「自分のお家の床の色」と聞いて、まず思い浮かぶ色はなんでしょうか?
温かみのある木のブラウン、落ち着くダークブラウン、眩しいホワイトカラー……。さまざまな色が想起されるかと思います。
ですが、「職場や友人のお家の床の色」と聞かれた場合は?
絶対に視界に入っているはずなのに思い出しづらい……。と、なってしまう方も少なくないのではないでしょうか?
そんな普段意識することが少ない床の色ですが、実はお部屋の雰囲気や住み心地に大きく影響を与えているのです。 また、床の色は壁や天井、ドアやソファーなどの建具や家具の色選びなど、内装のデザインそのものを左右するのです。
今回は、新築住宅を建てる際の床の色の選び方と、それに合わせた内装のデザインのポイントをご紹介します。 現在新築を建てようと考えている方や、その中でも床、内装のデザインに悩んでいる方は是非参考にしてください。
床の色がお部屋の印象を大きく左右する
さて、先の話を踏まえ「普段覚えてないような床の色なら何色を選んでも同じじゃないの?」とお考えの方もいらっしゃるかと思います。そこで、まずはこちらの画像をご覧ください。
どちらのお部屋の方が広く見えるでしょうか?
おそらく、多くの方は“床が白い下のお部屋の方が広く明るく見え、黒い上のお部屋は狭く落ち着いて見える”と認識するはずです。
これは、白くて淡い色を床に使ったお部屋の方が広く見える、という色の性質を利用したものです。
床の色は私たちの視界内のかなりの範囲を占めていることや、私たちは無意識のうちに床を見てお部屋の雰囲気を判断していることがわかります。
フローリングにはどんな色があるの?
現在、一般住宅の床板は木質系の材料を加工した“フローリング”が主流となっています。 フローリングには製造会社によってさまざまなカラー名がつけられていますが、それらは大別すると実はホワイト、ナチュラル、ダークの3系統に分けることができます。
では、それらにはどのようなメリットやデメリットを持ち、部屋にどのような印象を与えるのでしょうか? ひとつずつ確認していきましょう。
ホワイト(白)
オフホワイトにライトベージュ、グレージュやアイボリー等、薄めの白っぽいカラーがホワイトの系統です。材質としてはホワイトオーク材やホワイトウォルナット材等が該当します。
メリット
- 彩度の低い膨張色なので床が広く見える
- 部屋が明るく、清潔感があるように見える
- 濃い色の家具も淡い色の家具も合わせやすい
- 白いホコリが目立たない
- 明るいため落ち着いた雰囲気がつくりにくい
- 黒い毛や汚れ、傷が目立ちやすい
- 経年変化による色褪せや黄ばみに弱い
- 壁や天井の色の選択肢が減る(合わせる難易度が高くなる)
一般に、内装は床→壁→天井の順でだんだん色が薄くなっていくように配色すると開放感が生まれ、広く見えて良いとされています。
ですが、床をホワイト系にした場合では床の時点で薄い色になっているため、壁や天井の色の選択肢が狭まりやすいです。
暖色を選んだ場合落ち着かず、寒色を選んだ場合狭く見える、ということも考えられます。 部屋を広く見せるためにホワイト系を選択したのに壁を濃い寒色にしたのでかえって閉塞感が生まれてしまった、ということが起きないよう、ホワイト系の床に合わせる壁の色は注意しましょう。
ダーク(黒)
ダークブラウンや焦げ茶から果ては真っ黒な色まで、重厚感のある濃いカラーがダーク系の特徴です。ウォルナット材やブラック(ビター)ウォルナット材等がこの区分です。
メリット
- シックで高級感のある部屋に仕上がる
- 落ち着いた雰囲気になる
- 黒い毛や汚れ、浅い傷が目立たずキレイに見えやすい
- 退色しづらいため経年変化に強い
- 暗いため光の入りづらいつくりでは暗い印象になりやすい
- ホコリや塗装が剥げる程の深い傷が目立つ
- 色の主張が強いため合わせられるインテリアの色が限られる
ナチュラル(中間色)
おそらく「フローリング」と聞いて多くの方が真っ先にイメージするものがこの系統なのではないでしょうか。
メープル材やアッシュ(タモ)材、チェリー材等が多く用いられます。 カラーとしての範囲が幅広いため、中間色の中でもベージュ等のホワイト寄りとライトブラウン等のダーク寄りとで印象が二分されます。
他のふたつに比べあまり目立たないぶん「とにかく色選びで失敗したくない!」と考える人に適していると言えるでしょう。
メリット
- 自然な木の色に近く、柔らかい雰囲気が出る
- 目立たないため色選びで失敗せず、インテリアも自由に選べる
- 色次第でホワイト側やダーク側に雰囲気を寄せることができる
- 毛やホコリが目立たない
- 素材の品質がダイレクトに現れるため、安価なものがそのまま安っぽく見えやすい
- ホワイト側やダーク側に寄せるとそちらのデメリットも出やすい
以上がお家の床を選ぶ際に覚えておくと便利な三区分です。
色選びのポイント
それぞれの色の特色を把握したところで、次は床の色を考える際に重要となるポイントを確認してみましょう。
事前に合わせる壁や家具などの色を考えておく
床と同様に、家具やドア等の建具、壁等の色は空間をつくるために非常に重要な存在です。
そのため、自分が選択した床の色に合わせて家具の色を決めることで部屋そのもののトータルコーディネートが行いやすくなります。
あるいは、逆に自分好みの家具の色に合わせて床の色を決めるということも考えられるでしょう。
例えば、
- オフホワイトの床に同じホワイトの壁を合わせたリビングなのでナチュラルブラウンのドアやテーブル、チェアで統一し木のぬくもりを感じる雰囲気を強調。大きな観葉植物のグリーンを差し色にしてバランスを整える
- ダークブラウンの床にホワイトの壁を合わせたダイニングなので黒のダイニングテーブルを配置、チェアを壁に合わせたホワイトにしてモダンな雰囲気に。ダークな床にホワイトの壁で高く広々とした印象にも貢献
といったレベルまで将来的な部屋の完成形を見据えておくと、床の色選びもスムーズに運びやすいです。
カラーコーディネートの黄金比は70:25:5!
内装デザインに限らずデザイン全般に通用する法則として、「ベースカラー…70%:サブカラー…25%:アクセントカラー…5%」の比率に近くなるよう調整することで、バランスの取れたキレイな配色になるとされています。
バランスの大半を占め第一印象となるベースカラー、ベースカラーを補うサブカラー、デザインを引き締めるためのアクセントカラー、という内訳です。
内装デザインの際は、床をはじめとして壁やドアに加えテーブル等の大きな家具がメインカラー、その他の家具がサブカラー、小物やいくつかの家具がアクセントカラー、というふうに振り分けることもできます。
「使いたい!」と感じた色やその補色(反対色)、または類似色をこの黄金比に組み合わせていくことが、結果的に床のカラーを決めるための近道となるのです。
色が与える効果から決める
ホワイト、ナチュラル、ダークのカラーには、先にも触れたようにそれぞれ気持ちに大きく作用する効果があります。
それを利用して、リビングやダイニング、子供部屋や寝室など、さまざまな部屋の用途に合わせた床の配色をすることで、その部屋での住み心地がより良くなります。
- 落ち着いた空間であることが求められる寝室では、床をリラックス効果のあるダーク系に
- 遊び盛りの幼少期のお子さんが利用する子供部屋では、元気で感受性豊かに育ってもらうためにホワイト系に
- 成長期のお子さんが利用する子供部屋では、家の中でも自然を感じて過ごしてもらうためにナチュラル系の無垢材を
のように、そのお部屋に求められている役割や、使う人の気持ちを重視することが大切になります。
お家をより良く魅せるためには統一感が必要なのでは、と考えた時に浮かび上がるのが「同じお家なのに床の色がそれぞれ違っていてもいいのだろうか?」という疑問。
しかし、必ずしもすべてのお部屋の床の色を統一する必要はありません。 寝室と書斎とダイニングといった、離れて別れている部屋の床の色の違いを明確に意識することは普段ありませんし、各部屋がそれぞれ持つイメージに最適な色を選択するメリットは非常に大きいです。
また二階建ての場合では、一階と二階で床の色を変えることでメリハリのきいた雰囲気のお家をつくることもできます。 ただし、リビングとダイニングに廊下のような、ドアを挟まず直接繋がっている場所の色が違っていると違和感が出てしまうことが多いです。また、全ての部屋の床の色を別々にしてしまうと流石にちぐはぐな印象を与えてしまうため、変化のつけすぎには注意しましょう。
引用:カラーシミュレーション | アイカについて | アイカ工業
メンテナンス性から決める
お家を建てる時、「そのお家をきれいに、新築の状態と変わらないように保つ」ためのメンテナンス性は誰もが気にする点でしょう。
汚れや傷への耐久、経年による変化等、メンテナンス性はそれぞれの色味や材質によって大きく異なってきます。
例えば、傷や毛が目立つホワイト系の床は犬や猫等のペットを飼う上では不向きですし、木が湿気により収縮する上に傷の手入れが必要な無垢のナチュラルフローリングは扱いが難しいです。
逆に床が汚れやすい子供部屋に導入すれば、汚れが目立ちやすいことも「掃除をするタイミングがわかりやすい」という利点と捉えることもできますし、こまめに手入れをするのが好きな方であればダーク系やホワイト系のお家で暮らすことがより楽しく感じられるでしょう。
それぞれの色が持つメンテナンス性やそこに住まう方の気質は、お家やその床と末永く付き合っていく上で重要となるポイントです。
床の色を体感してみよう
ここまでさまざまな色の利点や選び方を説明していきました。
ですが、頭の中で考えるだけではなかなか具体的なイメージが浮かばず、「この色にしよう!」と踏み切るのにはまだ足りない、という方も多いことかと思います。
そこでこちらの項では、お部屋に対するイメージを具体化し、床の色を決めていくための方法をいくつかご紹介いたします。
カタログを見よう ―おすすめ度/★☆☆
様々な色とりどりの床材が並ぶフローリングのカタログ。
写真であることや光源の関係で実際のものと色味が少し違っていることもありますが、多様なカラーリングや素材があることをじっくり確認できます。
フローリングのカタログ以外に、床の色のみならずお部屋全体のコーディネートを見ることができるハウスカタログも参考にしやすいでしょう。
引用:床材 | デジタルカタログ | サンゲツより、『Reforta vol.3』
サンプルを取り寄せよう ―おすすめ度/★★☆
床の種類を決める際に施工会社さんからいただいたり、各種フローリング専門店さんから取り寄せることのできるフローリングのカットサンプル。
数十センチの板一枚を手にとっただけでは「この板が床にぎっしりと敷き詰められている」という想像は働きづらいですが、写真と実際の商品との色味の違いや肌触りをお家でも確認できるのはメリットとなります。
以下は実際にカットサンプルを取り寄せられるサイトやメーカーのごく一例です。
30円~から送料無料で購入できる通販サイトやサンプル料無料で複数枚お届けしていただける木材メーカー、手触りの良い木材にこだわった専門店をピックアップしました。
楽天市場 |
無垢フローリングドットコム |
天然木材.com |
e-KENZAI |
ikuta |
アイオーシー |
キャスオンラインショップ |
木想商家 |
シーゲル |
専門家の意見を聞いてみよう ―おすすめ度/★★☆
内装デザインでは、建築家さんやインテリアコーディネーターさん等に自分の「こうしたい!」という意見を伝え、お部屋のトータルバランスを考えた提案をいただくことで、バランスの取れたコーディネートが実現しやすいです。
今までお家づくりに携わってきた方であれば、現在の床の色や材質の流行に加え、なぜそれが流行しているのか?という専門的な知見にも長けています。 施工中にお話するコーディネーターさんのみならず、各種家具の専門店等で「この家具にはどんな床や壁が似合いますか?」といった質問をすることもひとつの手です。
モデルハウスやフローリングのショールームを見に行こう ―おすすめ度/★★★
モデルハウスやショールームでは、どのような部屋になっているのか?どんな材質の木が使われているのか?ということを実際に体験できます。
靴を脱いで、フローリングに足を踏み入れ、肌触りや温度感を体感して……。ということができるのはモデルハウスやショールームならではの経験です。
具体的なイメージを膨らませるためにはもっとも王道で、かつ効果的といえるでしょう。
シミュレータを使ってみよう ―おすすめ度/★★★
現在では、建材屋さんや家具屋さんなどさまざまなサイトに内装デザインのシミュレータが用意されていることが多いです。 床のみならず壁や家具、ドア等の建具まで多種多様に色やモノを入れ替えることが可能であり、「この部分を変えたらどうなるかな?」ということが気軽に試せるのが大きな魅力と言えます。
こちらは当記事でも使わせていただいたサイトを含む内装デザインシミュレーションサイトの一例です。
おしゃれで実際に使われている商品がわかるプリセットを多数用意しており、そこから床の色のみならず家具の色なども手軽に変更できるウェブサイトを抜粋しました。
panasonic |
EIDAI |
DAIKEN |
AICA |
Amazonブログ dayone |
LIXIL |
WOODONE |
SINCOL |
新築の床の色の選び方についてのまとめ
ここまでさまざまな角度からの色の考え方や選び方を紹介させていただきましたが、「自分のお家がどんな床でどんな雰囲気になるか?」ということを最後に決めるのは、住まう方たちご自身のセンスと内装へのイメージに委ねられます。
床選びから内装のイメージを膨らませていくことは、即ち“理想的な内装のイメージ”を固めることでそれに最適な床を選べるということに繋がるのです。
紹介させていただいた選び方や手法をご参考に、お部屋の使い方や好きな雰囲気に合わせた床の色を選び、その色に合わせた家具や建具を選んで素敵なお家を建ててくださいね。