アパートやマンションで猫と暮らしていると、猫の鳴き声や足音、壁や床の傷に気を配らなければならなかったり、飼育頭数に制限があったり、そもそも猫と暮らせる物件自体少なかったりと、暮らしにくさを痛感することがありますよね。
そこで「愛猫が自由に走り回れるような、猫ファーストの新築を建てたい!」と思い至った方もいらっしゃるのではないでしょうか?
この記事では、猫ちゃんと飼い主さんが幸せに暮らせるお家を建てるためのポイントや注意点について解説しています。また後半では、猫との共生住宅を得意とするハウスメーカーや建築家もご紹介していますので、ぜひ今後の家づくりの参考にしていただけると嬉しいです。
猫が幸せに暮らせる新築住宅をつくるポイント
まずは、猫が幸せに暮らせる住宅をつくるためのポイントや、あったら嬉しい設備について解説していきます。 設備の中には新築時でないと導入が難しいものもありますから、あなたのお家の猫ちゃんの性格や特性に合わせ、何を取り入れるか決めてくださいね。
居心地のいい窓際スペースにしよう
猫は窓際でひなたぼっこするのが大好きです。窓から差し込む光の中でお昼寝する猫の姿は、これまでもよく目にされてきたと思います。
また猫は、窓から外を眺めることも大好きですよね。これは、お外の風景に興味を惹かれているほか、自分の縄張りを守るためのパトロールをしているとも考えられています。
そのため新居では、お昼寝もお外のパトロールもしやすい、居心地のいい窓際スペースを設けてあげましょう。
例えば「出窓」にしてあげると、猫ちゃんは出窓カウンターで日光浴をしたり、お外を眺めたりできますよ。
引用:イエタテ
出窓にするのが難しい場合は、窓の「台座」の部分を広くしてみましょう。猫が十分くつろげるスペースがあれば、猫ちゃんも大満足でしょう。
なお、時間帯や季節によって光が差す場所は移り変わりますから、ご自宅の中に何箇所かひなたぼっこやお外の観察ができそうな場所を用意できるといいですね。
キャットステップで運動不足を解消できるようにしよう
猫の放し飼いは、交通事故に遭ったり感染症に罹ったりする危険と隣り合わせです。そのため最近では、猫を室内だけで飼う方も増えてきました。
しかし室内飼いの猫は運動不足による肥満になりやすく、肥満が原因で糖尿病などの病気を発症してしまうこともあります。
そこで、室内でも猫が十分に運動できるよう、新居にはキャットステップを取り入れてあげましょう。
猫の運動不足を解消するには、広い空間を走り回ってもらうよりも、キャットステップを登り降りする上下運動をしてもらうほうが効果的なのです。
またキャットステップは、猫の2階への動線にもなるほか、途中でキャットウォークとつなげることで回遊性が高くなるため、猫が退屈しにくい空間も作り出してくれます。
- 材質は滑りにくい「木材」にする 下から肉球が眺められるアクリル板やガラスのキャットウォークが人気ですが、猫が滑りやすいというデメリットがあります。落下すると怪我をしてしまう危険がありますので、滑りにくい木材のものを選んであげましょう。
- 強度の高いキャットウォークにする 揺れてバランスの取りにくいキャットウォークは、猫が不安になり使わなくなってしまいます。猫が何匹乗ってもグラつかないよう、デザイン以上に強度を重視しましょう。
- 部屋を一周できるように設置する 部屋を見渡すことができると、猫は安心感を覚えます。ただし、猫が火を使う場所などに落下してしまうと危ないので、キッチンなど危険な場所の周りに設置するのは避けましょう。
- 猫同士がすれ違える幅にする キャットウォークの幅が狭いと、猫同士がバッティングしたときに落下してしまう恐れがあります。そのため、特に多頭飼いをしている方は、キャットウォークの幅は広めに取りましょう。
- キャットウォークの先に小窓をつけよう せっかく高い場所に登っても、刺激がなければ猫は退屈してしまいます。そこで猫ちゃんの大好きなお外の観察ができるよう、キャットウォークの先に小窓を取り付けてあげましょう。
- 登り降りできる場所を2箇所設けよう 多頭飼いの場合、キャットステップから降りられるステップが1箇所しかないと、猫同士で喧嘩になることもあります。そのため、登り降りできる場所は2箇所以上設けるようにしましょう。
引用:クマにゃん日記
家を自由に行き来できるペットドアを設置しよう
新居では、家の中を猫ちゃんが自由に移動できるように、猫用のペットドアも取り入れてあげましょう。
引用:大建工業
ペットドアは、猫が「出ることも入ることもできる状態」のほか、「ロック」「出るだけ」「入るだけ」のように、フレキシブルに開閉状態を調整できます。 そのため、例えば家族が自宅にいる間は自由に出入りできる状態にして、お留守番中は危険な場所に行ってしまわないようロックする、といった使い方もできますよ。 またペットドアは、上の画像のように最初からドアに取り付けられているタイプのほか、壁内を通り抜けられるものもあります。
引用:大建工業
なお、壁へのペットドアの取り付けは本格的な施工が必要となるため、新築時やリフォーム時でないと導入は難しくなります。
そのため、間取りを決める段階で「この部屋は猫が遊びにきても大丈夫」「ここは危ないから猫が入れないようにしたい」といったビジョンを明確にした上で、ペットドアを取り付ける場所を決めましょう。
いざというときの隠れ場所を用意してあげよう
猫は警戒心が強い動物です。あなたのご自宅の猫ちゃんも、急な来客があったり掃除機をかけたりしたときに、びっくりして物陰に隠れてしまった経験があるのではないでしょうか?
そんな猫ちゃんのために、新居では「いざというときのための隠れ場所」を用意してあげるといいでしょう。
例えば、こういった階段下の空きスペースは猫の避難場所にぴったりです。
引用:フェリシモ猫部
また、せまい場所が大好きな猫のために、専用のプライベートスペースをつくってあげてもいいですね。
引用:エキサイトニュース
こちらの猫ちゃんがいるのは、階段下を活用してつくられた専用スペースです。緊急時の隠れ家になるほか、猫が一人になりたいときにもぴったりです。
床材はクッションフロアにしよう
住宅で使われることの多いフローリングは、掃除が簡単である一方、硬いため猫の関節を痛めてしまう危険があります。また、猫が滑って転びやすい・冬は冷えやすいというデメリットもあります。
反対に、カーペットを敷くと転倒の心配がなく暖かいですが、猫が吐いたり粗相をしたりした場合の掃除が大変です。
そこで、猫ファーストの床材を探している方にオススメしたいのが「クッションフロア」です。
クッションフロアとはビニール素材で作られた床材のことで、通常は洗面台やキッチンといった水回りに使用されることが多いです。フローリングのような木目調のほか、タイル柄、大理石調のものまで、カラーや柄のバリエーションが豊富にあります。
そんなクッションフロアのメリットとデメリットを見ていきましょう。
- 滑りにくくクッション性があるため、猫の足腰にやさしい
- 水濡れに強いため、猫が吐いたり粗相をしたりしても掃除しやすい
- 消臭効果のあるクッションフロアもある
- 重いものを乗せたままにすると跡がつきやすい
- ビニール素材のため、見た目が安っぽく感じる人もいる
クッションフロアの見た目が気になる方は、猫専用スペースやトイレを設置する場所だけでもクッションフロアにすると、猫ちゃんにとっても飼い主さんにとっても過ごしやすくなるでしょう。
猫と幸せに暮らすための注意点
次に、猫ちゃんと飼い主さんが幸せに暮らせる家をつくるための注意点について解説していきます。 ぜひ、猫ちゃんが危険な目に遭ったりストレスを溜めたりしないような家づくりをしていきましょう。
脱走対策をしよう
猫と暮らす上で気を付けたいのが、脱走です。猫は、玄関を開けた瞬間や、洗濯物を干すためにベランダに出た瞬間に脱走してしまう場合が多いです。もし愛猫が脱走してしまって、交通事故に遭ったり、悪意のある人に虐待されたりでもしたらと考えるだけで恐ろしいですよね。
そこで、新居では猫の脱走対策にも力を入れましょう。ここでは、特に脱走現場となりやすい「玄関」と「ベランダ」の脱走対策をご紹介します。
玄関の脱走対策
玄関の脱走対策では、猫がそもそも玄関ホールに入ってこられないよう、脱走防止ドアを取り付けるのがオススメです。
賢い猫ちゃんの中には引き戸を自分で開けてしまう子もいますから、自動ロック機能がついたドアにすると安心です。
引用:猫ねこ部
ベランダの脱走対策
1階のベランダには、脱走防止の柵を取り付けるのがオススメです。これなら猫が外の空気を吸いにベランダに出てきてしまっても、安心して洗濯物が干せますね。
引用:猫ねこ部
また、2階のバルコニーにはネットを張るといいでしょう。脱走防止になるだけでなく、猫が2階から落下してしまうような不慮の事故も防げます。
引用:猫ねこ部
さらに、猫が自力で網戸を開けてしまわないようロックできるようにしたり、網戸に爪を引っかけても破れにくい強化網戸を取り入れたりするのもオススメです。
引用:猫ねこ部
爪研ぎ対策をしよう
爪研ぎは猫の習性ですから、無理に止めさせることは猫ちゃんにとって大きなストレスになります。しかし、せっかくの新築の壁が、爪研ぎでボロボロになっては悲しいですよね。
そこで、猫の爪研ぎ対策としてオススメしたいのが腰壁です。 腰壁とは人の腰くらいの高さ、つまりちょうど猫が爪研ぎをするくらいの高さで、上下に壁紙が切り替わっている壁のことです。
引用:フェリシモ猫部
腰壁には「パイン材」や「樹脂製のパネル」といった、表面が滑らかで爪が引っかからない素材や、爪が引っかかっても傷がつかない硬い素材を選ぶと、猫が壁で爪研ぎしても傷がつきにくくなります。 また、もし壁を張り替えることになっても、下半分だけで済むためコストも抑えられます。
参考 腰壁を設置するリフォーム費用は?猫の爪とぎ対策をしましょう!ハピすむキッチンには入れないようにしよう
キッチンは、誤食や火傷の危険が高いため、できるだけ猫ちゃんが入ってこられないようにしましょう。
引用:猫ねこ部
例えばこちらのお家のように、リビングとキッチンを完全に分けると、猫がキッチンに入ってしまう危険はぐっと少なくなります。リビングとの仕切りがガラス戸になっているため、料理をしながらリビング全体を見渡せるのも嬉しいポイントですね。
トイレの場所にも気を配ろう
猫ちゃんが落ち着いて排泄できるよう、トイレは静かな場所に設置してあげましょう。また、臭いがこもらないよう風通しのいい場所に設置することも重要です。
例えばこちらは、人のトイレの一角に猫用トイレを設置できるようにしています。
引用:フェリシモ猫部
ドアが閉まっていても猫用の通用口から出入りできるようになっているほか、床下に猫砂を収納できるようになっているため掃除もしやすいです。他には、リビングや洗面所の一角にトイレスペースを設けるのもオススメです。
引用:猫ねこ部
その場合は、トイレの臭いがこもらないよう、内部に換気扇を取り付けると安心です。 なお、洗面所にトイレを設置する場合は、猫ちゃんが洗濯機の音にびっくりしてしまわないよう、洗濯機からは少し離してあげてくださいね。
猫との共生住宅を手掛けるハウスメーカーや建築家
最後に、猫と一緒に暮らせる住宅づくりを得意とするハウスメーカーや建築家をご紹介します。 猫ちゃんとの共生住宅を手掛けてきた経験豊富なハウスメーカーや、猫ちゃんとの暮らしを熟知している建築家なら、きっとあなたの思ってもみなかった提案をしてくれるはずです。
ハウスメーカー
猫の習性に配慮し、猫ちゃんが快適に暮らせる住まいを提案しています。これまでこの記事でご紹介してきた設備以外にも、猫を洗える「マルチシンク」や、猫が自由に移動できる「猫通路」、猫専用の「水飲み場」等、さまざまな設備を取り扱っています。
ハシゴのようなキャットウォークやふわふわしたキャットステップを導入したりと、猫ちゃんがアスレチックのように楽しめる家づくりをされています。また、リビング中央にある柱で爪研ぎできるようにするなど、猫がのびのび暮らすための工夫もしてくれます。
JAHA(公益社団法人日本動物病院協会)の協力を得て、猫ちゃんが過ごしやすい間取りや空間を提案してくれます。また家づくりだけでなく、ペット相談窓口や、会員同士がペットの写真を投稿してコミュニケーションを取れるツールを利用できるサービスもありますよ。
建築家
新築で猫を飼う時のポイントについてのまとめ
この記事では、猫ちゃんと飼い主さんが幸せに暮らせる新築住宅をつくるポイントや注意点、そして猫との共生住宅を手掛けているハウスメーカーや建築家についてご紹介してきました。
しかし、ひとまとめに猫と言っても、性格も好きなものも嫌いなものも「猫それぞれ」です。飼い主さんと一緒にいるのが好きな子、ひとりでいるのが好きな子、怖がりな子、やんちゃな子、運動が苦手な子など、さまざまな猫がいます。
ですから家を建てる際は、「自分の猫ちゃんならどんな設備があったら嬉しいかな?」ということを一番に考え、あなたの猫ちゃんが幸せに暮らせるお家にしてあげてくださいね。
もし、ハウスメーカーの提案する画一的な住宅ではすべての要望をカバーできないと感じたら、ぜひ、ゼロから住宅を設計できる建築家に相談してみてください。きっと猫ちゃんが喜んでくれる、世界でひとつの住宅を提案してくれるでしょう。