ビルトインガレージは建物の一部や1階部分に内蔵されたガレージのことで、ガレージハウスやインナーガレージとも呼ばれています。愛車を好きなタイミングで整備できたり、秘密基地のように趣味に使う道具を置いたりできるビルトインガレージには、憧れを抱いている方も多いのではないでしょうか?
そんなビルトインガレージですが、建築にあたってはメリットのみならず、注意しなければならないデメリットも存在します。この記事で詳しく解説していきますので、ぜひ家造りを進める上での参考になさってください。
ビルトインガレージのメリット
まずは、ビルトインガレージのメリットを確認していきましょう。
憧れのビルトインガレージには、私たちの生活を豊かにしてくれるだけでなく、大切な愛車を守ったり、毎月の維持費を抑えたりしてくれる役割もあります。
悪天候から愛車を守れる
ビルトインガレージは、屋根と柱だけのカーポートと違い、壁やシャッターに囲まれています。
そのため雨風による錆付きや外装の劣化から車を守り、いつでも愛車を綺麗な状態に保てるメリットがあります。また、台風や強風によって車に飛来物が接触して、車体が傷付いてしまうトラブルも防げます。
直射日光による車の色褪せを防げる
野ざらしの状態で駐車するのと違い、直射日光による塗料の日焼けや色褪せを防止する効果もあります。
ガレージと家との動線がスムーズ
ビルトインガレージは家と繋がっているため、雨や雪が降っていても濡れずに車を乗り降りできます。また雪が多い地域では、車の雪かき・雪下ろしが不要なのも大きなメリットでしょう。
子どもやお年寄りがいる場合も、ビルトインガレージなら車と家との移動が簡単です。さらに、大きな買い物をした場合の荷物の出し入れがしやすいというメリットもあります。
趣味を楽しむスペースにできる
ビルトインガレージは車やバイクの駐車スペースとしてだけでなく、趣味に使う道具を格納するスペースとしても活用できます。さらに、車のメンテナンスやカスタマイズ、DIYなどの趣味を楽しむためのスペースとして利用できるというメリットもあります。
家の中から愛車を鑑賞できる
家とビルトインガレージとの仕切りをガラスやアクリル板にすると、家の中からいつでも愛車を鑑賞できるようになります。
駐車場代がかからない
ビルトインガレージにすることで、別途駐車場を借りる必要がなくなるため、毎月の駐車場代も節約できます。特に東京などの都心部では、月極駐車場の料金は3万円以上になると言われていますから、毎月の維持費を抑える上でも大きなメリットになるでしょう。
狭い敷地を有効活用できる
1階をビルトインガレージにすることで、都心部などの狭小地でも、駐車スペースを確保できるようになります。
またビルトインガレージが延床面積(各階の床面積の合計)の1/5以下なら、延床面積の計算から除外される緩和措置があります。つまり、ビルトインガレージを延床面積の1/5以下にすることで、ガレージ分の面積を家に使えるため、その分広い家が建てられるようになります。
ビルトインガレージのデメリット
次に、ビルトインガレージのデメリットを見ていきましょう。
デメリットの中には、対策可能なものもあれば、対策ができないものもありますので、じっくり検討してみてください。
排気ガスがこもりやすい
寒い時期は、暖機運転をして車の中を事前に暖めることがあると思います。しかし、シャッターを閉めた密室のビルトインガレージは排気ガスがこもりやすいため、そのままだと健康被害に繋がる危険があります。また、排気ガスのせいで家の中まで臭くなるといった問題もあります。
そのためガレージ内に換気扇を設置したり、こまめにシャッターを開けて換気するなどの対策が必要になります。
騒音や振動が響きやすい
ビルトインガレージは建物と一体化しているため、車のエンジン音やシャッターの開閉音、振動が響きやすいというデメリットがあります。
そのため寝室や、高齢者・赤ちゃんのいる部屋は、ガレージの近くには設置しない等の配慮が必要です。またシャッターは、通常のシャッターよりもコストはかかりますが、音が静かな「オーバースライダー」を選んだほうがいいでしょう。
建築コストが高い
ビルトインガレージにすることで、駐車スペース用の土地を別途購入するための費用や、月々の駐車場代を捻出する必要はなくなりますが、そもそもの建築には高い初期費用がかかります。
具体的には、一般的なサイズ(6坪程度)のビルトインガレージをつくるには、250万~400万円ほどの費用が必要です。
屋根と柱だけのカーポートは50万円ほどで設置できることからも、ビルトインガレージの建築コストの高さがお分かりいただけると思います。
家づくりを大きく左右する金額であるため、「ビルトインガレージは本当に必要か?」は家族できちんと話し合って決める必要があります。
参考 ガレージハウスのメリット、デメリット ビルトインガレージ、インナーガレージとの違いは?固定資産税は?SUUMO
間取りが制限される
ビルトインガレージは建物の1階部分につくられることが多いため、特に狭小住宅の場合は、居住空間を2階や3階にせざるを得なくなります。
さらに、年齢を重ねると2階や3階までの階段の上り下りが大変に感じる可能性がある点も考慮しておきましょう。
作り直しができない
ビルトインガレージは建物の中に組み込まれているため、簡単には作り直しができません。そのため、もしビルトインガレージに入らないような大きな車に買い替えたり、新しい車を購入したりした場合は、別途駐車場を借りる必要が出てきます。
耐震性が低くなる
1階にビルトインガレージのある住宅は、車の出し入れをする道路側に壁がほとんどなくなります。つまり、建物を壁や柱で支える部分が減ってしまうため、耐震性が低くなってしまいます。
そのためビルトインガレージを取り入れる場合は、木造ではなく重量鉄骨造にしたり、コストはかかりますが壁が少なくても強度が確保できる構造設計にしたりして耐震性を強化する必要があります。
参考 地震に強い家・弱い家大阪の耐震診断・耐震リフォーム専門会社・ナカタ
固定資産税がかかる
固定資産税とは、土地や建物などに対して課せられる税金のことです。建物の税金は、建築に使用した資材や、各スペースの広さなどによって評価額が算出されます。つまり、贅沢な仕様ほど固定資産税は高くなります。
屋根と柱だけでできたカーポートは「建物」に該当しないため固定資産税はかかりませんが、 ビルトインガレージには固定資産税がかかります。ビルトインガレージは通常の部屋と比べると簡素な造りであるため、固定資産税の評価額は低くなりますが、電動シャッターなどの贅沢な設備を導入すると評価額も高くなってしまう可能性があるため注意が必要です。
なお、固定資産税の具体的な金額は自治体によって異なりますので、詳しくはお住まいの自治体に確認してみてください。
参考 ガレージにかかる固定資産税はいくら? 固定資産税がかからないガレージも紹介!オウチーノ
ビルトインガレージにして後悔しないための4つのポイント
ビルトインガレージのメリット・デメリットについて解説してきました。
これらを踏まえて、ビルトインガレージにして後悔しないためのポイントについて再確認していきましょう。
1.老後を含め、将来を見据えた設計にしよう
ビルトインガレージは建物と一体化しているため、あとから作り直すことが困難です。
そのため、もし将来的に大きな車に買い替えたり、愛車のコレクションが増えたりする可能性がある場合は、あらかじめガレージのサイズも広めに確保しておいたほうがいいでしょう。
また1階がビルトインガレージで、2階や3階を居住スペースとしている場合も注意が必要です。家を出たり入ったりするたびに階段を上り下りしなければならないため、老後は大変かもしれません。
そのためビルトインガレージを取り入れる前には、老後を含め、将来のことまでしっかり検討しておきましょう。
2.ガレージの大きさに注意しよう
先ほど「将来を見据えてガレージのサイズは広めに確保したほうがいい」とお伝えしましたが、ガレージが大きすぎる(延床面積の1/5をオーバーする)と、延床面積の緩和措置が受けられなくなる点も注意しておきましょう。
繰り返しになりますが、ビルトインガレージの大きさが1/5以下であれば、緩和措置によってガレージ分の面積を家に使えるようになるため、その分広い家が建てられるようになります。
しかし、ガレージを小さくしすぎると、せっかくの趣味に使えるスペースが足りなくなってしまうかもしれません。
そのためビルトインガレージの大きさを決めるときは、「あなたの住宅の延床面積がどのくらいか」「ビルトインガレージをどれくらい広くしたいか」「居住スペースをどれくらい広くしたいか」等を総合的に検討する必要があります。
3.耐震性に注意しよう
1階をガレージにしている住宅は、建物を支える壁や柱が少なくなるため耐震性が低くなるとお伝えしました。もし横に長い住宅であれば、ビルトインガレージにしても建物を支えられる壁や柱があるため、耐震性はそこまで大きく損なわれません。
しかし、東京のように土地が狭い地域では、どうしても細長い造りになり、駐車スペースを間口いっぱいに設けなければならなくなります。つまり内部に空間が大きく開いてしまうため、耐震性が低くなってしまいます。
そのため、特に狭小地でビルトインガレージにしたい場合は、コストはかかりますが重量鉄骨造にしたり、木造の中でも耐震性の高いSE構法を取り入れたりして、耐震性を強化させる必要があります。
参考 注文住宅に求められる耐震等級とは?狭小住宅に必要な耐震性東京の狭小住宅ならホープス
4.固定資産税を意識した設備にしよう
カーポートと違い、ビルトインガレージには固定資産税がかかります。 具体的には「基礎があり、土地に定着している」「屋根があり、三方向以上の周壁がある」「居住・作業・貯蔵などの用途に供し得る状態」の3点を満たすと、固定資産税が発生します。
通常の居住スペースに比べると、ビルトインガレージは造りが簡素であるため、固定資産税の評価額は低くなります。しかし、電動シャッターなどの贅沢な設備をつけると、その分評価額が上がり、固定資産税の税率も高くなってしまうため注意が必要です。
ただし、どこからが「贅沢」と判断されるかは自治体によって異なります。そのため、詳しくはお住まいの自治体に確認した上で、ハウスメーカーや工務店、建築家と相談して設備を決めていくといいでしょう。
新築のビルトインガレージについてのまとめ
この記事では、ビルトインガレージのメリット・デメリットについて解説しました。
ビルトインガレージにするには、いくつか注意しなければならないポイントがありますが、「ビルトインガレージがずっと夢だった」という方も多いはず。そんな方は一度、建築家に相談してみるのもひとつの方法です。
ゼロから住宅を設計してくれる建築家なら、耐震性や将来的な使い勝手、延床面積や固定資産税にもしっかり配慮した上で、あなたにぴったりのビルトインガレージを提案してくれるでしょう。
そこで最後に、ビルトインガレージの設計を得意としている建築家をご紹介します。インタビュー先のページから直接お問い合わせできるようになっていますので、気になる建築家にはぜひコンタクトを取ってみてくださいね。