先祖や家族を祀り、感謝を表し心を通わせるためにお家に置かれる“仏壇”。 そんな仏壇ですが、今の時代、敬虔な方でなければ「お家を建てる時、仏壇はどうしようか?」と思い至ることはそう多くないはずです。現在では“仏壇を置かない”という選択肢も一般的になっています。
しかし、ご自身の想いや相続等でお家に仏壇を置くことは多いですし、仏壇を置く場合は事前に「どこに置くべきか?」「どんなものを置くべきか?」と考えておく必要があるのです。仏壇をお家に置くのなら、事前にしっかりと準備をしておきましょう。
今回は、新築のお家に仏壇を置く際に気をつけたいポイントや、選べる仏壇の種類などを解説します。
お家に仏壇や仏壇のための仏間は必要?
現在では、“お家に仏壇を置かない”という家庭は60%を超えるとされています。 理由は多々ありますが、やはり最大の理由は“置き場がない”ということにあるようです。
それもそのはず、仏壇は非常に大きく幅をとるので「仏間」と呼ばれるスペースの中に置くのが一般的でした。 かつては“お家を建てる際には考慮して当然”の存在だったため、それをあまり考慮しなくなった現代の住宅ではどうしても困ってしまうことが多いのですね。
そのため、お家に仏壇を置きたいのであればかつてと同様に仏壇の置き場所を考える必要があります。
大きな仏壇は仏間に置くべき?
仏間は、床の間やクローゼット、押入れのように壁のくぼみの中にある仏壇用スペースのこと。和室につくられることが多いです。 以前は仏壇のために仏間を確保するのが一般的でしたが、現在ではリビングや寝室等に仏壇を置くこともメジャーになっています。仏間や和室自体がないお家も増えたためですね。
また、仏間よりも更にコンパクトな収納スペース等に仏壇を置いても問題はないようです。
仏壇を置く際に気をつけておきたいこと
仏壇は、それぞれの宗派の教えにならう必要があり、またその性質上来客を招くことも多くなるため、お家に置く場合には注意すべきポイントが多いアイテムです。 菩提寺の方に聞くのもよいですが、ご自身でも仏壇を置く際の作法や注意点についてもある程度チェックしてみましょう。
お家に置く時の開眼供養
仏壇を新しく買った時も相続等で引き継いだ時も、共に“開眼供養(かいげんくよう)”という儀式が必要になります。開眼法要、お性根入れ、魂入れ等の別名で呼ばれることも。 お坊さんを呼び、お仏壇の中のご本尊や位牌に魂を宿らせるための読経を行っていただきます。
仏壇やご本尊は買った時には霊験は宿っておらず、開眼供養により礼拝の対象となるのです。 また、相続の場合では、前の家から仏壇等を持ち出す前に“閉眼供養”と呼ばれる儀式が必要になることもあります。
どちらも菩提寺や仏壇を購入した仏具店等に相談し、依頼するのがよいでしょう。
サイズ選びに気をつけよう
伝統的な仏壇の大きさには、引き出し等もついている“床置き型”と、コンパクトでどこでも置ける“上置き型”の二種類があります。 それぞれ向き不向きや収納するためのサイズが異なるため、ご自身の置きたい場所に合わせ、仏壇や仏壇を置く場所のスペースをすり合わせていきましょう。
仏壇をどこにどう置くか
実は、仏壇には「この場所に置きましょう」といった決まりはありません。ですが、利便性等を加味すると仏壇を置きやすい場所はおのずと絞られてきます。 仏壇の設置に向いた場所の代表例を紹介します。
仏間
言わずもがな仏壇を置くためにつくられた場所のため、仏壇を置くには最適と言えるでしょう。
リビングやダイニング
仏壇はそのお家に住まう方だけでなく、親戚や友人などの来客も多く拝むことになります。そのため、普段から人が多くにぎやかで、来客用に使われることも多いリビングやダイニングは仏壇を置く場所として適しています。
ただし、お家によっては仏壇が周りから浮いてしまわないために、仏壇選びやレイアウトに工夫が必要となります。
寝室
くつろぎの空間であり、スペースに余裕を持たせることも多い寝室。仏壇や生花の劣化対策のため、日光が直接射さないように気をつければ、問題なく仏壇を置けます。
2階に仏壇を置いてもいいの?
仏壇を2階に置くお家や、2階に仏間を用意するお家はあまり多くありません。 ですが、「仏壇を2階に置いてはいけない」というわけではないのです。
「仏壇の2階部分は開けておいたほうがよい」と言われていることを考えると、いっそ2階に仏壇を置いた方が気兼ねなく過ごせるかもしれません。ただし、仏壇はいつも拝み、こまめにお世話をしていくもの。将来的に階段の登り降りが負担になってしまうかもしれませんし、1階にリビングや応接間があると来客時にも少々不便となります。
また、大型の床置き型仏壇の場合、お家の設計によっては階段を通して仏壇を運び込めない、ということも起きてしまう可能性があります。 仏壇を2階に置いても問題はありませんが、置く場合には設計の段階からその家での住み方について設計士さんと相談しておきましょう。
宗派毎に異なる小物の種類
仏壇では、宗派ごとにそれぞれ適した祀り方(仏具等の飾り方)があります。
こちらは全日本宗教用具協同組合が定めた、それぞれの宗派の祀り方を記載したページとなります。
また、「何を買えばいいのか、自分では自信がない……」という方は、まず仏具店の方や菩提寺のお坊さんに祀り方を尋ねるのがよいでしょう。
どんな仏壇があるの?どれを買えばいいの?
さて、いざ「仏壇を買おう!」と思い至っても、具体的にどんな仏壇があるのか、何を選べばいいのか?という選択の幅は大きな悩みの種にもなります。 そこで、こちらでは現在主流になっている仏壇の種類三種(金仏壇、唐木仏壇、現代仏壇)をご紹介します。 上記のぜひ仏壇選びのご参考にしてくださいね。
綺麗な細工に見惚れる“金仏壇(塗り仏壇)”
金仏壇は、黒い漆塗りの外装に金箔で飾り立てられた内装でつくられた、荘厳で美しい仏壇です。その特徴的な漆塗りから、“塗り仏壇”とも呼ばれることも多いです。主に浄土真宗で推奨されている仏壇ですが、他のあらゆる宗派でも利用することができます。また、浄土真宗の方でも菩提寺のお坊さんと相談しておけば、金仏壇以外の仏壇を選択することも可能です。
漆や金箔が繊細で綺麗なぶん劣化しやすいため、直射日光を避け、日々のお手入れを欠かさずに、その見栄えを保っておきたいところです。漆の塗り方や金箔の細工、彫刻など様々な部分に職人の技を必要としているため、その造形の質が価格に表れます。
やや派手目なので、洋間等のより和室や和のテイストを押し出したお部屋に置くとマッチしやすいでしょう。
侘び寂びを感じる“唐木仏壇”
黒檀(こくたん)や紫檀(したん)、欅などでつくられた、シックで落ち着いた雰囲気の仏壇が唐木仏壇です。こちらもどのような宗派でも使うことができます。 唐木仏壇は金仏壇に比べ作業工程が少ないぶん、材質の耐久性や美しさがそのまま価格に直結します。
洋風リビングにも調和する“現代仏壇(モダン仏壇)“
現代の日本人の住まい方に合わせて生まれた現代仏壇(モダン仏壇)。 唐木仏壇や金仏壇を踏襲したクラシカルなデザインはもちろんのこと、そのどちらとも違ったオシャレで独特なものまで、そのつくりは多岐に渡ります。全体的にコンパクトなのが特徴で、場所をとらないのもうれしいポイント。
和室のないお家や、洋風・ヨーロピアン調など様々な雰囲気のお部屋にも無理なく合わせることができるのが大きな強みです。 また、後述する“ミニ仏壇”には現代仏壇として当てはまるものが多いです。
“ミニ仏壇”でおしゃれかつコンパクトに
仏壇を置く、と考えた時にやはり気になるのが「置くだけのスペースを用意できない……」「洋室に置きたいけど、デザインが合わないかも……」という2点。 ですが、仏壇の大きさも多様化が進んでいます。
上置き型の仏壇を更に小型化したものは数多く、家具調でこぢんまりとしたデザインや、テーブルに乗る小さなサイズのカジュアルな仏壇など様々な仏壇が現在では存在しています。 サイズに比例して価格も安価になりやすいため、大型の仏壇に比べて手を伸ばしやすいのも利点です。お家のスペースやインテリアとしての兼ね合いにお悩みなら、現代的なミニ仏壇はうってつけと言えるでしょう。
なお、「いい仏壇 仏壇購入実態調査2018」によれば、仏壇の平均購入価格は33.6万円程度となっています。
どんな仏壇を選ぶにせよ、まずはご自身の予算を決めた上で、無理なくお家に合った仏壇を選びたいですね。
新築の仏壇についてのまとめ
新築で仏壇を置く際のポイントや、購入する仏壇の選べる種類について説明させていただきました。 仏壇を置く際には場所や飾り付けに気をつけるべきマナーや、注意しなければいけないポイントがあります。
また、現代では仏壇にさまざまな種類があり、お家のスタイルに合わせた仏壇を置くこともできます。 祀られた方々への感謝を忘れることなく、ご自身に合った仏壇を選ぶことで、毎日心地よく手を合わせてご先祖や家族と想いを通わせることができるでしょう。