「新築を建てたい!」と思い立った時、依頼先として真っ先に頭に浮かぶのが「ハウスメーカー」。
目を引く広告やきらびやかなモデルルームなどの影響もあり、多くの方は大手のブランドに安心感を覚えて依頼されています。
しかし、一方では「ハウスメーカーはおすすめできない」「〇〇ってメーカーは評判悪いよ」なんて噂を聞くことも。
結論を言うと、どちらの話も簡単に鵜呑みにしてはいけません。
大切なのは、「ハウスメーカーが良くないと言われる理由」を理解し、一つひとつの会社を精査することです。
本記事では建築のプロの目線から、ハウスメーカーの特徴を解説していきます。家づくりを前にどの会社へ依頼するか悩まれている方は、ぜひ参考になさってください。
もくじ
【重要】「この会社が良くない」という風評被害には流されない
インターネット上でハウスメーカーの評判を調べると、特定のハウスメーカーの悪い口コミを紹介しているサイトも存在しますが、その情報だけを鵜呑みにしてはいけません。
大手であればあるほど年間の施工棟数も多いため、家づくりに満足いかなかった人が多くなるのも当然なのです。
「悪い口コミがある=悪い会社」ではないことはご承知おきください。
今回は、ハウスメーカーでの家づくりが良くないと言われる本質を解説していきますので、それを踏まえて信頼できる会社かどうかを判断していきましょう。
建築のプロが語る、ハウスメーカーをおすすめしない理由
まず、新築を建てる上で、ハウスメーカーがあまり良くないと言われてしまう理由を見ていきましょう。
建築家や設計士の方、工務店や建設会社で働く方など、プロフェッショナルの見地も交えて解説致します。
基本的にゼロからの家づくりができない
ハウスメーカーを勧めない理由として最も多いのは「ゼロからの家づくりができないこと」です。
ハウスメーカーでの家づくりは、基本的に既存のプランの中から選ぶ形になります。
素材や部屋数、カラーなどを選ぶことはできますが、基本的には既存のモノから間取りを決めていきます。
そのため、造り手の方の多くは「家は人に合わせて建てるべきであって、人が家に合わせるべきではない」と感じられているそうです。
建築家Nさん
建築家Mさん
建築家Nさん
建設会社A
しかし、多くのハウスメーカーや工務店のように、コスト削減で量産された住宅では、限られたアイテムやプラン集から選択して竣工完成させるしかありません。
建築家Sさん
建築家Sさん
設計士Mさん
ハウスメーカーは要望だけ聞いて終わりな会社も多いんです。プロならプラスアルファでどこまで理想に近づけるかが大切ですね。
家づくりに関する制約が多い
基本的にプランから間取りや設備を選ぶ形なので「家づくりに関する制約が多い」「融通が効きにくい」といったデメリットも挙げられます。
施主側に細かい注文があったとしても、すんなりと叶えるのは難しいと言えます。
また、規格化された住宅の場合、狭小地(狭い土地)で家を建てるのも難しいです。
特に東京の住宅街では狭小地に家を建てるケースも多いため、依頼を受け入れてもらえない場合もあります。
建築家Tさん
建設会社O
たとえば、住宅展示場などを見ていて「キッチンを10cm横に動かしたい」といった、ちょっとしたこだわりが生まれるのは珍しくないですよね?しかしマニュアル通りだと、そんなちょっとした変更ができないんですよ。
設計士Nさん
分業制になっているため、一貫して同じ人が携われない
ハウスメーカーで家を建てる場合、各工程ごとにいる担当とお話をすることになります。契約段階では営業、設計では設計担当、施工では現場監督と、様々な方が代わりばんこに対応されるのです。
これにより「戻りが発生しやすい」「要望が上手く伝わらない」「造り手の顔や実態が見えにくい」といったデメリットが生まれます。
多くの造り手の方は「相談から引き渡しまで、一貫してお客様に寄り添いたい」とお考えですので、ハウスメーカーの体制をマイナスポイントとして挙げられる方もいらっしゃいます。
建築家Tさん
ハウスメーカーにはまず営業さんがいて、次に工務の担当、設計の担当がいて、工事中はインテリアコーディネーターさんがいてと、すべての仕事が分割されているんです。
私はハウスメーカーの現場で大工も監督も経験しましたが、上からは「お客様には余計なことを言うんじゃない」と言われていたので、お客様とは仲良くなれないような雰囲気の中で仕事をしていました。
建築家Kさん
その家づくりに最初から最後まで携わってくれる人は、住宅メーカーにはいません。私に相談へ来る人も、色々な住宅メーカーを廻って「話を聞いてくれなかった」と仰る方がとても多いです。
建築家Aさん
でも設計事務所では、お客さんと何回も打ち合わせをするので、完成する頃にはお互いがとても親密になれます。
大工職人Kさん
設計士Mさん
どうしても利益率が優先される
ハウスメーカーに限らず、会社の規模が大きくなるほど利益率を求めざるを得ません。
会社の規模が大きくなると、従業員の給料はもちろんのこと、営業費や広告費、モデルルームの維持費用など、様々なコストが掛かるためです。
そうして高い利益率を求めると、住宅に掛けられる原価は必然的に下がります。

同じ3000万円の家でも、利益率によって住宅の原価に差が生まれます。
つまり、利益率が高いほど家の質は下がってしまうのです。
また、会社として利益を優先するあまり、しつこい営業を掛けられるケースも少なくありません。
一度展示会や新築の相談に行くと、その場で契約を迫られたり、その後しつこく連絡が来ることもあります。
設計士Tさん
しかし設計士に依頼をすれば、80%くらいの原価率は出せます。これは結構大きな差だと思いますよ。多くの方は、50円のものを100円で買ってるわけですから。実は損な買い物をしてしまっているんです。
建築家Yさん
利益最優先の概念がつきまとうからです。
ハウスメーカーを否定するわけではありませんが、お客様のためを想うよりも利益を優先したり、会社や営業マンの都合で売るような傾向がありましたね。
建築家Kさん
建築家Iさん
これは、大企業が人件費や広告費、展示場の設営費など、経費に莫大なコストを掛けているからです。
建築家Wさん
住宅の質がイマイチ
これは原価の話にも通じますが、「住宅の質が不十分」という声も良く聞かれます。
たとえば「自然素材を使った健康住宅」という商品でも、化学物質の入った接着剤を使っていたり、無垢の木を活かしきれずに施工をしていたりすることがあります。
一見良さそうなキャッチコピーに対して、その実態が伴っていないという見方が多いようです。
建築家Mさん
一匹一匹の個性や家庭の環境などを踏まえた上で、臨機応変な対応や提案が必要なのです。
設計士Sさん
建設会社W
対応がずさんになるケースが多い
地元の工務店や設計事務所に比べると、トラブル等が起きた時の対応は遅くなってしまいます。
対応すべき棟数が多すぎるのと、担当の移り変わりが激しいためです。
ですが、工務店や建設会社の中には、事務所がある市区内でしか家を建てないというほど、お客様重視の会社も存在します。
建設会社O
工務店B
建築のプロが語る、ハウスメーカーをおすすめできる理由
当然ながら、ハウスメーカーに依頼をするメリットも多数存在します。
造り手の方の多くも、「比較検討した上で納得しているなら、ハウスメーカーもおすすめできる」と話されています。
家が建つまでの流れがスムーズ
まず挙げられるメリットは、「家が建てられるまでの流れがスムーズ」であること。
プランの中から家を決めていくため、間取りに悩む時間はかなり短縮できます。年間に100棟以上建てる会社だと、工期も短いため半年くらいで竣工させることが可能です。
それに対し設計事務所では、間取りを0から決めていくため、悩みに悩んで4,5年掛かってしまう方もいらっしゃいます。
建築家Sさん
工務店S
低予算で無難なデザインの家を建てられる
最近はローコスト住宅も台頭してきましたので、1,000万円以下で建てられる家も存在します。
それでいて無難なデザインと住みやすい造りになっていますので、価格帯を重視されるならハウスメーカーがオススメです。

建築家Mさん
ハウスメーカーはどんな方でも平均的に住みやすいお家を造っているので、それはそれで良いことだと思います。
建築家Tさん
建設会社E
人によって、ベストな選択が違うと思っています。
建築家Oさん
プランから決めるので選びやすい
初めての家づくりでは、完成形のイメージが湧きにくいものです。自分のこだわりや好みを明確にするのも難しいため、ハウスメーカーの規格化された住宅を好む方もいらっしゃいます。
プランの中から家を選ぶのは、人によってはメリットにもなり得るのです。だからこそ、殆どの方がハウスメーカーで家を建てているのだと思います。
建築家Wさん
ですから、お客様としてはすごくラクなんです。それに、図面で説明されても想像がつかない場合は実物を見てから買えたほうがいいこともありますよね。
建築家Oさん
「ここに住みたい」とはっきりといえるようなお住まいを見つけたのなら、ハウスメーカーさんを選ぶのも良いでしょう。
設計士Kさん
設計士Mさん
既存の図面や素材を使っている分、品質が保証されていますから、こちらを好むお客様もいらっしゃいます。
設計士Nさん
むしろ、明確に決まっているならハウスメーカーさんにお願いするのも良いと思います。
多くは展示場を用意している
設計事務所や工務店で展示場を用意している会社が少ないため、展示場を用意しているのは強みと言えます。
家の完成形を目の前で見て確かめることができるため、家づくりの具体的なイメージが湧きやすいのが魅力です。
建築家Iさん
全てのハウスメーカーをひとくくりにしてはいけない
ここまで、造り手の方々の見地を踏まえて、「ハウスメーカーはおすすめできない」と言われる理由について解説してきました。
しかし、全てのハウスメーカーをひとくくりにして考えてはいけません。
逆に言えば、これまで解説してきた要素を満たさないハウスメーカーであれば、安心して依頼ができるのです。
ここまでの情報を踏まえて、信頼できるハウスメーカーさんの一例をご紹介しますので、ぜひ参考になさってください。
※建設会社、ハウスビルダーを含みます
柔軟な対応や自由設計ができるハウスメーカー
「ハウスメーカーはプランから家を選ぶから、その人に合った住宅は造れない!」という意見がありましたが、全てのハウスメーカーに当てはまるわけではありません。
ゼロから自由設計ができたり、要望を柔軟に受け入れてくれるハウスメーカーをご紹介します。
Likes Home
八重樫様
住宅メーカーは、既存の住宅だけを売っていると思われがちですが、私たちは一棟一棟こだわりのある設計をしています。
また、「タイルを自分で貼りたいから、クロスの値段を引いてほしい」とか、「基礎屋さんの知り合いがいるから、基礎はそこに頼んで安くしたい」など、一般的には珍しいご要望にも、しっかり応えてきました。
なのでお客様には、遠慮せずに何でも相談して頂きたいと思います。

タカキホーム
飯田さん
というのも、「お客様の希望を取り入れよう」という方向で家づくりをしているので、一棟一棟全く違う家を建てているんです。
そのため、かなり細かく打ち合わせを重ねています。効率のことを考えると、メーカーのようにパターンをつくってお客様に選んで頂くほうが良いかもしれません。
件数が増えればそうせざるを得なくなるとも思いますが、今はお客様のために出来るだけ丁寧な対応をするようにしています。

株式会社Y・K・Tプロジェクト
高本様
一般的には、お金をかけられる方なら有名なハウスメーカーなどに依頼しますし、建物に対して特にこだわりがない方なら安い建売を買います。
でも「お金はかけたくない、だけど自分の希望を実現したい」という方は行き場がありません。ですから、弊社はそのようなお客様を積極的に手助けしたいと考えています。

天草ハウジング
藤川社長
とはいえ、お客さんがご希望ならデザイン面にもとことんこだわりますよ。
今度横浜で引き渡すお家は駆逐艦をモデルにしていて、外装も内装もかなりこだわりました。実際のパーツをご自身で買われるほど船が好きな方で、窓なんて20~30㎏もする丸窓を採用しました。

アフターサービスが充実しているハウスメーカー
「ハウスメーカーは後手後手の対応になりがち」という意見もありましたが、必ずしも機動力の悪い会社ばかりではありません。地元工務店の良さも兼ね備えるような会社を紹介致します。
株式会社One’sLifeHome
芹沢様
ちなみにアフターサービスについては、一般的な大手が別会社に委託するのに対して、弊社は自社の社員が担当しています。
また新築が終わったら、バトンタッチの挨拶として、営業担当とアフターサービス担当が一緒にお客様宅へ伺います。お客様に安心していただきたいですからね。

デザインハウス所沢埼玉(株式会社アイライフ)
中林さん
自分がお客様の立場だったら、新築もリフォームも不安感・不信感を少しでも抱くような会社には依頼したくないと思うので、しっかり丁寧な設計施工をするよう心掛けています。
またアフターサービスも迅速に対応していて、もしお客様から不具合の連絡を受けたら、必ず当日中に修理の手配をするようにしています。

株式会社アスティーク
原田様
普通、アフターサービスは何か問題が起きた時に、お客様がハウスメーカーなどに連絡しますよね?でも弊社では3~4ヶ月に1回、建て主さんのお宅へ専任スタッフが「何か困っていませんか?」とメンテナンスに伺います。小さいお悩みでも、そのまま放置するとモヤモヤや不安は溜まってしまいます。それは、ご家族の安心安全な暮らしには繋がりません。なので、どんなお困りごとでも私達から積極的に解決していきたいんです。

住宅の質が高いハウスメーカー
健康住宅ひとつ取っても、「本当の健康住宅」を手掛けるメーカーは少ないと言います。
しかし、中には素材や工法にこだわりぬいた、高品質住宅を造られている会社も存在するのです。
きりんホーム(株式会社樹林)
山根社長
天然素材は主に日本のお城などでよく使われている漆喰(しっくい)や無垢(むあか)などの木材です。
最近では、接着剤でつなぎ合わせた柱や集成材と呼ばれる人工的な建材が主流です。まるでプラモデルかのようにお家が作られています。
でもその結果、建材が発する成分が原因で体調が悪くなってしまう方がいるのも事実です。

株式会社創建
斎藤様
冬に暖かく夏に暑くない生活を送るために、気密性に優れた住宅を造っています。あまり知られていませんが、気密の性能は数値化されています。
通常の建売であれば、気密の数値は2が基準値ですが、創建では0.5に設定しています。この数値は低いほど断熱性と気密性に優れていて、数値は0.1ごとに存在します。
また、地震対策においても、最高基準である耐震等級3を採用するのは必須ですね。

マルニホーム
小田部正人さん
とえば「オーク」や「チーク」といった硬い素材は、頑丈で安心感があります。また「桐」や「檜」といった柔らかい素材は、温かみがあり素足で歩く場所には最適です。お客様の「こういう風に暮らしたい」というイメージに合わせてベストな素材を選び、ご提案するようにしています。

まとめ「良い造り手に巡り合うためには」
ハウスメーカーにはハウスメーカーの良さ、設計事務所には設計事務所の良さがあります。そのため、様々な会社を吟味して、自分たちのニーズに合った会社へ依頼をするのがベストなのです。
建築家Mさん
勧めないですね。
お客様は憧れの家を手に入れるために、いろんな条件を調べたうえで、自分たちに合う家を買うわけですから、建築家のほうがいいとは限りません。
設計士Oさん
ハウスメーカーでも設計事務所でも「自分と価値観が合う人」を探すことが大切だと思います。
「色々な会社から話を聞くなんて面倒」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、冷静に考えてみてください。
家は一度建てたら、20年30年、50年と住み続けるものです。そんな人生の重大な選択を、時間と労力を掛けずに簡単に決めてしまって良いのですか?
それは、今日道端で偶然すれ違った人にプロポーズをするようなものです。
人生に一度のビッグイベントは、慎重かつ冷静な判断の元で決定しましょう。
「家探しは人探し」。
この記事をお読みになった方が、素敵な造り手の方と巡り会えますように。