事故物件の不動産を見つけるのは簡単です。
不動産の知識が全くない人でも、インターネットサイトを通じて誰でも自由に書きこみができるようになったおかげで、情報の共有が手軽に行われるようになりました。
しかし、事故物件を所有するオーナーの中には、事故の事実を隠して不動産の取引をしたためにトラブルに発展してしまい、多額の損害賠償を請求されたケースがあります。
このようなケースを避けるため、事故物件の取り扱い、特に告知義務については事前に確認しておきたいですね。
この記事では、事故物件の定義や告知義務について詳しく紹介していきます。
事故物件の定義?
まず最初に、この記事で扱う事故物件の定義をはっきりしておきます。
瑕疵(かし)ってなに?
事故物件とは物件に何らかの欠陥がある場合を指し、欠陥は瑕疵(かし)と言います。 そのため、瑕疵には物理的に目に見える欠陥から、目に見えない心理的な欠陥も含まれます。代表的なものを挙げると、物理的瑕疵、法律的瑕疵、心理的瑕疵などがあります。
- 物理的瑕疵……シロアリがいる、近くの土壌が汚染されているetc
- 法律的瑕疵……建ぺい率、容積率によって建築範囲が限られているetc
- 心理的瑕疵……前の居住者が自殺した、殺人事件があったetc
ただ、一般的に事故物件とはその物件で人が亡くなって、その後誰も住んだ形跡がない不動産を指す場合が多いですよね。なお、自殺や他殺で人が亡くなった物件は「心理的瑕疵」のある不動産です。そこで、この記事では「心理的瑕疵」のある事故物件に絞って紹介していきます。
告知義務が消滅する期限は?
事故物件の事実を隠してまで誰かに契約をしてもらおうとは思わないけど、合法的に記載の必要がなければ告知を避けたいですよね。しかし、告知義務に関しては明確なルールが存在しません。
そこで、これまで行われた裁判の判例を基に、事故物件の告知義務について目安となる期間を調べてみました。
告知義務が消滅する期限は前の居住者が亡くなった要因がポイントです。要因は主に自然死、自殺、他殺の3つのケースに分けられます。
告知義務が消滅する期限に厳密なルールはありません。これから紹介するのは過去の判例に基づいた事例です。判例は全てのケースに適応できるわけではありません。あくまで目安として考えて下さい。
自然死の場合は?
事故物件になった要因が自然死の場合、基本的に告知義務はありません。過去の裁判では前の居住者の方が自然死してから半年が経過している物件について、告知義務があったのか争われましたが告知義務はなかったとして判決が出ています。
人の死は誰にでも訪れるもの、避けられるものではありません。そのため、日常の出来事として捉えられるので心理的瑕疵には当てはまらないようです。
ただし、同じ自然死でもご遺体が死後長期間放置されていた場合は告知義務が発生します。過去の判例では、発見が遅れてしまい死後4ヵ月間もの間ご遺体が放置されていた不動産に告知義務があったとして判決が出ています。
自然死の場合、ご遺体が発見された時の状況で告知義務の期限が左右される傾向にあります。
自殺の場合は?
事故物件になった要因が自殺の場合、基本的に告知義務は必要です。過去の判例では損害賠償が発生している事例があります。
前の居住者の方が亡くなられてから1年数ヵ月が経過していた物件ですが、事故物件になった要因が自殺だったため告知義務がありました。しかし、一方で事故物件になった要因が同じ自殺でも、死後2年を経過した物件では告知義務なしの判決が出た事例があります。
一般的に告知義務の目安が2年だと言われているのはこの判例が基になっているのではないでしょうか。ただし、2年で告知義務が消滅したのには理由があります。それは、対象の不動産が「シングルタイプ」で「都内」の物件だったからです。人の入れ替わりの激しい都内では、ある程度の期間が経過すれば告知の義務はないと判断したようです。
もちろん、他の地域なら似たような条件だったとしても判決が異なっていた可能性が十分にあります。
他殺の場合は?
事故物件になった要因が他殺の場合、自然死や自殺と大きく異なります。告知義務は消滅しないと考えた方が良さそうです。他殺の場合、事件の印象が地域に根強く残ってしまい、なかなか風化しません。特に、ニュースや新聞にも取り上げられてしまうような大事件だった場合はなおさらです。
8年以上経過していても告知義務は消えていませんでした。さらに、50年以上経過しても告知義務は残っていた事例があります。
事故物件になった要因が他殺の場合、告知義務は必須と考えた方が良さそうですね。
例外的なパターンはどう判断する?
事故物件になった要因が複雑だった場合、告知義務の判断が難しいですね。厳密なルールがないので専門家の意見も分かれるところです。いくつかの状況を想定して考えてみましょう。
病院に搬送されて亡くなったら?
この場合は告知義務はないと考えて大丈夫そうです。ポイントはそもそも亡くなった場所が対象の物件ではないからです。ただし、悪質な事件に巻き込まれていたり、不法な薬を投与して病院に運ばれた場合などは他の事実も判断材料にする必要があります。
飛び降り自殺は?
部屋ではなく、共用部分で亡くなられているので告知義務はないとの意見が多いようです。ただし、反対意見もあります。
やはり、次に部屋を借りようとした人が「もし前の住居者の方が共用部で亡くなられていた事実を知っていたら、そもそも借りなかった」となるようならばそれは告知義務の対象になるからです。
同じ事実でも個人で受ける印象は違うので判断が難しいですが、トラブルを避けるためにも迷ったら告知するようにするべきでしょう。
孤独死の場合は?
孤独死の場合は自然死と同様に判断します。なので、基本的に告知義務はありません。
ただし、死後かなりの期間が経過してご遺体が発見された場合は自然死と同様に告知義務があります。
事故物件になった要因 | 告知義務の有無 | 備考 |
居住者が病院に搬送されて亡くなった | 無 | |
居住者が共用部で飛び降り自殺をした | 無 | 1棟丸ごとを対象にする場合は有 |
居住者が対象の物件で孤独死 | 無 | 自然死の場合と同様 |
事故物件の不動産を運用する方法
「告知義務があるから事故物件の売却や賃貸は難しいかな……」と諦めるのは早いです。実は、事故物件にも需要があります。
例えば、事故物件の売却を専門に扱うサイトがあるのはご存知ですか?
物件を探している人の中には、事故物件であってもそれほど気にならない方がいます。告知義務があるからとネガティブに考えるのではなく、事故物件であってもかまわない人をターゲットに、今後の運用を検討してみてはいかがでしょうか?
値下げしてみる
事故物件の運用をする際に絶対に外せないのは値下げです。「できるだけ高く売却したい!」と考えるのは当然ですが、事故物件を探している方は、とにかく安く物件を探している人達がほとんどです。さらに、複数の物件を見て相見積りをしている可能性が非常に高いです。
なので、数ある事故物件の中でも特にお得だと思ってもらう必要があります。ちなみに、値下げの目安は事故物件になった要因で少し異なります。
事故物件になった要因 | 値引き率 |
自殺の場合 | 20~30パーセント引き |
他殺の場合 | 50%引き |
あくまで目安に過ぎませんが、事故物件になった要因が自殺の物件を売却する場合20~30パーセント引き、他殺だった物件を売却する場合は50%引きです。
事故物件だとしても需要があるのは確かです。ただ、事故物件でも構わないと考えている人のもともとの母数が少ないのは否めません。
事故物件を所有している他のオーナーさんもできるだけ早く売却したのは同じです。少ないチャンスを逃さないためにも、値段設定は非常に重要です。
更地にして土地を販売する
また、更地にして土地を販売することもお勧めです。
更地であれば恐怖心をかなり払しょくできるうえに、値段の安さで物件を探している人にだけでなく、より広い層から検討してもらえるチャンスが広がります。
しかし、更地であるからといって告知義務が消えるわけではありません。事故物件になった要因に関わらず告知義務は発生します。トラブルを避けるためにも告知義務を果たした上で不動産の売却を行って下さい。
事故物件の不動産についてのまとめ
事故物件の運用は事故物件を懸念する人でなく「事故物件かどうかはそれほど問題じゃない」と考えている人にいかに上手にアプローチできるかがポイントです。ただし、トラブルを避けるためにも事故物件の告知義務は確実に果たした方が間違いないでしょう。
過去の判例をうのみにするのではなく、次の持ち主や借主の方が判断しやすいよう配慮してあげて下さい。