バリアフリー住宅に建て替え!注意点やおすすめのメーカーについて

近頃、将来を見据えてバリアフリー住宅への建て替えを検討する方が増えています。

家族の誰かがいつ、身体の自由が効かなくなっても、バリアフリーな家であればすぐに対応でき、安心ですね。

この記事では、バリアフリー住宅に建て替える際に注意すべきポイントや、バリアフリー住宅を手掛ける住宅会社についてご紹介します。

バリアフリー住宅の設計について

バリアフリー住宅は、リフォームより新築で設計される方が費用を低く抑えられる場合がほとんどです。

例えば、廊下の幅や浴室、間取りのスペースなどは、後から変えようとすると大掛かりな工事が必要になります。

新築なら最初からバリアフリーを設計に組み込めるため、無理のない導入が可能です。

ここでは、主なバリアフリー住宅の設計をいくつか紹介します。

浴室やトイレのスペースを広めに確保

高齢や障害で、車いす生活や歩行が困難になった場合、入浴とトイレが自分で出来なくなるという問題が起こります。

そのため、新築の間取りを考えるにあたり、あらかじめ浴室とトイレのスペースを広めに確保しておく方法があります。

介助者が一緒に入って介助がしやすくなるからです。

新築でバリアフリーを考えるなら、まずは浴室やトイレのスペースを広めに確保しましょう。

廊下や階段などの転倒防止策

高齢になって足が上がらなくなると、ちょっとした段差でも転倒してしまう危険があります。

実は、自宅内で転倒、転落事故で亡くなられた方はとても多いのです。

以下は、厚生労働省の人口動態統計をまとめた表となります。

家庭内における主な不慮の事故の種類別にみた年齢別死亡数(平成18年)

死因 総数 45~64才 65~79才 80才~
スリップ,つまづき及びよろめきによる
同一平面上での転倒
1,036人 118人 350人 540人
階段及びステップからの転落及び
その上での転倒
435人 101人 189人 132人

参考: 家庭内における主な不慮の事故の種類別にみた年齢別死亡数・構成割合 |厚生労働省

65才以上では、1年間で1,000人を超える方がご自宅での転倒や転落により亡くなられています。

そのため、転倒や転落の防止策として滑りにくい床を導入する方法がおすすめです。

段差については、すり足でもつまづかないようにしておく必要があります。

廊下や階段には幅を持たせ、手すりを設置できるようにしましょう。

段差の解消や廊下の幅確保については、車いすを利用するようになった場合でも役立ちます。

エレベーターの設置

バリアフリーを意識して新築する場合、平屋建てと2階建てとでは大きな違いがあります。

平屋建ては、土地の広さによってはきゅう屈な間取りになる可能性がありますが、コストを安く抑えられます。

2階建ては、スペースに余裕を持たせることができる一方で、バリアフリーにはあまり向きません。

なぜなら、1階と2階との間を往復する負担が大きいため、将来2階がムダなスペースになる場合があるからです。

そこで、家の中にエレベーターを設置する方法をおすすめします。

エレベーターを導入する場合、目安として以下の費用がかかります。

エレベーター設置コスト(新築の場合)

費用の種類 かかる金額
本体価格+設置工事費 約270万円~600万円
申請費用 約10万円~15万円
法定点検費用 年間約5万円~7万円
固定資産税 年間約2万円~3万円程度
電気代(1日平均20回程度利用) 年間約6,000円~12,000円

単純計算をすると、導入費用が約270万円~600万円、ランニングコストが年間約5万~7万円程度と、決して金額が低いとはいえません。

それでも、エレベーターを設置し、2階を寝室として利用すべき理由があります。

2階は人の出入りが少なく、声や足音が響きにくいため、寝室に向いているからです。

長く暮らし続けるなら、なるべくストレスを少なくしたいものです。

費用はかかりますが、エレベーターがあると、将来きっと役立つでしょう。

ヒートショック対策の導入

バリアになるのは、物理的な段差やスペースだけではありません。

室温にも気を配る必要があります。

高齢者にとって、部屋ごとの気温差は大変な脅威です。

急に暖かい部屋から寒い浴室やトイレに行くと、ヒートショックを起こす危険があります。

ヒートショック

寒暖差の大きい場所に移動したり、寒い冬に熱い風呂に入ったりした際、血圧の大きな変動により心臓に負担がかかって失神や心筋梗塞など症状を引き起こす現象のこと。

以下は、厚生労働省の人口動態統計をまとめた表です。

家庭内における主な不慮の事故の種類別にみた年齢別死亡数(平成18年)

死因 総数 45~64才 65~79才 80才~
浴槽内での溺死及び溺水 3,316人 270人 1,473人 1,465人
浴槽への転落による溺死及び溺水 54人 5人 24人 20人

参考: 家庭内における主な不慮の事故の種類別にみた年齢別死亡数・構成割合|厚生労働省

浴室は自宅内で一番寒暖差が激しいので、ヒートショックを引き起こしやすい場所です。

ですから、浴槽内での溺死が多いのは、ヒートショックによる失神が原因ともいわれています。

そこで、ヒートショック対策を導入することをおすすめします。

具体的には、以下のような対策があります。

ヒートショック対策
  • 浴室を高断熱、高気密にして床暖房を付ける
  • 脱衣室に暖房機を付ける
  • トイレに室内暖房を付ける
  • トイレと寝室を近づける

脱衣所に暖房機を設置するには電気配線が必要です。

新築時点で暖房機を導入しない場合でも、電気配線さえ整えておけば、後から簡単に設置できます。

また、トイレを寝室に近づけて寒暖差を軽減するのも、有効なヒートショック対策です。

新築の設計をする際にはご検討ください。

バリアフリー住宅へ建て替えるときに注意すべきポイント

何も知らないところからバリアフリー住宅への建て替えを検討すると、実は思ってもみないところが落とし穴に繋がる場合があります。

以下でバリアフリー住宅を建てるときに気にしておくべきポイントを確認しましょう。

前の家と同じような部屋数・間取りにするのは難しい?

もし、車椅子での生活も想定してバリアフリーな家を建てるなら、あらゆる箇所をゆとりあるサイズでつくっておく必要があります。

例えば、カーポートは車を停めた状態で、横に車椅子を置き、移乗するためのスペースが必要です。

また、雨の日対策で屋根も設置したいですね。

もし、1階部分をカーポートに割くなら思ったよりも面積が必要です。

さらに、車椅子はUターンするのに直径1.4m以上のスペースが必要です。

玄関やリビング、廊下、水まわりなどは不自由なく使えるよう、特に広くとっておきたいですね。

そのため、以前の家と同じサイズの家を想定していると、各部屋が狭くなってしまいます

以上をふまえて、建て替え時には以下のような工夫をするとよいでしょう。

建て替え時に床面積を広くとる

もし、敷地内に庭や使っていない物置などがあるなら、建て替え前よりも建物の面積を広くとるとよいでしょう。

ただし土地は、面積に対してどの程度の広さの建物なら建ててもよいか、建ぺい率容積率で規制されているので、確認が必要です。

建ぺい率・容積率とは

建ぺい率は、敷地面積の何%までなら建築面積にとってよいかを表したものです。

なお、建築面積は建物を真上から見たときの面積です。

例えば、敷地面積が100㎡で建ぺい率が50%の場合、50㎡までは建築面積として使えます。

容積率は、敷地面積に対して何%まで延べ床面積にとってよいかを表しています。

容積率で、各階の部屋の広さと、何階までなら建てられるかがわかります。

例えば、敷地面積が100㎡で容積率が200%の場合、最大で延べ床面積200㎡(60.5坪)の建物が建てられます。

なお、建ぺい率と容積率は、市区町村役場の担当窓口(都市計画課など)に住所を伝えれば教えてもらえます。

市区町村によってはインターネットでも調べられる場合もあります。

一部の設備は下地作りに留めておく

使用開始時に調整が必要なバリアフリーは、リフォームするとお金がかかる下地部分だけ作っておくと良いでしょう。

手すりの設置は、代表的なバリアフリーの一つです。

しかし、高さや太さ、右手用と左手用のどちらが必要になるかなど、実際に使用するタイミングになるまで、どういった手すりが必要になるかはわかりません

まったく役に立たなかった場合、手すりをいったん取り外して再設置するというムダな工事が発生してしまいます。

そのため、新築時に設置するのは、あまりおすすめできません。

ただし、廊下の幅はリフォームで変えるのが難しいので、新築時に確保しておきましょう。

廊下の幅だけ広げておき、必要になった時点で手すりを設置すればムダな工事を回避できます。

もし車いす生活になった場合でも、工事せずに済みます。

このように、一部のバリアフリーは新築時に下地だけ作っておいて、将来必要になってから設置するようにしましょう。

水まわりを一つにする

トイレ・洗面所・浴室などの水まわりは、車椅子で利用する場合や、介助者がついて利用する場合でも、ゆとりある広さを確保する必要があります。

以下の写真のように、水まわりをまとめてしまえば、トイレを使用する際に洗面所のスペースを利用するなど、スペースを有効に使えます。

また、洗面所とトイレを一つにしてしまう例もあります。

スペースを有効に使えますし、壁がなくスッキリとしたデザインになりますね。

寝室とトイレは近くに

高齢の家族に対応できる住宅を建てる場合、トイレは夜間にも利用しやすいよう、寝室近くに設置しましょう。

寝たきりの家族を介護する場合でも、寝室とトイレが近いと介助者の負担も少なく済みます。

バリアフリーにする箇所で特に注意すべきポイント

車椅子での生活も想定してバリアフリー住宅を建てるなら、車椅子でも通れるように最低限必要な幅や長さを知っておく必要があります。

以下で、車椅子での暮らしを想定した場合に、注意すべきポイントを確認してみましょう。

スロープは車椅子を漕いで登れるものにするかどうか

玄関外にスロープを設置するなら、スロープの勾配(こうばい)に注意しましょう。

手動の車椅子を漕いでスロープを登るには1/12勾配以下でないと厳しく、1/8勾配になると介助者がついていてもバックでないと下れません

1/12勾配とは

1/12勾配とは、上の図にもあるように、登りたい高さ(垂直面)が1mの場合、スロープの長さ(水平面)が12m必要な勾配です。

なお、1/8勾配となると自走ではとても登りきれません。

もし、車椅子でも登れるスロープを設置したい場合は、玄関だけでなく、お庭側を車椅子の上り口に選ぶ手もあります

さらに、どうしてもスペースがない場合は以下のような「段差解消機」を設置する手もあります。

段差解消機の価格
段差の高さ 価格
40cm以内 50万円~150万円
60cm以内 80万円~200万円
80cm以内 120万円~300万円

トイレ・浴室の介助スペースを確保する

トイレやお風呂は特に介助が必要になる場所です。

どれくらいのスペースがあれば介助できるのか知っておきましょう。

トイレ

トイレの個室は、一般住宅によくあるサイズ(0.5坪)のものでも、便器の前方から壁までに85cmほどのスペースが空いていれば、車椅子を使用している方の介助が可能です。

また、引き戸を個室の横側に設置すれば身体の回転が少なく済み、さらにドアの開口幅を85cm以上あるものにすれば、トイレ外のスペースを利用することで車椅子での利用も可能です。

MEMO

トイレの介助スペース:便器前方に85cm以上

ドア開口幅:介助する場合75cm以上(できれば80cm以上)、車椅子で利用する場合85cm以上

トイレサイズ:0.5坪

浴室

浴室内は、洗い場の幅(浴槽まで)が80cm以上あれば、水まわり用車椅子が使えます。

また、奥行きが1.6m以上あれば、後ろからの介助が可能です。

浴室は1坪サイズ(1616など)よりも、できれば1.25坪サイズ(1620)を選ぶほうが、介助がしやすいでしょう。

MEMO

浴室の介助スペース:洗い場の幅80cm以上、奥行き1.6m以上

浴槽のまたぎ高さ:40~45cm

浴室サイズ:1.25坪(1620)~

ドア・廊下などは幅に注意

車椅子の幅はJIS規格により、手動車椅子は63cm以内、電動車椅子は70cm以内と定められていますが、手動車椅子で移動するには腕の幅を含めてサイズを考えなければなりません。

余裕をもって生活するには、ドア幅は85~90cm以上、廊下幅は85cm以上が必要です。

あらゆるシーンを想定しよう

廊下で車椅子が横向きの人とすれ違うには、幅が120cmほど必要です。

また、廊下の角を曲がるには、幅が90cm以上必要です。

あらゆるシーンを想定して、廊下はゆとりあるサイズで設ける、もしくはなるべくなくしておくなど、よく検討しましょう。

バリアフリー住宅なら工務店や設計事務所も検討する

バリアフリー住宅を建てようと考えたとき、「まずはどこに相談したらよいのだろう?」「バリアフリーに特化した会社はないのか?」と思いますよね。

その時、ハウスメーカーだけではなく工務店や設計事務所も合わせて検討しましょう。理由は、ハウスメーカーよりも設計の自由度が高い会社があるからです。

また、インターネットでバリアフリー住宅のメーカーや設備について調べるなら、検索ワードは「バリアフリー」よりも「ユニバーサルデザイン」で調べましょう。

ユニバーサルデザインとは

ユニバーサルデザインとは、「どんな人でも使いやすいデザイン」を意味していて、大人や子供、また、文化や言語、性別の違い、能力、障害の有無などに関わらず利用しやすいデザインを指しています。

ユニバーサルデザインを得意とする工務店・設計事務所

株式会社クリエすずき建設

住宅事例

手掛けられた物件『車イスの僕と妻が楽しいガレージハウス』

いざ、生活しずらい状況になってみないと『ご家族になにかあったとき』や『高齢になったとき』のことを予測しながら、家を建てる人は少ない中、株式会社クリエすずき建設は、家を建てる人の人生を見据え、どんな状況でも”その人らしさ”を尊重してくれる建設会社です。

「車椅子になっても建て替えが必要になる提案はしたくない」という強い想いのもと、ハンディキャップのある生活になっても過ごしやすい居住環境を提供できるよう、バリアフリー・ユニバーサルデザインに注力しています。楽しくいられる環境をつくることができれば、年齢や障害に悩むことも無くなり、自分らしくいられることができる、という信念を大切にしています。

株式会社ゆま空間設計

パソコンに向かう加瀬澤様

千葉県千葉市の株式会社ゆま空間設計は、バリアフリーの設計を得意とする設計事務所です。代表の加瀬澤様は長年この分野に携わり、車いすでの生活、老後の生活などを快適に送れるお家をつくってきました。

車いすに乗ると、高い位置にある照明スイッチや、段差と傾斜、地面から伝わる振動の大きさに苦労させられます。バリアフリー設計の経験が少ない建設事務所では、バリアフリーを必要とする方の感覚を理解して家をつくるのは困難です。

社長の加瀬澤さんは、養護学校の設計経験からバリアフリーの奥深さに触れ、これを生涯の仕事と決意しました。お客様の想いを形に変える設計にやりがいを見出しており、バリアフリーで安心して暮らせるお家を建てたい方におすすめです。

彩工舎

野田 道隆代表

彩工舎は、「性能」「デザイン」「コスト」の3つをバランスよく取り入れ、居心地の良さを考えたリフォームやリノベーションを手掛けています。

リノベーションか新築かで悩む方にも「住まいの土台」から選択肢を提示し、妥協のない住まいづくりを実現。性能面では、バリアフリーや耐震性能はもちろん、給排水や電気設備などの「生活を支える基盤」を特に注視します。

代表の野田さんは、デイサービス事業でヒートショックによるご不幸を何度もみてきた経験から、快適な室内の温度差をつくらないことの重要性を身を持って感じています。自分が身近でその重要性を感じているからこそ、熱意ある提案ができます。

バリアフリー住宅への建て替えについてのまとめ

バリアフリーデザイン・ユニバーサルデザインには、これからもさらに革新的なアイデアが生まれてくるでしょう。多くのハウスメーカーや工務店、住宅設備メーカーを吟味し、納得の家づくりをしてください。

コノイエでは、バリアフリー・ユニバーサルデザインに対応できる工務店や設計事務所のご紹介をしています。

快適な暮らしを実現するためにユニバーサルデザインが不可欠とお考えの方は、気軽にお問い合わせください。

著者情報

コノイエ編集部

コノイエは、東京都港区に本社を置く株式会社アールアンドエーブレインズが運営するオウンドメディアです。累計80,000人以上が利用する「解体無料見積ガイド」の姉妹サイトとして、住宅関連コンテンツを発信しています。人が生活する基本となる「衣・食・住」の中でも、コノイエでは「住」にフォーカスして独自の情報をお届けします。

監修

中野達也

一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事
解体工事施工技士 登録番号:23130106
石綿作業主任者 修了証番号:13820
解体工事業登録技術管理者
公益社団法人 日本建築家協会(JIA)研究会員
一般社団法人東京都建築士事務所協会 世田谷支部会員

静岡県出身。日本全国の業者1,000社超と提携し、約10年間で数多くの現場に関与。自身でも解体工事業登録技術管理者としての8年間の実務経歴を持つ。専門家として、テレビ番組をはじめとする多数メディアに出演。これまでに一般家屋はもちろん、マンション、ビルなど様々な建物の取り壊しに従事し、工事を行いたい施主、工事を行う業者の双方に精通している。

出演メディア
めざまし8(フジテレビ系列)、ひるおび!(TBS系列)、情報ライブ ミヤネ屋(日本テレビ系列)、バイキングmore(フジテレビ系列)、CBCニュース(CBCテレビ系列)他多数

当協会の運営サイト「コノイエ」は、工務店・ハウスビルダー・建築家・建築設計事務所等の500以上のインタビュー記事を掲載。また、新築・建て替えを検討中のユーザーにとって有益となる情報を発信しています。
当協会は、建て替えに伴うお住まいの取り壊しのご相談を年間で2,500件ほど承っており、各地域の住宅関連会社の情報が集まります。今後も「コノイエ」では、新築ユーザー様の発注先や評価、住宅関連会社様への独自インタビューといった当協会ならではの独自のリアルな情報をお届けします。

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