開放感のある新築に憧れる人は多く、その中でも天井の梁を見せる『梁見せ天井』は高い人気を誇り、新築に取り入れる方も少なくありません。
ですがその一方で、「普通は隠れている梁を表に出しても大丈夫なの?」「照明器具の設置が面倒だと聞いたんだけど」などと、気になる点も多く、梁見せ天井にするか迷っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、オシャレなマイホームづくりに活躍する梁見せ天井について、基礎知識からデメリット・注意点に至るまで解説していきます。 梁見せ天井が気になっている方は、ぜひ本記事をご参考ください。
そもそも、梁って何?
なんとなく耳にすることは多いものの、具体的に聞かれると答えに窮するのが『梁(はり)』ではないでしょうか。梁とは、建物の横(水平)方向にかけられた資材で、柱を固定するだけでなく、床や屋根の重さを支えたり、地震の揺れに抵抗する重要な役割を担っています。
役割や配置される場所によって名称が変わり、大梁・小梁・床梁・火打ち梁・地中梁といった種類の梁が存在します。細かく見るとそれぞれ異なる役割を持っていますが、水平方向にかけられ、床や屋根の重さを支えるという点は、共通しています。
梁に使われる材料としては、木造であればベイマツ・杉・アカマツが一般的です。硬さ・曲げへの強度があり、シロアリなどの害虫に強い木材が好まれて使用されています。
梁見せ天井とは
建物づくりに欠かせない役割を持っている梁ですが、使い方によっては、部屋のデザインにも活用することができます。『梁見せ天井』とは、普通の梁は屋根裏に隠れて見えないのに対し、あえて隠さないことで梁をデザインの一部に取り込む手法を指します。
天井にある梁をむき出しにすることで、天井が高くなり、開放感のある部屋を演出できます。
引用:見せ梁のある家|幸栄住宅
梁見せ天井には、建物の構造の一部となっている梁を見せる方法と、飾り用の梁(化粧梁)を取り付ける方法の2種類があります。 構造に必要な梁は設置する場所が決まっていますが、化粧梁であれば、自分の好きな場所に設置できます。また、中が空洞となっている化粧梁を使用すれば、照明器具の配線を隠せるので、スッキリとした見た目に仕上げられます。
梁見せ天井のメリット
梁を見えるようにすることで、住居にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、梁見せ天井にすることで得られるメリットについてご紹介していきます。
メリット1:開放感が生まれる
外国のカフェのような開放的な空間を演出してくれるのが、梁見せ天井のメリットの1つです。 低すぎる天井は圧迫感を感じさせてしまうので、部屋にいても落ち着かない……なんてことも。天井に高さを持たせるだけで、圧迫感を無くし、空間を広く感じさせることが可能です。
参考 最適な天井高はどれくらい?天井高を高くするメリットとデメリットも解説スーモカウンター注文住宅「間取りは狭いけど、開放的なリビングにしたい」とお考えの方にとって、縦空間への広がりを作る梁見せ天井は、魅力的な建築手法といえるでしょう。
メリット2:インテリアのアレンジに幅が出せる
見せ梁は、ただ空間を広く感じさせるだけでなく、インテリアの一部に組み込むことで部屋のオシャレ度を高めてくれます。
たとえば、見せ梁として使用する梁を、塗装やクロス(壁紙)で自分好みの色にアレンジすれば、部屋に統一感やアクセントを与えることが可能です。せっかく梁を表に出すなら、色や柄にもこだわってみたいですよね。
ほかにも、見せ梁を活用した照明アレンジも、梁見せ天井にするなら検討してみたいことです。 梁の下部にレールを設置し、スポットライトやペンダントライトを付ければ、部屋のオシャレ度が一気に高まります。
日中は高窓から自然光をたくさん取り入れ、夜は梁に付けた間接照明が、暖色系の柔らかい明かりを照らす。そのように、時間帯によって活躍するインテリアを変化させられるのも、梁見せ天井の魅力です。
参考 新築につけるライトの基礎知識|よくある失敗や施主支給の手順も紹介 | コノイエコノイエ知っておきたい、梁見せ天井のデメリット・注意点
開放感あふれるオシャレな部屋づくりのために、梁見せ天井を検討する人は少なくありません。 しかし一方で、気になるのがデメリット。一生に一度の機会となるかもしれない新築づくりで、後悔するのは避けたいですよね。
そこでここからは、梁見せ天井のデメリットや注意点について、順を追って解説していきます。
デメリット1:梁の掃除が大変?
実用的な面で一番困るのが、掃除です。通常は天井裏に隠されている梁がむき出しとなっているため、梁の上部にホコリが溜まりやすくなってしまいます。 こまめに掃除ができればいいのですが、梁は高い位置にあるため、脚立や長いモップなどを使わないと掃除が難しく、悩ましい問題です。
中には、家族の中にハウスダストアレルギー持ちの人がいるため、泣く泣く梁見せ天井を断念したご家庭も存在します。
梁を掃除する場合は、高所用のモップを活用するのが一般的です。3〜5m伸びる商品を使えば、脚立いらずでホコリ掃除ができます。
また、見せ梁には『梁が天井に接しているもの』『天井から離れた位置にあるもの』の2種類があることも忘れずに。天井に接しているタイプであれば、梁の上部が天井にくっついているため、ホコリが溜まりにくい構造となっています。
梁が天井に接しているタイプ
梁が天井から離れているタイプ
デメリット2:照明器具の設置が難しい
梁に照明を設置するのは梁見せ天井の醍醐味の1つですが、アレンジの幅が広がる反面、具体的にイメージを持っておかないと、統一感の無い部屋となってしまうので、ご注意ください。
梁見せ天井の場合、天井が高くなることから、昼間は日光が入り明るい部屋となります。その一方で、照明による明かりが必要な夜の時間帯は、照明器具によっては充分な明るさを確保できないことがあります。
「夜は落ち着いた空間にしたいから、明るさはそれほど必要ない」とイメージが固まっているなら問題ありませんが、あとから「梁見せ天井にしたリビング、暗くて夜に読書ができない……」と困らないように、 梁見せ天井にする部屋の照明をどのようにするか、事前に考えておくのが賢明です。
照明の種類も様々なので、照明の特徴を整理した次の表を参考に、自分の部屋に合った照明を選んでみてください。
種類 | 特徴 |
---|---|
ダウンライト | 天井に埋め込むタイプの照明。 光が弱いので、複数設置する必要がある。 |
シーリングライト | 天井に設置するタイプの照明。 部屋全体を明るく照らせることから、メインの照明として使われる。 |
ペンダントライト | チェーンやコードで吊り下げるタイプの照明。 複数設置することで、カフェのような雰囲気を演出できる。 |
ブラケットライト | 壁に付けるタイプの照明。 寝室や廊下といった、補助照明の必要な場所に使われやすい。 |
フロアライト | 床に置くタイプの照明。 持ち運びできるタイプが多いため、インテリアに合わせて位置を変えられる。 |
スポットライト | 天井やダクトレールに取り付ける照明。 ライトを動かせば光の向きを変えられるので、照らしたい場所を自分で調整できる。 |
デメリット3:冷暖房が効きにくくなる
吹き抜けの造りと同様に、梁見せ天井は縦の空間を増やし、部屋を広く見せる効果がある一方で、部屋が広くなる分、冷暖房の効きがイマイチとなってしまうデメリットがあります。特に暖かい空気は上に行ってしまうため、エアコンだけだと居住スペースを暖めるのに時間がかかることも。
対策としては、床暖房の設置や、高気密・高断熱住宅にすることが挙げられます。
ほかにも、天井にシーリングファンを付ければ、部屋の温かい空気と冷たい空気が混ざり、部屋全体の温度を均一にしてくれるので、冷暖房の効きが改善されます。
デメリット4:耐震性が落ちる?
梁見せ天井は、梁がむき出しになっている分、他の建築手法より耐震性が劣るように見られがちです。しかし、現在では建築基準法により、最低限守らないといけない耐震性が定められているため、梁見せだからといって耐震性が極端に弱いということはありません。
梁見せ天井というデザインそのものを不安視するよりも、むしろ梁自体の品質などに注意を払うことが、耐震性を考える上で重要です。
耐震性に関する点では、ほかにも「梁に穴を開けて電気配線を通す場合、耐震性が落ちるのでは?」といった口コミもよく見かけます。 結論から言うと、建物の構造に使われている梁の場合ですと、開けられる穴のサイズや間隔に制限があります。そのため、構造で使用されている梁を『見せ梁』として活用する際、場合によっては電気配線を全て隠せず、一部を露出しないとならないこともあります。
一方、飾りとして設置する『化粧梁』であれば、建物の重さを支える役割がないため、中が空洞でも構造上の問題はありません。
参考 新築のおしゃれな梁見せ天井実例|茨城の工務店がデメリットと対策も解説ebenhouseDIYでお手軽に梁見せ天井を作ろう!
梁見せ天井と聞くと、設計段階から施工業者と念入りに相談する必要があるように思えますが、実は自分でも作れることをご存知でしょうか。
通常、木造建築の梁は木材ですが、飾りとしての梁(化粧梁)であれば、発泡スチロールや断熱材でも代用可能です。 簡単な見せ梁であれば数時間で作成可能な物もありますし、中には千円程度の材料費で自作した方もいらっしゃいます。
「ちょっとした雰囲気作りに梁見せ天井を試してみたい」と思っている方は、DIYでの化粧梁づくりを検討してみてはいかがでしょうか。
新築で梁見せの天井にする際のポイントについてのまとめ
オシャレな空間づくりに一役買ってくれる梁見せ天井。新築に取り入れる場合は、今回紹介したデメリットや注意点を把握した上で、ハウスメーカーや建築士とじっくり話し合ってみてください。
本サイト『コノイエ』では、新築住宅を建てる上で役立つヒントをたくさん掲載しています。 梁見せ天井以外にも確認しておきたいことがあれば、別の記事もぜひチェックしてみてください。
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