自宅にホームエレベーターがあれば、重い荷物をラクに出し入れできたり、車椅子での移動も容易になったりと、普段の暮らしがとても便利になります。
しかし、あまりメジャーな設備とは言えないホームエレベーター。周りにホームエレベーターを取り入れた経験者がいないと、「ホームエレベーターを導入して後悔しないかな?」と不安になりますよね。
そこでこの記事では、ホームエレベーターのコスト面や、導入にあたって注意すべきポイントについて解説していきます。新居にホームエレベーターを取り入れようかお悩みの方は、ぜひ参考になさってください。
ホームエレベーターの初期費用
ご自宅にホームエレベーターを設置するためにかかる初期費用は、300万円~600万円ほどです。
初期費用の内訳は、大きく「①本体価格」「②設置工事費用」「③建築確認申請費用」の3つに分けられます。
①本体価格
初期費用の大部分を占めるホームエレベーターの本体価格は、250万円~550万円ほどです。 価格帯の幅が広いのは、以下の条件によって金額が上下するためです。
- サイズ
- 建物の構造
- 昇降行程
- 停止箇所
狭小住宅向きのコンパクトなエレベーターから、車椅子が乗り入れ可能な大型なエレベーターまであり、サイズが大きいほど価格も高くなります。
鉄骨造・RC造よりも、木造のほうが本体価格が高くなります。
昇降行程とは、最下階の床面から最上階の床面までの高さ(エレベーターが移動する距離)のことです。昇降行程が長いほど、本体価格は高くなります。
エレベーターの停止箇所が多いほど本体価格は高くなります。
例として、パナソニックのホームエレベーターの本体価格を比較していきましょう。
パナソニックのエレベーターは、積載量によって「2人乗りまたはゆとりの1人乗り用」「2人乗り用」「3人乗り用」の3サイズが展開されています。
2人乗りまたはゆとりの1人乗り用(積載130kg)
まずは、畳一枚よりもコンパクトなサイズが特長の「1208パーソナルV」というエレベーターの本体価格を見てみましょう。
広さ(最大) | 昇降行程 | 停止箇所 | 本体価格 (鉄骨・RC造) | 本体価格 (木造) |
---|---|---|---|---|
770mm×570mm (車椅子不可) | 6.2m以下 | 2箇所 | 258万5,000円 | 262万9,000円 |
3箇所 | 286万円 | 292万6,000円 |
このようなコンパクトなエレベーターなら300万円未満で購入できますが、車椅子が乗せられないというデメリットがあります。
2人乗り用(積載150kg)
次に、洗練されたモダンデザインが特長で、4階建までの建物に対応している「XLスリムモダンV」という商品の価格を見ていきましょう。
広さ(最大) | 昇降行程 | 停止箇所 | 本体価格 (鉄骨・RC造) | 本体価格 (木造) |
---|---|---|---|---|
1150mm×730mm | 7m以下 | 2箇所 | 305万8,000円 | 316万8,000円 |
3箇所 | 333万3,000円 | 349万8,000円 | ||
7m以上 10m以下 | 3箇所 | 349万8,000円 | 366万3,000円 | |
4箇所 | 377万3,000円 | 399万3,000円 |
このエレベーターでは、大人2人が余裕を持って乗れるほか、介助式車椅子・自走式車椅子の乗り入れもできるようになります。ただし、介助者も同乗する場合は窮屈になる可能性もありますので、サイズ感のシミュレーションは必須です。
こちらのサイズのホームエレベーターなら、300万円~400万円未満での購入が可能です。
3人乗り用(積載200kg)
最後に、木目柄のデザインがオシャレで、5階建までの建物に対応している「1418フォレストH」の価格を見ていきましょう。
広さ(最大) | 昇降行程 | 停止箇所 | 本体価格 (鉄骨・RC造) | 本体価格 (木造) |
---|---|---|---|---|
1500mm×920mm | 7m以下 | 2箇所 | 421万3,000円 | 432万3,000円 |
3箇所 | 448万8,000円 | 465万3,000円 | ||
7m以上 13m以下 | 3箇所 | 465万3,000円 | 481万8,000円 | |
4箇所 | 492万8,000円 | 514万8,000円 | ||
5箇所 | 542万3,000円 | 569万8,000円 |
このエレベーターでは、介助式車椅子・自走式車椅子のほか、ティルト式車椅子(リクライニング式の車椅子)の乗り入れも可能です。
ただし、本体価格は400万円以上と高額です。
オプション
エレベーターの本体価格に加え、必要に応じて設備を追加する場合には、オプション料金も上乗せされます。なお、商品によっては標準装備されている場合もあります。
ヨコ型手すり | 車いす用ガード | 換気扇 |
---|---|---|
14,740円 | 54,450円 | 33,990円 |
マルチビームドアセンサー | ルームミラー | 音声アナウンス |
88,000円 | 62,370円 | 110,000円 |
引用:商品特長|1418フォレストV/1418フォレストH |Panasonic
②設置工事費用
ホームエレベーターを導入するには、本体価格のほか、エレベーターを設置するための工事費用(据付費)が必要となります。 設置工事にかかる費用は、40万円〜50万円ほどです。
③建築確認申請費用
ホームエレベーターを設置するには、着工前の「建築確認申請」が義務付けられています。
建築確認申請費用は検査機関によって異なりますので、具体的な金額は検査機関に確認する必要があります。
ホームエレベーターのランニングコスト
ホームエレベーターを導入するための初期費用について理解が深まったところで、次はランニングコスト(維持費)について確認していきましょう。
ランニングコストは、年間7~10万円ほどかかります。ランニングコストの内訳は、大きく「①電気代」「②オイル交換代」「③メンテナンス費用」「④固定資産税」の4つに分けられます。
①電気代
まず気になる月々の電気代ですが、ホームエレベーターで1日10往復した場合の電気代は、400円〜800円ほどです。
②オイル交換代(油圧式エレベーターのみ)
エレベーターの駆動方法には「油圧式」と「ロープ式」の2種類があります。 油圧式エレベーターを選択した場合は、5年ごとにオイル交換代が5万円ほどかかります。
③メンテナンス費用
ホームエレベーターは定期的に点検などのメンテナンスが必要です。 そのため、例えばパナソニックには「年1~2回の法定点検」「故障出動、緊急救出」「バッテリーの無償交換」等ができるメンテナンス契約があります。
料金は商品シリーズやエレベーターの使用頻度によって異なりますが、年47,300円~70,400円です。
参考 ホームエレベーター/メンテナンスPanasonic④固定資産税
土地や建物といった不動産を所有している人に課されるのが固定資産税です。 中でも建物にかかる固定資産税は、自治体による家屋調査によって決定された「評価額」をもとに算出されます。この評価額は、高価な設備を導入しているほど高くなるため、ホームエレベーターを設置していることも評価額が上昇するひとつの要因になるのです。
ただし、固定資産税評価額の細かい算定基準は公開されていないため、正確な金額は市町村(東京23区の場合は東京都)の家屋調査を経て、納税通知書が届くまで分かりません。
ちなみに三和建設さんによるお客様への聞き込みによると、年間で2万円ほど高くなったとの返答があったそうですので、ひとつの目安として参考にしてみてください。
参考 住まいのこだわり・・・ホームエレベーターのある家 後編三和建設のコンクリート住宅 blogホームエレベーターの設置前に注意すべきポイント
ここまで、ホームエレベーターの初期費用やランニングコストについて見てきました。
それらを踏まえ、最後にホームエレベーターを設置する前に押さえておきたい注意点について解説していきます。
メンテナンスコストが高い
繰り返しになりますが、ホームエレベーターを購入して設置するだけでも300万円~600万円かかり、購入後も毎年ランニングコストとして7万円~10万円ほどが必要になります。
さらに、エレベーターの耐用年数25年~30年が経過すると、新しいエレベーターの設置・古いエレベーターの撤去も必要となるため、予算は計画的に確保しておく必要があるでしょう。
リフォーム時は設置工事が高額になる
新築住宅へのホームエレベーター設置工事費用は、40万円〜50万円程度だとお伝えしました。
ただし既存の建物をリフォームしてホームエレベーターを増設する場合は、補強工事などが必要となるため150万円~300万円ほどが必要となります。また、室内にエレベーター用のスペースがなく屋外に築する場合は、さらに200万円~400万円ほどが必要となります。
そのため「将来的にホームエレベーターを設置したいけど、ランニングコストがかかるからすぐにはいらない」という方も、新築の時点でエレベーター用のスペースは確保しておいたほうが安心でしょう。
自宅用エレベーターの費用や注意点についてのまとめ
この記事では、ホームエレベーターの初期費用やランニングコスト、設置にあたって注意すべきポイントについてご紹介しました。
ホームエレベーターを購入して設置するには、エレベーターのサイズや建物の構造によって300万円~600万円ほどかかります。さらに、ランニングコストが毎年7~10万円ほどかかるほか、耐用年数が過ぎるとエレベーターの取り替え工事も必要となります。
ただし、リフォームでエレベーターを増設するよりも新築時に設置したほうが費用は抑えられるため、新居にホームエレベーターを設置するかどうか迷っている方は、思い切って設置してみてもいいかもしれません。
ぜひ「どんなときにホームエレベーターがあったら便利だろうか?」をじっくり考えて検討してみてくださいね。