「階段選びを制する者は快適な生活を制す」
こういっても過言ではない理由。それは、階段は毎日昇り降りするところだからです。 日々の生活に直結しているため、できるだけストレスを感じさせない作りにすることが快適な生活をつくる上での大切なポイントとなります。
「傾斜が急すぎて体がキツい」「おしゃれだと思ってリビング階段にしたけど、来客時は気が休まらない」といった事態は避けたいところ。
そこで、今回は階段選びで知っておきたい大切なポイントをご紹介します。 新築住宅を建てる際の参考にしていただけたらうれしいです!
1.一般住宅における階段の寸法基準
階段は建築基準法によって、「階段幅・踏み面・蹴上げ・蹴込み」と部分ごとに建物に適したサイズが細かく定められています。
階段の寸法基準
踏み面 | 階段を昇るときに足を乗せる部分です。奥行きの長さは最低15cm以上必要。毎日安心して昇り降りできるサイズが望ましいですね。 |
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階段幅 | 階段の横の長さです。一般的な住宅の階段では最低75cm以上。階段でのすれ違いをスムーズにしたい場合は広く取る必要があります。 |
蹴込み | 階段の立ち上がり部分で、踏み面の先端部分と蹴込み板との間にある所です。蹴込み部分が長いと足がひっかかりやすくなり危険。そのため基準値は3cm以下と定められています。 |
蹴上げ | 階段1段の高さを示しています。昇りが急になりすぎないよう、一般的な住宅の場合では23cm以下と決められています。 |
2.階段の位置
戸建て住宅を建てるときに、一番重要なのが階段の位置です。 なぜなら、階段と間取りの関係はとても密接。住居の動線や室内の印象に大きく関わる部分だからです。
基本的に、階段の位置は「リビング階段」「玄関近くの階段」の2つにわかれます。 リビング階段とは、リビングにある階段のこと。玄関近くの階段とは、玄関近くの廊下に、2階へ上がる階段があることを指します。
今回はそれぞれのメリット・デメリットをご紹介しますので、ぜひご参考ください!
リビング階段
引用:リビング内階段間取り(プラン) イメージヒント集|セキスイハイム
メリット
- 家族とコミュニケーションをとる時間が増える
- リビングを広く取れる
- 階段下のスペースを活用できる
リビングに階段を設置すると、外出時や帰宅時は必ずリビングを通ることに。そのため家族と顔を合わせる機会が増え、必然的にコミュニケーションが活発になります。
思春期のお子さんがいる家庭では「なかなか親と顔を合わせてくれない……」と悩まれることも。そのため、いつまでも「仲睦まじい家族でいたい」という想いからリビング階段を選ばれる方が近年増えているようです。
また、リビングを広く取れるメリットもあります。リビングに階段を設置することで、廊下スペースの大幅削減につながり、そのぶんリビングを広く使えるのです。さらに、階段をベンチ代わりに腰かけて家族と会話するといった楽しい使い方もすることができますね。
階段下のスペースを活用できる点もうれしいところです。 子供の遊び場や、ちょっとした書斎にするといったアイデアも実現できるため、ワクワクドキドキが広がる空間となります。
引用:子供との会話が増える!リビング階段のある住まいを成功させる秘訣|株式会社ジェイホーム
デメリット- 光熱費が余計にかかる
- 音とにおいが気になる
- プライバシーの確保が難しい
それでは、デメリットを解説していきましょう。 リビング階段において、1番の問題となるのが「熱効率の悪さ」です。
リビング階段の場合温かい空気が2階に逃げて、寒い空気が1階に降りてくるため、冬場はリビングが寒くなってしまう事態に。空間が広いのでエアコンの効率が悪くなり、電気代にも影響してきます。そのため、冬場だけ1階と2階の境目に仕切り扉やロールスクリーンを設置する家庭も多くいらっしゃいます。
引用:リビング階段につっぱりロールスクリーン【冷暖房効率UP!】お客様アイディア特集|びっくりカーペット
2つ目のデメリットは、「音とにおいが気になってしまう」点ですね。リビングと2階が一体の空間となっていますので、テレビの音やキッチンのにおいがダイレクトに2階へ上がることに。そのため、受験などを控えているお子さんが「集中できない」と感じてしまう環境になる可能性が考えられます。
また、リビング階段はお子さんが友達を連れてきたとき、必ずリビングを通って2階の子供部屋に行くという経路に。部屋が散らかっていた場合「〇〇君の家、汚かった〜」と思われてしまうデメリットも考えられます。
いつもキレイにしていれば問題はないのですが、タイミングが悪くあまり見られたくないものを見られてしまうケースも。
「家ではリラックスした格好をしていたいのに、子どもが友達を連れてきているから落ち着かない……」とストレスを感じる方もいらっしゃるようです。
玄関近くの階段
それでは玄関近くに階段があるメリット・デメリットを見てみましょう。 基本的に、リビング階段で説明したメリット・デメリットが反転する形となっています。
メリット
- 子どもが友達を呼んでも気にならない
- 冬場もリビングが暖かい
- プライバシーを重視できる
- 音や匂いが2階に直接来ない
- 家族のコミュニケーションが減る可能性がある
- 玄関の廊下にスペースを取る必要がある
結論
階段の位置選びには、ご自身や家族が「どういう生活を家族と過ごしたいか」という考えが非常に大切になります。「おしゃれだから」「みんなが選んでいるから」ではなく、リビング階段・玄関近くの階段のメリット・デメリットをそれぞれ把握した上で、自分たちにとってベストな階段の位置を決定しましょう。
3.階段の形
階段の形は、それぞれ昇り降りのしやすさや安全性に大きな影響がありますが、基本的に間取りに応じて決まることが多いです。ここでは、どのような階段の形があるのかをご紹介します。
直階段
1階から2階までを直線で結ぶ、文字通りまっすぐの階段です。占有するスペースが少なくてすむのが特徴となります。直階段の場合、踊り場を作らないケースがほとんど。そのため、足を踏み外してしまった際に受けるダメージが大きくなる危険性があります。
お年寄りや小さなお子さんがいる家庭では、「手すりを設置」「踏み面を大きくする」などの対策をしっかり取ることが大切です。
かね折れ階段
建物の隅に設置するときに、よく設置されるのがかね折れ階段です。間取り図で説明すると「Lの字」に見えるのが特徴。階段の途中に踊り場、もしくは斜め角度の階段が生じます。メリットは、足を踏み外したときの落下距離が短くなること。家の形状に沿わせたかね折れ階段は、間取りを階段に合わせる必要がないため、多くの住宅に採用されています。
折り返し階段
スペースが限られている住宅では、折り返し階段がよく選ばれています。しかし、折り返し階段は中心部の踏面が小さくなることから落下の危険性が高くなるデメリットも。そのため縦型手すりの設置などが必要となります。
らせん階段
階段の中で、一番コンパクトに設置できるのがらせん階段です。しかし、踏み面がすべて三角形に近い形状になるため、他の階段に比べて注意深く昇り降りする必要があります。またらせん階段の中心部は、落下した場合垂直に落ちてしまうためかなり危険。必ず手すりを掴みながら行動する必要があります。
4.ステップ
注文住宅はどのようなデザインの階段にもできるのが大きなポイント。 ステップの種類を学び、理想の階段づくりに役立てましょう。
箱型階段
段板と段板の間に蹴込みがあるデザインです。多くの方が思い浮かべる「普通の階段」がこのタイプでしょう。
箱型階段の場合、階段下のスペースを活用できるため、コンパクトな住宅の強い味方になってくれます。 また、他のデザインと比べてリーズナブルに作れる点も魅力的です。
オープン(ストリップ・シースルー)階段
階段の蹴込み板が抜けているデザインです。光を多く取り入れることができるため開放感を出す効果があります。広い空間の印象を与えられるので、「広々とした感じの家にしたい」という方におすすめです。
5.階段の素材
階段の素材もまた印象を大きく左右させるポイントです。ここでは、そんな階段の素材についてご紹介します。
木の階段
引用:銘木無垢階段(シースルー階段)|朝日ウッドテック株式会社
日本の住宅で木の階段が占める割合は約95%というデータがあるように、多くの方にとっていちばん馴染みのあるのが木の階段なのではないでしょうか?
木の階段は落ち着いた印象を与える効果のほかに、他の素材と比べてリーズナブルなのが特徴に挙げられます。
スチール階段
スチール階段の特徴は、他の材料に比べて格段に強度があるため、「線の細いデザイン」が実現できること。しかし値段が木の4〜5倍かかるのが難点。「他の家の階段と同じ印象を与えたくない」「アーティスティックな階段にしたい」とお考えの方におすすめの素材です。
アルミ製の階段
錆びにくく軽いため、屋外に設置される階段によく使われているのがアルミ製の階段です。ただし、スチールと比べると強度が低く、同じ強度を実現しようとすると3倍程度の厚みが必要となります。
6.手すりのタイプ
階段の手すりには、「安全に移動するための補助」という面のほかに、「階段のデザインを引き立てる機能」があります。建築基準法上、階段には必ず手すりをつけなければなりません。「安全性を高める手すり」「外観を映えさせる手すり」など、いろいろな種類の手すりを知って、理想の家づくりに役立てていきましょう。
壁つけタイプ
周りが壁で囲まれた階段は壁つけタイプの手すりとなります。手すりの形は、握りやすいラウンドタイプやしっかり掴めるスクエアタイプなどさまざま。色や素材がたくさんあるのが特徴となります。
デザインばかりにこだわるのではなく、階段での転倒防止のために「掴みやすさ」もしっかりチェックしておきたいところです。
引用:手すり|ナカ工業株式会社
オープン用手すり
空気や光が差し込むため、視線が抜けて空間を広く感じさせるのがオープン用手すりの特徴です。吹き抜け階段やリビング階段に取り入れると、実用性とインテリア性を同時に得ることが可能。シンプルなものからモダンなものまで、種類がたくさんあるため、「階段の見せ方にこだわりたい」という方に多く選ばれているタイプです。
7.階段の安全性を高めるワンポイント
住宅内における突発的な事故は、階段でよく起きるといわれています。特に65歳以上の高齢者は注意したいところ。「両親と同居する」「老後が心配」という方は、今後のことを考えた階段にしたいものです。
ここでは、そんな階段の安全性を高めるアイテムをご紹介します。
すべり止め
引用:階段滑り止め(ノンスリップ)|DIYショップ-RESTA
より安全に階段を昇り降りするためのアイテムです。滑り止めは後からでも取り付けが可能ですが、あらかじめ設置しておくと余計な手間が省けます。
足元の照明
引用:夜の歩行を、ほのかな灯りがやさしくサポート|株式会社LIXIL
夜中にトイレに行きたくなったり、飲み物を取りに行きたくなったりしたときに設置しておくと便利なアイテムです。足元のみを照らしてくれるのでまぶしい思いをすることなく、安全に階段を昇り降りできます。また「常時点灯していると電気代がムダになる」とお考えの方には、人感センサーで点灯するものもあるため、そちらがおすすめです。
新築の階段についてのまとめ
本記事では、「階段選びで知っておきたい大切なポイント」をご紹介しました。 「『階段』と一口にいっても考えるポイントがたくさんあるんだな」と感じたのではないでしょうか?
一戸建て住宅は一生の宝物。家族にとってベストな階段を見つける参考にしていただけるとうれしいです。
また、本サイト『コノイエ』では、新築住宅を建てる上で役立つヒントをたくさん掲載しています。