日本の住宅における「断熱性能」と「断熱構造」の基礎知識

住宅建築における「断熱」の方法は、家づくりをする地域や業者によって異なります。 例えば、ヒートアイランド現象の影響を受けやすい関東と、寒冷で湿気の少ない東北とでは異なる工法が用いらるケースがあるわけです。

また、作り手によって断熱に対する考え方は様々なので「どの断熱材を何処に入れるか」といった具体的な施工にも違いが見られます。 そこで、この記事では住宅における基本的な断熱の考え方について簡単に解説していきたいと思います。

断熱性能の基準

住宅の断熱性において、国は省エネ基準をもとに「UA値(外皮平均熱貫流率)」を指標とした断熱基準を地域ごとに定めています。 なお、UA値とは室内の温度がどれだけ外に流れ出るかを計算したもので、値が小さいほど熱の移動が少なく、断熱性が高いと判断することができます。

UA値の地域区分

引用:住宅の省エネルギー基準|建築環境・省エネルギー機構

地域区分 1地域 2地域 3地域 4地域 5地域 6地域 7地域 8地域
UA値 0.46 0.46 0.56 0.75 0.87 0.87 0.87 -

「HEAT20」が定める次世代の断熱基準

一方、次世代の省エネ基準として注目されている「HEAT20」が定める断熱性能はさらに高い水準です。

HEAT20の断熱基準

「HEAT20」が定める水準にはG1からG3のグレードがあり、北欧に比べて比較的温かい日本では、一般的にG2の水準を満たせば優れた断熱性が担保できていると言われています。

地域区分 1地域 2地域 3地域 4地域 5地域 6地域 7地域 8地域
G1 0.34 0.34 0.38 0.46 0.48 0.56 0.56 -
G2 0.28 0.28 0.28 0.34 0.34 0.46 0.46 -
G3 0.2 0.2 0.2 0.23 0.34 0.26 0.26 -

断熱は湿気との戦い

しかし、日本のような高温多湿の地域で断熱性の高い家を建てると、建物の劣化を早めてしまう恐れがあります。

特に、木造住宅が主流の日本では、湿気が原因で起こる壁内の「結露」によって木材が腐り、カビや白アリアといった害虫を発生させてしまう危険があります。そのため、日本の家づくりでは湿気対策が欠かせません。

なお、古くから健在しているお寺や神社などの木造建築から分かるように、木材にほどよく空気を触れさせ、乾燥した状態を保つことは「建物の寿命をのばす」と言われています。

神社の写真

日本の伝統的な建築物の中には何百年も前から建てられているものがあります。

断熱の欠損が結露に繋がる

建物の壁内で結露が生じてしまう原因のひとつは「断熱欠損」です。

そもそも、結露は温度差が大きいところに発生しやすいのが特徴です。そのため、断熱材の間に隙間が空いて、断熱性能が欠損している部分は特に結露を起こしやすくなります。 そこで重要なのが「気密」の取り方です。

どの断熱材を使うにしても、断熱欠損をしないためには断熱材でしっかりと気密を取る必要があります。 ところが、壁内の断熱材が十分に充填されていないまま、ビニールシートなどで機密を取ろうとすると断熱材の欠損部分ができてしまい、結露を起こしやすくなるわけです。

断熱材の間にできた隙間

引用:断熱材に隙間ができています|ホームインスペクション名古屋

工法による断熱構造の違い

断熱の工法には大きく「充填断熱」と「外張り断熱」の2つの方法があります。なお、通気性を重視したカビにくい家にするのであれば「充填断熱」、なるべく省エネルギーで温度管理ができる家にするのであれば「外張り断熱」が効果的、というのが一般的な考え方です。

「充填断熱」の特徴

充填断熱」は、グラスウールやセルロースファイバーなど固形の断熱材を壁内に埋め込む断熱方法で、断熱の加工ラインが家の内側にくるため「内張り断熱」とも呼ばれます。 また、屋根裏と床下に換気口をつけることで通気性があがり、適度な乾燥状態を保っているのが特徴です。ただし、換気口から入ってくる外気の影響で空調設備の負担が大きくなる心配があります。

充填断熱のイメージ図

「外張り断熱」の特徴

外張り断熱」は、家全体をすっぽりと覆うような形で断熱をする方法で、パネル状の物や壁の内側に吹き付けるタイプの断熱材が多く使われます。保温性が高く外気の影響を受けにくいのが特徴で、室内に多くの空気を留めておくことができます。ただし、充填断熱に比べると湿気がこもりやすいのが弱点です。

外張り断熱のイメージ図

関東では充填断熱が主流

特にコンクリートジャングルと呼ばれる関東地域では、「ヒートアイランド現象」により、夏場は夜になってもなかなか気温が下がりません。そのため、壁内で「熱だまり」を起こしやすく、建物に掛かる負荷が大きくなります。 また、「高気密」「高断熱」の家は、断熱材を通過して入ってきた熱が逃げにくいので、エアコンなど空調設備の負担が大きくなってしまうのも問題です。

断熱材を貫通する熱

さらに、冬型の結露の影響で壁内に湿気が残っていると「熱だまり」が湿気の温度をあげるので、壁内でカビやダニが発生しやすい環境が整ってしまいます。 このことから、関東地域では通気性を重視するため、屋根裏や床下に空気が通りやすい「充填断熱」が好まれる傾向にあります。

断熱材より外側は「家の外」

しかし、関東でも冬には気温が0度を下回るような寒い日が続くこともあり、床下に冷たい空気が通ると室内の温度は下がってしまいます。そのため、どうしても暖房器具の負担は大きくなりがちです。

また、充填断熱の家で用いられる基礎パッキンの間からは、様々な害虫が侵入してくるリスクがあるので、防蟻処理などの対策をしっかりと行っておく必要があることも忘れてはいけません。

一方、寒冷地域は湿気が少なく乾燥しやすい傾向にあるので、関東に比べると壁内で結露を起こすリスクは低いといえます。また、寒さが厳しい冬でも、なるべく暖房器具の負担が小さくなるように、床下からの地熱を利用した「外張り断熱」が用いられるケースが多いようです。

関東で「快適で長持ちする家」を建てるには

一年を通して気温の変化が大きい関東では、外気との温度変化の影響を受けにくい「外張り断熱」を主体としつつ、「充填断熱」に見られる通気性を補う形で家づくりをしているところが見られます。

例えば、外壁よりも外側に断熱の加工をした場合、冬場に壁内に侵入してくる冷気は、すでに断熱材を通っているので比較的あたたかいです。そのため、充填断熱と比べると壁内で結露しにくい空気だということが分かります。

外張り断熱の壁内の断面図

また、夏はヒートアイランド現象の影響で熱がこもりやすくなるため、空調設備を使って床下や屋根裏の換気を補う方法も効果的です。

まとめ

住宅づくりにおける断熱の工法や違い、それぞれの特徴がお分かりいただけたと思います。 住宅選びをする際は、表面的な数値に惑わされるのではなく、この記事で紹介した内容を踏まえて環境や地域の特性に合った家づくりをしている会社に依頼してほしいです。

また、次世代の家づくりとして環境にも配慮した断熱方法を取り入れると、より充実した家づくりができるのではないでしょうか。

「脱炭素化社会」を見据えた家づくり

しかしながら、「電気設備に頼った断熱方法は、環境性能という点からみるとまだまだ改善の余地がある」、と語るのはHEAT20で会員を務めている関東地域で唯一の工務店「三陽工務店」の荻沼代表。

三陽工務店 荻沼代表

従来の家づくりの方法では、国が掲げている「2050年までにCO2の排出をゼロにする」というカーボンニュートラルの目標には及びません。 今後はもっと「地熱」や「風力」などの自然エネルギーを活かした次世代の家づくりが不可欠だといえます。

三陽工務店さんでは独自のエアサイクル工法を使った「壁体内通気工法」で、電気設備に頼らず快適で長持ちする家づくりに取り組んでいます。

当協会の運営サイト「コノイエ」は、工務店・ハウスビルダー・建築家・建築設計事務所等の500以上のインタビュー記事を掲載。また、新築・建て替えを検討中のユーザーにとって有益となる情報を発信しています。
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