新築を建てる際、子どもにとって安全な、火を使わない「オール電化住宅」を検討される方も少なくありません。
では、実際にオール電化住宅に住んでいる方は、どのくらいいるのでしょうか? 普及率を見てみると、東日本大震災の影響で一時は低迷したものの、2017年以降は右肩上がりに。
富士経済が発表した2020年の住宅市場調査では、オール電化の住宅数は27.1万戸 。
2030年には、1,000万戸を突破し普及率は約20%になるとも言われています。そんな人気上昇中のオール電化住宅。オール電化にすると、どのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか?
本記事では、オール電化住宅のメリット、デメリット、後悔しないための注意点についてお話しします。 せっかくの新築住宅。オール電化住宅にしようか迷っている方は、ぜひチェックしていただければ幸いです。
オール電化のメリット
1.ガスに比べ火事・やけどの心配がない
オール電化とは、電気や給油、冷暖房などで発生する熱源を全て電気でまかなうことです。 そのため、室内に熱源を持ち込まずに済み、ガス漏れの心配がなく火事になりにくいと言われています。
また、子どもが幼い場合は、目を離したすきにガスコンロの火をつけて、やけどを負ってしまったり火事になってしまうことも。 ですがオール電化住宅なら、火を使わないIHクッキングヒーターで調理が可能なため、火の扱いについての心配がなくなります。
※IHでも料理をした直後のヒーター部分は熱くなっています。直後は、子どもには触らせないようにしましょう。
2.電気料金のみの支払いで、夜安く使える
ガスと電気を併用している住宅は、ガス代と電気代の両方を支払う必要があります。 しかしオール電化の場合は、電気代のみの支払いです。
また、通常オール電化のご家庭では、夜の時間帯の電気代が安い、オール電化用の「夜間料金プラン」に加入し、電気代の安い深夜にお湯を作って貯めておく「エコキュート」を導入します。
このエコキュート、色々なサイズがありますが、3~4人家族であれば370リットルが一般的と言われています。
引用:ダイキンエコキュート
日中は外で働き、夜家に帰ってくるという生活パターンであれば、お風呂も夜入ることになるため節約につながります。 さらに、暖房や冷房なども夜間は日中より安く使うことが可能です。
3.少ない換気で快適に過ごせる
オール電化は火を使わないため、ガス併用家庭に比べ室内の空気も汚れにくいです。
ガスを使う場合、料理の際は換気が必要ですよね。冬は、外の寒い空気を部屋に入れたくないといった方も多いですが、料理中などガスを使う場合は換気をしないと、(ガス漏れや不完全燃焼などでの)一酸化炭素中毒になる恐れがあります。
しかし、オール電化なら一酸化炭素中毒などの心配もないため、料理の度に毎回換気をする必要もありません。 また、花粉症の方からは「外からの花粉を中に入れなくてすむので、助かった!」との声もあります。
4.災害時に強い
電気の強みは、災害時の復旧率がライフラインの中で1番早いことです。そのため、オール電化は災害時に強いというメリットがあります。
下記は、東日本大震災のライフライン復旧率のグラフです。緑が電気で、青が水道、赤が都市ガスですが、電気の復旧率が軍を抜いて高いですよね。
さらに、オール電化のご家庭では、前述したエコキュートなどで、夜のうちにお湯(水)をタンクに貯めておきます。 そのため、断水した際、生活用水として利用できるのも災害に強いと言われている理由です。
オール電化のデメリット
ここまで読んでみて、「オール電化にしたい!」と思ったかもしれませんが、デメリットもあります。 ぜひデメリットも知った上で、判断してくださいね。
1.昼間の電気代が高くなる
前述した通り、オール電化にお住まいの方は、夜間料金が安い電力プランに加入される方がほとんどです。
つまり、日中に電気代を多く使うと、その分電気代が高くつくということです。
お昼に料理や家事をする場合や、朝お風呂に入る場合などは注意が必要です。また、床暖房やエアコンの暖房も日中に使う場合は割高となってしまいます。
※夜、安く使えるというメリットはなくなりますが、電力プランを、夜間料金プランから通常の料金プランなどに変更することで、日中の電気料金を抑えることもできます。
2.導入コストが高い
オール電化にする場合は、IHクッキングヒーター、給湯に使うエコキュートまたは電気温水器などを導入する必要があります。
ただ、導入の初期費用が、ガスコンロ等を設置するのに比べ高く、壊れた場合、修理費用や買い替え料金もプラスでかかります。
仮にエコキュートを導入した場合、費用相場は大きさにより異なりますが、本体価格が15~30万円程度、設置工事費が15~20万円程度。IHクッキングヒーターと併せると約40万円~70万程度かかると言われています。
一方、ガスを導入した場合は、工事費用と併せても約20万円程度です。
さらに、エコキュートの寿命は、10~15年とも言われています。「ずっと使えるわけではなく、後で修理や買い替えが必要になる可能性が高い」と言ったことは頭に入れておいた方がいいでしょう。
3.エコキュート(貯蔵タンク)を置くスペースが必要
災害時にも活躍するエコキュート。オール電化のご家庭では、夜お湯(水)を貯めておくことになるため、必須のアイテムです。 ただ、このエコキュート、エアコンの室外機のような形をしたヒートポンプユニットと、お湯を貯め置きするための貯湯タンクユニットの2つ分を屋外に設置しなければならずスペースを取ります。 一般的なサイズは、貯湯タンクユニットが幅900mm前後、奥行き300mm前後でヒートポンプユニットが幅550~650mm、奥行き600~750mm程度とされているため、置き場所に悩まれる方も少なくありません。
4.電磁波の影響
電磁波とは、エネルギーの波のことで、電子レンジが発するマイクロ波(高周波)、電気配線や家電製品から発する低周波など様々な種類があります。
この電磁波ですが、人体に悪影響があるとされています。 具体的には、痺れるような感覚を感じたり、体温があがったりといった影響です。
また、発がん性のリスクもあるのではと言われていますが、現時点で科学的因果関係は立証されていません。オール電化住宅では、ガスを併用している住宅より電気を使用することになるため、電磁波の影響を心配される方もいらっしゃいます。
特に「IHクッキングヒーターから出る電磁波は強いらしい」との情報が出回っているため、気になる方も多いようです。
ですが、WHOが認知している国際⾮電離放射線防護委員会(ICNIRP)によると、ガイドラインの安全基準を満たしており、過剰な心配の必要はないと言えます。
下記、赤のラインが安全基準で、このラインを超えた場合が危ないと言われています。
引用:製品別 ICNIRP ガイドライン(2010)値に対する測定結果
クッキングヒーター以外にも電磁波は洗濯機やエアコン、パソコンなど多くのモノに流れているため、ガスを併用している住宅でも電磁波は出ています。
つまり、オール電化住宅に住むから電磁波の悪影響を受けるというわけではありません。
ただ、中には電磁波を心配してオール電化にしない人もいるといった事実や、電磁波の影響を少なくするには長時間の利用を控えるなど対策が必要といったことは知っていた方がいいでしょう。
後悔しないための事前チェックポイント
先述では、オール電化のメリット・デメリットについて解説しました。
では、具体的にどのような視点から、オール電化にするかしないの判断をすればいいのでしょうか? あらかじめ確認できるポイントについてお話しします。
1.日中電気使用量を減らして生活できるか?
オール電化住宅は、夜に電気を使用する生活を前提としているため日中電気を多用する場合、電気代が高くなります。
夜、炊飯器をタイマーでセットしておくなど、日中に家電製品を極力使わない工夫ができるかということは、十分話し合っておいた方がいいでしょう。
また、きれい好きな方やお風呂好きな方は注意が必要です。 エコキュートは、夜お湯をわかすことで電気代が安くなりますが、例えば前に入った人のお湯が気になるといった方もいるでしょう。
実際、家族がお風呂に入るたびに浴槽のお湯を入れ替えているというご家庭では、「お昼もお湯を沸かさないとタンクが空になってしまい結局お昼にも沸かしている、そのため光熱費があまり安くなっていない」といった声もあります。
2.料理過程にこだわりはないか?
チャーハンなどは一般的に鍋やフライパンなどを振って料理することが多いかと思います。しかし、IHはガスと違い調理器具をヒーター部分に接触させることで料理するため、調理器具を持ち上げての料理ができません。
実際に普段から「振って」料理することが多かった方は、IHにして後悔したそうです。
反対に、IHはガスに比べ火力が強いとされています。また、プレートがフラットなため掃除もサッと拭き取るだけでよく、家事の時短になったとの声も多数あります。
調理方法など料理をとるのか、家事の効率化をとるのか、何を重視するのかという視点で一度考えてみてください。
3.音に敏感でないか?
お湯を沸かすためのエコキュートは、ヒートポンプユニットと呼ばれるエアコンの室外機のようなものがついていますが、このヒートポンプユニットから出される音が「うるさくて夜眠れない」という方もいらっしゃいます。
環境省によると、この音の大きさは「図書館の館内」、「夜間の住宅街」の生活音に近いと言われています。
そんなに大きく感じないかもしれませんが、エコキュートは基本的に夜動かすため、日中は大丈夫だという方でも「夜だと気になって寝付けない」といった場合もあり、注意が必要です。
また、稀ではありますが、このヒートポンプユニットから出る音が原因で、近隣トラブルになったケースもあります。
あらかじめ寝室から遠いところに設置するなどの工夫はできますが、夜少しの物音でも起きてしまうといった方は、注意した方がいいでしょう。
4.現在、資金は十分にあるか?
オール電化のデメリットでもお話ししましたが、オール電化は初期費用が、ガスに比べ高額となります。 ただ、オール電化にすることで光熱費を抑えられたとの声も多く、最初は高額ですが「長く住んで元を取ろう」とされる方もいらっしゃいます。
クレジットカードを使う場合、一括払いと分割払いと選べますが、後者は手数料がついてくるのが一般的ですよね。 対して、一括払いは、手数料を払わなくていいというメリットがありますが、無理して払って後で困るといったこともあります。
オール電化にしようか迷っている方は、「住宅にまわせる予算がどのくらいか」という視点でも考えてみてください。
新築にオール電化を導入する時のポイントについてのまとめ
これまで、オール電化のメリット、デメリット、注意点についてお話しさせていただきました。
現在どういったライフスタイルを送っているのか、今後送りたいのか、ライフプランを明確にすることで、おのずと「オール電化住宅が自分たちの家庭にとっていいのか?」、正解が見えてくるはずです。
ぜひ今一度、ご家族でどういった生活をしたいのか話し合ってみてください。