屋根裏部屋は「新築のお家のスペースを最大限に利用したい」と考えたときにとても便利な空間です。
本来デッドスペースとなってしまう天井と屋根との隙間部分を収納のために利用することができますし、使い方次第では、趣味や生活のための静かで落ち着いた空間を演出することもできます。
行き来の大変さや温度の変化などの癖もある場所ですが、きちんと目的を持って設計の中に取り入れれば、きっと快適なマイホーム生活の一助となるでしょう。
当記事では、そんな屋根裏部屋の有効な使い道や、新築住宅で屋根裏部屋をつくる際に注意すべきポイント等をご紹介します。
屋根裏部屋ってそもそも何なんだろう?
屋根裏部屋とは、お家の天井の上から屋根の下(屋根裏)にかけての余剰空間につくられた“小屋裏物置”のことを指します。
小屋裏物置に関する国土交通省の通達や地域の条例を守っていれば、部屋や階として扱われません。
そのため、小屋裏物置は延床面積等としてカウントされず、固定資産税や不動産取得税の対象外となります。
屋根裏部屋の定義
国土交通省によって定められている“小屋裏物置”の定義のうち、新築を建てる際に建主側が気をつけたいポイントは以下のとおりです。
- 床から天井までの高さが1.4m以下
- 床面積は屋根裏部屋がある階の床面積の1/2以下
- 換気窓の面積は屋根裏床面積の1/20以下
- 階段やはしごを固定してはいけない(収納式はしごを用いる)
またこの他にも、地域によっては以下のようなさまざまな条例が存在します。
- 電話やLANケーブルのジャックを置いてはいけない
- エアコンを置いてはいけない
- コンセントはひとつまで
まずは設計の段階で相談してみよう
こう聞くとややこしいように思えるかもしれませんが、お家づくりでパートナーとなるメーカーさんや施工会社さん等は建築基準や条例にも精通しています。「こんな使い道を考えているので屋根裏部屋をつくりたい」という旨を伝えれば、その地域やその人に合った屋根裏部屋を提案していただけます。
また居住空間としても利用したい場合は、制約にとらわれた小屋裏物置をつくるのではなく、三階のお部屋として割り切って広々とした空間をつくり上げるのもひとつの手です。
「屋根裏部屋をつくりたい!」と思い至るタイミングとして多いのが“工事がはじまって家が出来上がってきた時”。 実際に天井や屋根が組まれるのを見て「このくらいのスペースがあるならなんとなく有効活用したいなぁ……」と感じる方が多いんだそう。
しかし、その段階で屋根裏部屋を希望しても、そのお家は本来屋根裏部屋をつくることを想定していないものです。急な要望に対応していただける業者さんは多く存在しますが、具体的な使い道を考えず付け焼き刃で設計を行ったため、ちぐはぐで結局使わない屋根裏に……なんてことも。
前もってお家の間取りやお部屋の使い方、そのお家での暮らし方について設計士さんたちとしっかり相談しておくと、よいお家が出来上がります。
屋根裏部屋の使い道
それでは、屋根裏部屋には具体的にどのような使い道があるのでしょうか?こちらでは代表的なものをご紹介します。
収納部屋
屋根裏部屋の使い道として最もポピュラーなのが収納としての機能。
- 冬場不要になる扇風機や夏場不要になるこたつやクリスマスツリー等、大型の季節もの
- シーズン外の洋服やとっておきたい古着
- 捨てられない思い出のアルバムや趣味のおもちゃ
- 保証など万一の場合に必要になる家電類の外箱
上記のように、長期間保管しておきたいようなものが屋根裏部屋に収納するものとして適しています。
収納棚やチェスト等で余裕を持てるように整理整頓しておけば、残りの空間にソファーやクッション等を置いて休憩に利用できるのも長所です。
書斎やシアタールーム
静かで密閉率も高く、人の出入りも少ないため落ち着いた空間をつくりやすい屋根裏部屋。1人で読書やデスクワークを行うのにはうってつけの空間といえます。
また、窓の存在感が薄いという密閉感を利用してモニターを設置し、映画等を鑑賞するミニシアタールームを用意するのも良いでしょう。
寝室や休憩室
静かで落ち着ける空間の使い道といえば、寝室等もそのひとつです。
ただし、かなり長時間滞在することになるため、温度や湿度の管理が少々ネックとなります。
子供部屋
“屋根裏”と聞いて、昔ながらの秘密基地的なイメージを思い浮かべる方もいるのではないでしょうか?
屋根裏部屋は大人が伸び伸びと過ごすのには難しい高さですが、小学校低学年までのお子さんが過ごすには適したスペースとなっています。お子さんのおもちゃ置き場兼遊び場として利用できるのも魅力のひとつですね。
その他にも
2つ目のリビングやダイニング、展望室等、屋根裏ならではの雰囲気を生かした様々なお部屋をつくることができます。
ただし、スペース確保の都合上、小屋裏物置ではなく三階のお部屋にすることが確実となります。
また、他の部屋と明確に区切れることを活かし、近くの部屋から雰囲気を変えたバスルームや離れ、和室としてつくることもあるようです。
さて、屋根裏部屋をつくる上で最も重要なのは『その屋根裏部屋を何に使うのか?』『なぜ屋根裏部屋がいいのか?』という2点をあらかじめきっちり決めておくことです。
押入れや床下収納や階段下収納等、収納ひとつとっても屋根裏部屋以外の選択肢は複数存在しています。
屋根裏に限った話ではありませんが、折角デッドスペースを活用するためにつくったのに、誰も使わないまま結局腐らせてしまったのではもったいないですからね。
逆算するかたちになりますが、他の部屋の用途を前もってしっかりと決めておけば、おのずと屋根裏部屋の必要性や使い道も見出せるはずです。
屋根裏部屋をつくる際に気をつけておきたいポイント
いろいろな用法が考えられる屋根裏部屋ですが、先述のスペースの制限以外にも利用する上で注意しなければいけないデメリットが存在します。それらへの対策も併せてご覧ください。
昇降の必要がある
屋根裏部屋は、当然ながらはしごや階段を昇降して行き来する空間です。そのため、収納として利用する場合大きな荷物や持ちづらい荷物を抱えたまま昇降する労力が必要となります。
今ははしごや階段を昇降するのが苦でなくとも、お家というのは人生をかけて長く付き合っていくもの。将来的には使いづらくなってしまう……というおそれもあります。
屋根裏部屋の設計を決める際は、老後のご自身のことも考慮した上で設計士さんたちと相談しましょう。
小屋裏物置には階段を設置することができず、基本的に可動式のはしごを使わなければいけません。
階段や固定はしごを使いたい場合、物置ではなくお部屋として扱う必要があります。また、階段を設置した際は屋根裏部屋だけでなく階段も延床面積に含まれるため、屋根裏部屋にかかる費用が増加する傾向にあります。
夏に蒸し暑い
天井の裏と屋根の間に位置する屋根裏は、屋根に断熱材を入れなければ外気の影響を強く受けてしまう空間です。何も対策をしていない天井断熱のつくりの場合、夏は温度が60~70度まで上がるうえに湿度も高いサウナ状態となってしまいます。
そのように温度や湿度の変化が激しい場合、生活空間としてはもちろんのこと収納スペースとしても利便性は著しく低下します。
屋根断熱でお家をつくり、エアコン等の空調を取り入れ、きっちりと気温の管理ができるような屋根裏部屋を設計してもらいましょう。
窓がとれず、採光や換気がしづらい
屋根裏では“換気窓の面積は屋根裏床面積の1/20以下”と定められています。そのため、どうしても窓を大きくとることができず、窓を開くことによる換気があまり望めません。
それにより空気がこもるため温度や湿度の変化にも大きく影響を及ぼしますし、冬にはこもった屋根裏の温度と外気の温度差で結露が起き木材を腐食する、ということも考えられます。
また、窓が小さいということは陽射しが入りづらくなり、生活空間として利用する際の過ごしやすさにも関わってきます。
電灯の置き場所への工夫や換気扇やエアコンの設置により、どんな季節でも快適な空気を保っておきたいですね。
新築の屋根裏の活用についてのまとめ
新築で屋根裏部屋をつくる際のポイントや屋根裏部屋の活用方法を説明させていただきました。 屋根裏部屋は工夫次第で様々な使い方ができる便利なお部屋ですが、建てる上での取り決めが多く、また使う上で注意すべきポイントも少々存在します。
そのため、「屋根裏部屋をなんのためにつくりたいのか?」という目的をあらかじめ決めておくことが、よい屋根裏部屋づくりの第一歩となります。
自分がお家でどんな暮らしをしたいのか、その暮らしにはどんなお部屋が必要なのか、なぜ屋根裏部屋がほしいのか……。屋根裏部屋だけでなく、お家全体の使い方や自分のライフスタイルといった未来に思いを馳せ、新築づくりの発想を膨らませてみてください。