海外の住宅によく見られる暖炉。見た目もオシャレで、光熱費もかからないため、マイホームに取り入れようと計画している方も多いのではないでしょうか?
しかし、実は「暖炉」と「薪ストーブ」は違うものだということをご存知でしょうか?正確には、暖炉を改良させたものが薪ストーブの始まりなのです。もしかすると、あなたが取り入れたほうがいいのは、暖炉ではなく薪ストーブかもしれません。
そこでこの記事では、暖炉と薪ストーブの特徴や費用などについて比較しながら解説していきます。ぜひマイホームの暖房選びを進める上での参考になさってください。
暖炉と薪ストーブの違い
暖炉と薪ストーブは、どちらも薪を燃料とする暖房器具だという点では同一ですが、材質や形状、暖かさをはじめとしていくつかの違いがあります。
暖炉の材質はレンガや石材、薪ストーブは鋳鉄や鋼板
暖炉は、薪をくべるスペースが耐火レンガや石材で作られており、暖炉本体も壁面に埋め込まれています。一方で、薪ストーブは鋳鉄製や鋼板製のものが多く、薪ストーブの本体も部屋の一角に据え置きという違いがあります。
暖炉には扉がなく、薪ストーブには扉がある
暖炉には扉がついておらず、焚き火のように直火で暖をとります。一方で薪ストーブには扉がついており、薪に着火したあとは扉を閉じて使用します。
暖炉よりも薪ストーブのほうが暖かい
暖炉は燃費が悪く、薪を燃やして得られたエネルギーの90%は煙突から外に放出されてしまいます。そのため暖炉は火の直接的な暖かさしか感じられず、部屋全体が暖まりにくいという特徴があります。反対に薪ストーブは、密閉された扉内で暖められた空気が室内に行き渡るため、部屋全体がじんわり暖かくなるという違いがあります。
暖炉と薪ストーブで煙突の形状が違う
暖炉の煙突は、壁の中を通って外に抜けますが、薪ストーブの煙突は室内から壁に入り、壁の内部を抜けて外に出るという違いがあります。
暖炉は薪の匂いや火が爆ぜる音を感じられる
暖炉と言えば、薪が燃える匂いや、火がパチパチと爆ぜる音を感じられる点が大きな魅力です。しかし、扉を閉じて使用する薪ストーブからは匂いや音はほとんど感じられません。
暖炉・薪ストーブのメリット・デメリット
一見違いが分かりにくい暖炉と薪ストーブですが、いろいろと異なる点があることが分かりました。それらを踏まえて、次は暖炉と薪ストーブのメリット・デメリットを確認していきましょう。
暖炉のメリット・デメリット
- 直火で調理を楽しめる
- インテリアとしてもオシャレ
- 薪の匂い・火の爆ぜる音・炎のゆらぎを楽しめる
直火で調理を楽しめる
暖炉の火を使って、鉄板でピザを焼いたり、バーベキューのようにソーセージやマシュマロを焼いたりすることもできます。ガス火では味わえない美味しさや、調理の楽しさが感じられるでしょう。
インテリアとしてもオシャレ
普通の暖房器具だとどうしても生活感が出てしまいますが、暖炉はインテリア性が高く、海外風のオシャレな部屋を演出してくれます。また、マントルピース(暖炉を囲う装飾)は飾り棚としても重宝します。
薪の匂い・火の爆ぜる音・炎のゆらめきを楽しめる
暖炉からは、薪の匂いや火が爆ぜる音を感じられます。また、炎のゆらめきには「1/fゆらぎ」と呼ばれる癒し効果もあるため、「嗅覚」「聴覚」「視覚」をフルに使って暖炉を楽しめるでしょう。
- すぐに暖まらない・部屋全体が暖まらない
- 火災や火傷に注意が必要
- 初期費用・ランニングコストが高い
- 煙突のメンテナンスが必要
すぐに暖まらない・部屋全体が暖まらない
暖炉は、薪に着火してから暖かさを感じられるまで2~3時間ほどかかるため、その間は他の暖房器具を併用して部屋を暖める必要があります。また、薪ストーブと違って部屋全体を暖められないため、着火したとしても局地的な暖かさになります。
火災や火傷に注意が必要
暖炉には火を隔てられる扉がついていないため、周りの家具などに引火しないよう注意を払ったり、子どもやペットが火傷しないよう気を配ったりする必要があります。
初期費用・ランニングコストが高い
暖炉は薪ストーブより大掛かりな設備のため、本体価格や設置工事費用といった初期費用も高額になります。また薪ストーブより燃費が悪いため、より多くの量の薪も必要になります。
煙突のメンテナンスが必要
煙突に煤(スス)が付着したままにしておくと煙道火災の原因になるため、年に1回は煙突掃除が必要です。なお、煙突を自力で掃除するのは危険なため、ほとんどの場合は施工会社や専門業者に掃除を依頼することになります。
薪ストーブのメリット・デメリット
- 直火で調理を楽しめる
- インテリアとしてもオシャレ
- 部屋全体を暖められる
直火で調理を楽しめる
薪ストーブも暖炉と同様に、直火を使って調理ができます。さらに、ストーブの上部(ストーブトップ)では、薪ストーブの熱を利用して煮込み料理なども楽しめます。
インテリアとしてもオシャレ
薪ストーブも、暖炉に負けず劣らずインテリア性が高い暖房器具です。特に、レトロな雰囲気や北欧風のインテリアが好きな方には薪ストーブがぴったりでしょう。
部屋全体を暖められる
薪ストーブは暖炉より熱効率が高いため、暖かい空気が部屋中をじんわりと暖めてくれます。
- すぐに暖まらない
- 調理ができない機種もある
- 煙突のメンテナンスが必要
- オフシーズンは邪魔になる
すぐに暖まらない
薪ストーブも暖炉と同様、薪に着火してから暖かさを感じられるまで2〜3時間ほどかかるため、その間は他の暖房器具を併用する必要があります。
調理ができない機種もある
薪ストーブは暖炉よりもコンパクトかつ密閉されています。そのため、直火で調理する場合には、扉の中にクッキングスタンドやダッチオーブン(鍋)が入るだけのスペースが必要になります。
サイズによっては調理ができない機種もありますので、調理を楽しみたい方は注意して選びましょう。
煙突のメンテナンスが必要
薪ストーブも暖炉と同様、最低でも年に1回は煙突のメンテナンスが必要です。自力で煙突掃除をするのは危険なため、施工会社や専門業者に掃除を依頼しましょう。
オフシーズンは邪魔になる
普通の暖房器具と違って、薪ストーブは移動させることができません。そのため、春~秋までのオフシーズン中は生活動線の邪魔に感じる可能性があります。
暖炉・薪ストーブの費用
次に、気になる費用面について押さえていきましょう。
暖炉の費用
暖炉の本体価格・設置工事費用(初期費用)は、300万円〜500万円ほどと高額です。加えて、自力で薪を用意するのが難しい場合は、薪も定期的に購入しなければなりません。薪の費用は、月に45,000円ほどになります。
薪は2年ほど乾燥させたものを使用する必要があります。また、薪以外のもの(廃材や新聞紙など)や、機種によっては針葉樹を燃やしてはならない等のルールもあります。もし適切な薪を使用しないと、不完全燃焼を起こして煤やタールが発生し、ご近所の方にも迷惑をかけてしまう恐れがありますので注意しましょう。
また、年に1回の煙突掃除を業者に依頼すると、25,000~50,000円が必要となります。ちなみに、暖炉のほうが薪ストーブよりも造りがシンプルなため、メンテナンスもしやすくなっています。
薪ストーブの費用
薪ストーブの本体価格・設置工事費用(初期費用)は80万円~190万円ほどです。
薪を購入する場合は、月30,000円~45,000円ほどになります。なお、薪ストーブは暖炉よりも燃費がいいため、薪の購入費用も暖炉よりは抑えられるでしょう。また暖炉同様、煙突掃除も必要で、毎年25,000~50,000円ほどかかります。
暖炉・薪ストーブ設置時のポイント
最後に、暖炉や薪ストーブを設置する前に知っておくべきポイントについてご紹介します。
ご近所トラブルに注意しよう
暖炉や薪ストーブの普及に伴い、煙や騒音による近所トラブルが多発しています。そのため、新居に暖炉や薪ストーブを設置する際には、以下の項目に気を配るようにしましょう。
ご近所への事前説明
ご近所からの理解を得ずに暖炉や薪ストーブを設置してしまうと、使用後に苦情が発生し、最悪の場合使用できなくなってしまう場合もあります。そのため必ず施工前に、ご近所の方に暖炉や薪ストーブを設置する旨を説明し、理解してもらうようにしましょう。
暖炉・薪ストーブの点火時間
暖炉・薪ストーブの点火時間にも注意してください。煙突からは少ながらず煙が発生してしまうため、できるだけご近所の方が洗濯物を干している時間帯の点火は避けるなどの配慮が必要です。
薪の保管場所・薪割りの音
薪のストックを壁際に積み上げていると、シロアリなどの害虫を誘引しご近所にも迷惑をかける恐れがあります。そのため薪は、乾燥に適して安全な場所を確保して保管しましょう。
また、もし自分で薪割りをする場合はチェーンソーやエンジン式薪割機の音にも注意が必要です。騒音被害になる可能性がありますので、稼働時間には注意を払いましょう。
進化型の暖炉を選ぶという手もある
いろいろと制約が多い暖炉や薪ストーブですが、薪や煙突を必要としない進化型の暖炉やストーブを選ぶことで、悩みを解消してくれる可能性もあります。
バイオエタノール暖炉
まずご紹介するのはバイオエタノール暖炉です。
バイオエタノール暖炉とは、トウモロコシやサトウキビから作られる「バイオエタノール」を燃料とする暖房器具です。
燃焼させても有害物質や煙が発生しないため、ご近所に迷惑をかけないで済むほか、暖炉や薪ストーブと違って煙突が不要なため、大きなメンテナンスが不要というメリットもあります。
ガス暖炉
ガス暖炉は、都市ガスやプロパンガスを燃料とする暖房器具です。
燃焼部分にあるのは本物の木を模したセラミック擬木で、ワンタッチで点火してすぐに暖かくなるというメリットがあります。
電気暖炉
コンセントを繋ぐだけで使える電気式暖炉は、実際に火が点くわけではなく、イミテーションの炎や薪を楽しめます。
暖炉や薪ストーブと違って実際に燃えているわけではないため、小さい子どもやペットがいるご家庭でも安心して利用できます。
ペレットストーブ
ペレットストーブは、燃料に薪ではなく木質ペレットを使用するストーブです。ちなみに木質ペレットとは、木くず・おがくずなどを圧縮して固めた再生可能な燃料です。
ペレットストーブには煙突が必要ですが、薪ストーブほど本格的な煙突でなくていいため手軽に取り入れられます。
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マイホームに暖炉を設置する時のポイントについてのまとめ
この記事では、暖炉と薪ストーブの違い、メリット・デメリット、設置に必要な費用や注意点についてご紹介しました。
暖炉と薪ストーブには素材や構造を始めとしていくつか違いがあり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
また暖炉・薪ストーブを設置するにはご近所にも配慮が必要など、制約も多くあります。そのため、バイオエタノール暖炉やペレットストーブといった進化型の暖房器具も候補に入れながら、新居の暖房選びを進めるのがおすすめです。