新築した家に引っ越してから「目のかゆみ」「頭痛」「倦怠感」などに悩まされている人が多くいます。花粉症にも似た症状ですが、もしかすると原因は、新築ならではのアレルギー症状かもしれません。
この記事では、新築住宅でアレルギー症状が引き起こされる原因や、その予防策について解説しています。これから家を新築したいと考えている方は、ぜひ参考に家造りを進めてください。
新築でアレルギー症状が出る原因
新築でアレルギー症状が出る原因は、大きく「シックハウス症候群」と「ハウスダスト」の2つに分けられます。
シックハウス症候群の原因になる化学物質もハウスダストも空気中を漂っており、それらを吸い込むことでアレルギー症状を引き起こす恐れがあるのです。
ここでは、シックハウス症候群やハウスダストによるアレルギー症状が出る原因や、その症状などについて解説していきます。
1.シックハウス症候群
シックハウス症候群とは、「ホルムアルデヒド」などの化学物質によって引き起こされる体の不調のことです。
ホルムアルデヒドは、接着剤・防腐剤・塗料の成分として、建材のほか、家具・カーペット等さまざまな製品に使用されています。
シックハウス症候群によるアレルギー症状の原因
シックハウス症候群を引き起こすホルムアルデヒドなどの化学物質は、揮発性が高く(常温ですぐに気化する)、有毒ガスを発散するという特徴があります。
つまり、新居の建材や家具に使われたホルムアルデヒドから発散された有毒ガスが空気を汚染し、汚染された空気を吸引することでシックハウスの症状が現れるのです。
なおホルムアルデヒドによる有毒ガスの発散量は、時間が経つにつれて減少していきます。そのためシックハウス症候群は、新築・リフォーム・大型家具の購入後に発症することが多いのです。
参考 シックハウス症候群の予防は生活環境の改善からオムロンヘルスケア
シックハウス症候群によって起こるアレルギー症状
厚生労働省によると、シックハウス症候群は医学的に確立した単一の疾患というわけではなく、居住に由来するさまざまな健康障害の総称を意味する言葉とされています。
そのため、局所的な不調から全身に関わる不調まで、シックハウス症候群の症状はさまざまです。
目 | チカチカする、涙目になる |
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鼻 | 刺激感がある、鼻水が出る、乾燥する |
口 | 唇が乾燥する、咳が出る |
のど | 乾燥する |
皮膚 | 紅斑、じんましん、湿疹、かさかさする |
全身 | めまい、吐き気、嘔吐、頭痛、疲れやすい |
このようにさまざまな症状が表れるシックハウス症候群ですが、具合が悪くなるのは室内にいるときだけで、家を出ると症状が治まるという特徴があります。
2.ハウスダスト
アレルギー症状を引き起こすもうひとつの要因であるハウスダストは、家の中にあるチリやホコリの中で1mm以下の肉眼では見えにくいものを指します。
ハウスダストの中身は、室内で発生した「食べ物のクズ」「髪の毛・フケ」のほか、外から入ってきた「花粉」「煙や排気ガス」、空気中に漂う「カビの胞子」「病原菌」なども含まれます。
参考 第1回ハウスダストとは?|ハウスダストの知識と対策くらしのお役立ち情報│ダスキン
ハウスダストによるアレルギー症状の原因
私たちの体は、害を及ぼす異物が体内に入ってくると、その異物を攻撃して体の外に追い出そうとする免疫力が備わっています。
つまりハウスダストによるアレルギー症状とは、体内に侵入したハウスダストを異物と判断することで引き起こされるさまざまな症状のことなのです。
ハウスダストによって起こるアレルギー症状
ハウスダストによって起こるアレルギー症状は「くしゃみ」「鼻づまり」「目のかゆみ」「皮膚の炎症」など、シックハウス症候群と同様、多岐にわたります。
さらに、ハウスダストは以下の疾患の原因にもなります。もし罹患の恐れがある方がいらっしゃれば、早めに医師の診察を受けましょう。
アレルギー性鼻炎 | くしゃみ・鼻水・鼻づまりなどの症状が出ます。 |
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アレルギー性結膜炎 | 目のかゆみ・充血・違和感・涙目・痛みなどの症状が出ます。 |
アトピー性皮膚炎 | 皮膚に湿疹・かゆみなどの症状が出ます。 |
気管支喘息 | 呼吸困難や激しい咳・痰などの症状が出ます。 |
参考 ハウスダストの原因とアレルギー症状 日常生活でできる対策アレルラボ
化学物質を使用しない家造りをして【シックハウス対策】
せっかく家を新築するなら、アレルギー症状の出にくい家造りをしたいですよね。
そのためには、家を建てる段階でシックハウス症候群の原因となる化学物質をできるだけ排除することが重要です。
具体的には、以下を意識した家造りをすることでシックハウス対策になります。
建材に自然素材を使う
合板・集成材などの木材やビニールクロスといった建材には化学物質を含む接着剤が使われているため、それらの建材が使われた家に住むことで、シックハウス症候群の症状が出る可能性があります。
そのため、シックハウス症候群に悩まされにくい家造りをしたい場合は、以下のような自然素材でできた建材を使用するようにしましょう。
無垢材は合板や集成材と違い、伐採した木をそのまま切り出して作った木材のため、化学物質を含む接着剤が使われていません。そのためフローリングや柱などには無垢材を使用することでシックハウス対策になります。さらに無垢材には調湿効果もあるため、結露を防止してカビの発生も防いでくれます。
珪藻土は、植物性プランクトンの一種である藻類が堆積して化石化した土のことで、塗り壁材として使用されます。この珪藻土は、化学物質を含む接着剤が使われておらず、自然素材のみで構成されています。そのため、内壁をビニールクロスではなく珪藻土の塗り壁にすることで、シックハウス症候群の症状が出にくい家になります。さらに珪藻土は、バスマットとしても使われれるほど吸水性にも優れているため、結露によるカビ・ダニの繁殖防止にも有効です。
漆喰は水酸化カルシウムを主成分とした塗り壁材で、珪藻土と同様、化学物質の使われていない自然素材です。そのため、内壁に漆喰を使用することでシックハウス対策になります。漆喰も調湿性が高いほか、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドを吸着してくれる効果もあります。そのためシックハウス症候群に悩まされない家造りをしたい方は、塗り壁材に漆喰を取り入れるのもおすすめです。
参考 漆喰で「シックハウス症候群」を予防する!|納得!素晴らしき漆喰の世界-4漆喰うま~くヌレール公式サイト
家具の品質にも気を配る
家具に化学物質が使われていた場合も、アレルギー症状が出る恐れがあります。
そのため、新築やリフォームに伴い家具を新調したいとお考えの方は、ホルムアルデヒドの発散量が少ない「F☆☆☆☆(エフフォースター)」という規格のものを購入しましょう。
現在、日本製の家具はほとんどF☆☆☆☆と言われています。しかし、海外製の家具の中にはこの基準を満たしていないものもあるため、しっかり製品表示を確認してから購入するようにしてください。
参考 安心・安全への取り組み|家具づくりのこだわり浜本工芸株式会社
新居に住み始めてからできる【ハウスダスト対策】
新居に住み始めてからアレルギー症状に苦しめられることがないよう、以下のようなハウスダスト対策にも力を入れましょう。
換気して空気を入れ替える
昔の住宅に比べて、最近の住宅は高気密・高断熱化が進み、夏も冬も快適に過ごせるようになりました。しかしその反面、隙間風などによる自然の換気ができなくなり、室内の汚染された空気が十分に換気できていない住宅も増えてきました。
そのため、新居では意識的に窓を開けるようにし、新しい空気を取り入れましょう。特に、気温が高くなる春~夏は化学物質の発散量が多くなるため、エアコン使用時も定期的に窓開け換気をしてください。
もし花粉やPM2.5のため窓を開けるのが難しい場合は、換気システムを活用して空気を入れ替えましょう。
こまめに掃除する
掃除はハウスダスト対策に有効です。ハウスダストは小さく軽いため、日中は人の動きに合わせて空気中をあちこち漂っています。
しかし、人が寝静まるとハウスダストも動きを止め、床の上に堆積します。
そのため、朝一番に掃除をすると、床に溜まったハウスダストを一掃できます。
しかし、いきなり掃除機をかけるとせっかく床に溜まったハウスダストが舞い上がってしまいます。そのため、まずはモップや乾いたシートで静かに床のハウスダストを取り除いてから掃除機を使いましょう。
最後に雑巾やウェットシートで床を水拭きすれば、さらにハウスダスト対策に効果的です。
布団は丸洗いして天日干しする
室内で発生するハウスダストの多くは、布製品から発生する綿ボコリです。特に寝具は綿ボコリのほか、髪の毛やフケなどダニのエサとなるものも多く含まれるため、放っておくとどんどんハウスダストが増えてしまいます。
そのため布団などの布製品は、定期的に丸洗いと天日干しをしましょう。ダニの死骸やフン、卵は水洗いすることで取り除けます。さらに天日干しにして乾燥させることでダニの繁殖も防げます。
また、しっかり乾燥させたあとは布団専用のノズルで掃除機をかけるとさらに効果的です。
参考 ハウスダスト対策の注意点!正しく掃除できていますかアレルラボ
まとめ
この記事では、新築でアレルギー症状が出る原因や、アレルギー症状が出ないための家造りのポイントについて解説しました。せっかく家を新築したのに、自分や家族がアレルギーに苦しむことになっては大変ですよね。
アレルギー症状の原因となるシックハウス症候群やハウスダストは、自分次第で予防・対策することができます。新居に住み始めてから後悔することのないよう家造りを進めてくださいね。
なお、コノイエでは、全国で活躍している建築家や工務店の想いにフォーカスした記事を多数掲載しています。中には、シックハウス症候群を始めとするアレルギー症状の出ない家造りを精力的に手掛けている建築家や工務店もいます。
「建築家は何となく敷居が高い」と感じている方も、ぜひ一度、彼らの想いに触れてみてください。