%までなら建築面積にとってよいかを表したものです。なお、建築面積は建物を真上から見たときの面積です。例えば、敷地面積が100㎡で建ぺい率が50%の場合、50㎡までは建築面積として使えます。
容積率は、敷地面積に対して何%まで延べ床面積にとってよいかを表しています。容積率で、各階の部屋の広さと、何階までなら建てられるかがわかります。
例えば、敷地面積が100㎡で容積率が200%の場合、最大で延べ床面積200㎡(60.5坪)の建物が建てられます。
(引用:SUUMO『知ってると安心!建物の規制につかう「建蔽率(建ぺい率)」「容積率」ってなに?』より)
なお、建ぺい率と容積率は、市区町村役場の担当窓口(都市計画課など)に住所を伝えれば教えてもらえます。市区町村によってはインターネットでも調べられる場合もあります。
水まわりを一つにする
トイレ・洗面所・浴室などの水まわりは、車椅子で利用する場合や、介助者がついて利用する場合でも、ゆとりある広さを確保する必要があります。
以下の写真のように、水まわりをまとめてしまえば、トイレを使用する際に洗面所のスペースを利用するなど、スペースを有効に使えます。
(LOHAS studio「『バリアフリー』 人に優しい水廻り計画」より)
また、洗面所とトイレを一つにしてしまう例もあります。スペースを有効に使えますし、壁がなくスッキリとしたデザインになりますね。
(引用:せきそん嫁は今日も元気です『車椅子でも使えるサニタリースペースを大紹介~!』より)
バリアフリーにする箇所で特に注意すべきポイント
車椅子での生活も想定してバリアフリー住宅を建てるなら、車椅子でも通れるように最低限必要な幅や長さを知っておく必要があります。以下で、車椅子での暮らしを想定した場合に、注意すべきポイントを確認してみましょう。
スロープは車椅子を漕いで登れるものにするかどうか
玄関外にスロープを設置するなら、スロープの勾配(こうばい)に注意しましょう。手動の車椅子を漕いでスロープを登るには1/12勾配以下でないと厳しく、1/8勾配になると介助者がついていてもバックでないと下れません。
(引用:住むことブログ「車椅子で上り下りできるスロープの勾配 バリアフリーの基準値は?」より)
もし、車椅子でも登れるスロープを設置したい場合は、玄関だけでなく、お庭側を車椅子の上り口に選ぶ手もあります。さらに、どうしてもスペースがない場合は以下のような「段差解消機」を設置する手もあります。
(引用:大邦機電「施工一覧詳細」より)
段差解消機の価格段差の高さ | 価格 |
---|---|
40cm以内 | 60万円~ |
60cm以内 | 64万円~ |
80cm以内 | 68万円~ |
(参照:大邦機電「ラインナップ・料金一覧」より)
トイレ・浴室の介助スペースを確保する
トイレやお風呂は特に介助が必要になる場所です。どれくらいのスペースがあれば介助できるのか知っておきましょう。
トイレ
トイレの個室は、一般住宅によくあるサイズ(0.5坪)のものでも、便器の前方から壁までに85cmほどのスペースが空いていれば、車椅子を使用している方の介助が可能です。 また、引き戸を個室の横側に設置すれば身体の回転が少なく済み、さらにドアの開口幅を85cm以上あるものにすれば、トイレ外のスペースを利用することで車椅子での利用も可能です。
(引用:LIXIL『住まいのUDガイドブック』p76,77より)
浴室
浴室内は、洗い場の幅(浴槽まで)が80cm以上あれば、水まわり用車椅子が使えます。また、奥行きが1.6m以上あれば、後ろからの介助が可能です。
浴室は1坪サイズ(1616など)よりも、できれば1.25坪サイズ(1620)を選ぶほうが、介助がしやすいでしょう。
(引用:LIXIL『住まいのUDガイドブック』p121より)
なお、浴槽のまたぎ高さは40~45cmが理想です。以下の画像はTOTOの浴室(1620)ですが、浴槽までにベンチカウンターがついているため、腰掛けて身体を洗い、座ったまま移動して湯船に浸かれます。
(引用:TOTO「1620サイズFタイプ」より)
ドア・廊下などは幅に注意
車椅子の幅はJIS規格により、手動車椅子は63cm以内、電動車椅子は70cm以内と定められていますが、手動車椅子で移動するには腕の幅を含めてサイズを考えなければなりません。
余裕をもって生活するには、ドア幅は85~90cm以上、廊下幅は85cm以上が必要です。
(引用:TOTO『バリアフリーブック』p99より)
廊下で車椅子が横向きの人とすれ違うには、幅が120cmほど必要です。また、廊下の角を曲がるには、幅が90cm以上必要です。あらゆるシーンを想定して、廊下はゆとりあるサイズで設ける、もしくはなるべくなくしておくなど、よく検討しましょう。
バリアフリーに強いハウスメーカー・住宅設備メーカー
バリアフリー住宅を建てようと考えたとき、「まずはどこに相談したらよいのだろう?」「バリアフリーに特化した会社はないのか?」と思いますよね。
もし、インターネットでバリアフリー住宅のメーカーや設備について調べるなら、検索ワードは「バリアフリー」よりも「ユニバーサルデザイン」で調べましょう。
ユニバーサルデザインに強いハウスメーカー
積水ハウス
(引用:積水ハウスHP「スマートユニバーサルデザイン」より)
積水ハウスでは、1970年代からバリアフリーについて研究をはじめ、これまでにそれぞれのニーズに合った住宅を1600棟以上提供しています。
さらに2010年からは、それまでのデザインに「触れ心地がよい」「操作感がよい」「見た目が美しい」といったコンセプトを加え、「スマートUD(ユニバーサルデザイン)」を推進しています。
なお、積水ハウスは特に車椅子でも使いやすいデザインに定評があります。
スウェーデンハウス
(引用:スウェーデンハウスHPより)
世界に先駆けて高齢社会に対応してきた、「福祉の国」スウェーデンのデザインを取り入れた、北欧風の住宅を手掛けています。北欧に対応した住宅ですので、特に断熱性に優れています。
ダイワハウス
(引用:ダイワハウスHPより)
人の行動や身体の変化に応じた人間工学に基づき、ユニバーサルデザインの基本要件である「使いやすさ」「わかりやすさ」「安全性」に「美しさ」を加えた独自のコンセプト、「フレンドリーデザイン」を提案しています。
なお、ダイワハウスは1990年代から住宅でのIT活用について研究しており、住宅でもAIを取り入れ、言葉ひとつで電気をつける、消す、カーテンを開けるなど、住環境をより便利にする革新的な住宅づくりをしています。
ユニバーサルデザインを取り入れた住宅づくりをしているハウスメーカーは年々増加しています。しかし、地元の工務店がユニバーサルデザインに弱いかと言ったらそうではありません。ユニバーサルデザイン住宅はあくまでも、誰でも使いやすいサイズやデザインの間取り・設備を選んで建てた住宅に過ぎないからです。
設計からじっくりと相談に乗ってくれ、柱やドアの位置などを吟味しながら家づくりをしてもらえる点で、ハウスメーカーよりも工務店のほうがより理想に近い家づくりをしてくれる場合もあります。
参考 車いすでの暮らしを支える、バリアフリーの住まいSUUMOまずはご自身で理想の家を思い描いてみて、数あるハウスメーカーや地元の工務店に相談し、理想のデザインを実現できる会社を選び取ることがとても大切です。
ユニバーサルデザインに強い住宅設備メーカー
住宅メーカーや工務店を検討する上で、理想の住まいや希望のデザインを明確に担当者さんに伝えるためにも、まずは家の設備から理想のものをピックアップしてみるとよいでしょう。
ここでは、特にユニバーサルデザインに優れた住宅設備を多く取り扱っているメーカーをご紹介します。
TOTOなどTDY連合
TDY連合は、TOTO(トートー)、DAIKEN(大建)、YKK ap(ワイケーケーエーピー)の3社で連携し、各社の強みを生かした空間を提案しています。
TOTOはバリアフリートイレや、上でもご紹介したベンチカウンターを備えた浴室、車椅子でも使いやすい洗面台など、水まわり商品のラインナップを豊富に揃えています。
(引用:TOTO「洗面台検索」)
参考 カタログ・資料請求TOTOなお、YKK apは断熱窓や車椅子でも使いやすい玄関ドアなどに、また、DAIKENは室内の引き戸などに強く、TOTOのカタログ内でも商品が紹介されています。
(引用:TOTO『バリアフリーブック(住まいの水まわり編)』p24,25より)
(YKK apの玄関引戸についてはこちら)
(DAIKENの室内引戸についてはこちら)
LIXIL
LIXIL(リクシル)は2011年に5つのメーカーが統合してできた会社で、キッチンを含む水まわりの設備から、窓やドア、外構設備など、幅広くユニバーサルデザインを取り入れた商品を打ち出しています。中でも最近注目を集めているのが、車椅子でも使いやすいキッチン「ウエルライフ」です。
(引用:LIXIL『ウエルライフ』より)
LIXILのユニバーサルデザイン(バリアフリーを含む)のカタログは、以下のリンク先でご覧いただけます。
参考 安心・快適な住まいのポイントLIXILPanasonic
Panasonic(パナソニック)はホームエレベーターをはじめとして、さまざまな住宅設備のユニバーサルデザインを手掛けています。なお、ユニバーサルデザインでありながらシンプルで洗練されたデザインに定評があります。
(引用:Panasonicカタログ『ホームエレベーター』p10より)
以下のリンクから、設備ごとのカタログをご覧いただけます。
参考 カタログ | Panasonicカタログ | Panasonic以上のように、ユニバーサルデザインに力を入れている企業は年々増えています。ただし、「車椅子対応」といっても、使いやすさは人それぞれ違います。ショールームで実際に触れてみるなどし、場合によってはキッチンの設備ごと工務店にデザインしてもらうなど、オーダーメイドも視野に入れておくとよいでしょう。
建て替えで高くなる税金・活用できる補助金制度
最後に、建て替えをした場合に高くなる税金について、また、建て替え時に活用できる補助金制度について詳しく解説している記事をご紹介します。
建て替えで「家屋」の固定資産税が上がる?
建て替えをする場合、毎年の固定資産税が変化します。古い家と同じ土地で建て替える場合、基本的に土地の分は固定資産税は変わりません。ただし、建て替え工事が1月1日をまたぐ場合は税額が高くなるケースもあるため注意が必要です。
なお、家屋分の固定資産税額は、家屋の価値が上がるため高くなります。詳しくは以下の記事をご覧ください。
建て替え時に活用できる補助金制度
住宅を新築する場合、要件を満たしていれば、国や地方自治体から補助金が受け取れます。特にバリアフリー住宅や省エネルギー住宅は、いくつも優遇措置がありますのでぜひ事前にチェックしておきましょう。
まとめ
バリアフリーデザイン・ユニバーサルデザインには、これからもさらに革新的なアイデアが生まれてくるでしょう。多くのハウスメーカーや工務店、住宅設備メーカーを吟味し、納得の家づくりをしてくださいね。
なお、私たちあんしん解体業者認定協会は、家屋の取り壊し(解体工事)をお考えの方に、全国の優良解体業者さんをご紹介するサービス、「解体無料見積ガイド」を運営しております。
建て替えにともなう解体工事は、ハウスメーカーにまとめてお願いするより、分離発注したほうが数十万円単位で安く済むケースもあります。解体工事をお考えでしたら、まずはご相談からでも、ぜひお気軽にお問い合わせください。地域専任スタッフが工事完了までサポート致します。