「新築とリフォームどっちにしよう?どっちがお得なの?」
新築とリフォーム、どちらにも良い面と悪い面があります。
しかし「なにが良くてなにが悪いか」は人それぞれなため、「新築(リフォーム)のほうが絶対お得!」とは断言できません。
新築かリフォーム、後悔しない選択をするためには、それぞれの特徴を正しく理解し、どちらが“自分にとって”価値ある住まいなのかを見極めることが大切です。
本記事では、新築とリフォームの根本的な違いや、様々な特徴を比較していきます。分かりやすい判断基準も紹介しているので、ぜひ参考になさってください。
新築とリフォームの違いを整理する
皆さんは「新築」と「リフォーム」の定義や違いについて正しく理解できていますか?
「新築(またはリフォーム)に、どの部分で、どんな利点・欠点があるのか」を正しく理解するには、まず根本的な違いを整理することが大切です。
はじめに、新築とリフォームの違いについて説明します。ご存じの方もおさらい程度に確認してみてください。
「工事の前提」が異なることで、様々な部分に差が生じる
新築とは、建物をゼロから新しく建てること(もしくは新しく建てられてから1年間未入居の建物)。リフォームとは、既存の柱や梁などの構造体や基礎部分は残し、部分的に修繕、改善、増築、減築などを行い、新築同様の状態に戻すことを指します。
引用:木造軸組工法の各部の名称
構造体や基礎などは、建物の骨格の役割を担っている大事な部分。
取り壊してしまうと全体のバランスが崩れ、強度に支障が生じるなど住まいとして機能できなくなるため元の状態を維持しなければなりません。
“新築同様の状態に戻す”とひとくちに言っても度合いは様々で、トイレやお風呂などの水廻りや、屋根や外壁などの外装部分のみといった部分リフォーム、建物の骨格となる部分以外すべて新しくするフルリフォームなど、行う対象や範囲は希望や条件に合わせて決めます。
新築とリフォームの根本的な違いは、「新しく建てるか既存のものに手を加えるか」。工事の前提が全く違います。
そして、これによって生じる様々な違いが以下の通りです。
新築 | リフォーム | |
---|---|---|
工事の前提 | ゼロから設計し、新しい建物を建てていく | 既存住宅の基礎・構造をベースに、修繕・改善していく |
間取り・デザイン | 基本は自由 | 一部制約あり |
建物にかかる費用幅 | 約700万円〜4,000万円以上(内容による) | 約200万円〜2,500万円以上(内容による) |
建物以外にかかる諸費用 | 土地代+引越し代 | 基本はなし (中古物件を購入する場合は+建物代) |
リフォームのタイミング | 築30年前後 | 部分リフォーム:早いもので築10〜15年ほど 大規模リフォーム:築20〜30年ほど |
プランニングから引渡しまでの期間 | 約6ヶ月〜2年 | 約2ヵ月〜6ヶ月 |
新築とリフォームの特徴を要素別に比較する
新築とリフォームは、工事の前提が大きく異なることから、間取りの自由度や必要な費用、リフォームのタイミング、引き渡しまでの期間などで差があることが分かりました。
つぎは、それらが具体的に「どう違うのか」を要素別に解説していきます。
購入の際に関わるローンや固定資産税の違いについても触れていきます。
- 間取りやデザインの自由度
- 性能
- プランニングから引渡しまでの期間
- 費用
- ローン
- 固定資産税の減額
それでは、1つずつ解説していきます。
間取りやデザインの自由度
新築は、土地や希望に合わせて、ゼロから自由に外観や間取り・デザインなどを決められる一方、リフォームは「建物の骨格を変えられない」という縛りがあるので、新築と等しく自由にプランを決めることはできません。
さらに、2×4(ツーバイフォー)工法は在来工法に比べて間取りの変更が難しいとされています。よって、設計の自由度の度合いで比較すると「新築のほうが高い」と言えます。
設計の自由度は依頼先によって異なる
しかし、新築だからといって完全に自由な設計ができるとは限りません。依頼先によっては、規格化された条件・プランの中から自由に選ぶスタイルや、取り引きのある建具メーカーの中から好みの建材・デザインを選ぶスタイルなど、選べる範囲が事前に決められているところもあるので、依頼先選びを慎重に行う必要があります。
基本的に建築家や設計事務所は完全自由な設計が可能ですが、大手ハウスメーカーなどは規格化されているところが多いです。なお、当サイトでは「ハウスメーカーが良くないと言われる理由」について詳しくまとめた記事がございます。併せて参考になさってください。
非公開: 建築のプロが語る、ハウスメーカーをおすすめしない理由とは?
住んでみないと分からないことも
リフォームと比べて自由に設計できる新築ですが、新しい気持ちで生活をスタートできる反面、実際の住み心地や窓からの景色などは住んでみないと分かりません。
また、なじみの無い地域の場合、近隣の環境がどのように変化していくか予想しにくいことも。
しかしこれは、「中古物件を購入してリフォームする場合」にも同じことが言えます。
リフォームでは元の家の魅力を生かせることも
リフォームの制約は「建物の骨格を変えられない」だけで、フルリフォームを行えば外観・内装ともに新築同様の仕上がりにすることができます。また、古い家独特のレトロな雰囲気は、日本伝統工法で建てられた家ならでは。自然素材を生かした家がベースならば、経年によって趣のある質感に変化していきます。
古い部分をあえて残すことで、新しさと古さをミックスさせたオリジナルのデザインを生み出すこともできます。最近では古民家のリノベーションが人気ですよね。 もちろん、築年数や構造によってはデザインだけでなく、耐震補強や断熱工事など機能や性能面の改善が必要になることもあります。
- 間取りやデザインの自由度は新築のほうが高い
- 自由度の度合いは依頼先による
- 住み心地や近隣の環境は住んでみないと分からないことも
- リフォームで元の家の魅力を生かすこともできる
性能
リフォームのタイミングは、新築で築30年前後、リフォームをした住宅では早くて築10年ほどと約20年の差があります。これは、建物が完成した後に年数が経過していくにつれ構造や設備が劣化していくためです。
新築は材料や素材はすべて真新しいものを使い、最新の耐震基準に則って施工されるため、住み始めから当面は設備や構造部分の強度に不安なく生活できます。
それに比べてリフォームは、建物の骨格となる構造自体を新しくすることはできないため、既存住宅の築年数が長いほど設備の寿命は短く、建物の強度などは低くなっています。
既存住宅の耐震基準を確認する
地震大国の日本では、建物の強度に耐震性を求めます。リフォームをする場合、既存住宅(または中古物件)がどのくらい耐震対策をされているか見極めることが重要です。
耐震基準は1981年に「旧耐震」から「新耐震」へと改正されており、1981年5月31日以前に確認申請を受けた住宅は地震に弱い傾向にあります。
旧耐震基準とは「震度5程度の中規模の地震で大きな損傷を受けないこと」で、1981年5月31日以前に確認申請を受けた建物が対象。新耐震基準とは「中地震では軽微なひび割れ程度の損傷にとどめ、震度6程度の大規模な地震で建物の倒壊や損傷を受けないこと」で、1981年6月1日以降に確認申請を受けた建物が対象です。
インスペクションで正確な劣化状況を把握する
しかし住宅の構造や築年数、環境によって劣化の進み具合はそれぞれです。耐震基準を確認しただけでは、具体的な劣化状況を把握することはできません。「解体してみたら木材が一部腐っていた」などのケースも少なくありません。
そこでオススメなのがホームインスペクション(住宅診断)です。建築について見識のある住宅診断士が、住宅の状態を調査した上で、改修すべき箇所やその時期、おおよその費用などを細かくアドバイスしてくれるので、正確に住宅の状況を把握できます。
- 新築は当面、性能に不安がない
- 築年数が長いほど建物の劣化は進んでいる
- 既存住宅(または中古物件)の耐震基準、正確な劣化状況を把握してからリフォームをするか検討する
期間
プランニングから引渡しまでの期間は、新築が約6ヶ月〜2年なのに対し、リフォームは約2ヵ月〜6ヶ月と、最低で約4ヶ月の差があります。
これは、新築は土台から新しく建てるのに対し、リフォームは土台・構造部分をそのまま生かすため、その組み立てにかかる期間が含まれていないからです。また、依頼先や内容にもよりますが、一般的に工期は住宅の価格と比例するため、価格が高いほど工期もかかります。
リフォームは事前準備に時間がかかる
リフォームの工期について検索してみると、部分的なリフォームは数日で完了するところが多いです。しかし工期は工事にかかる期間のことで、プランニングから引き渡しまでの期間ではありません。工期は短くても、現地調査や見積りの比較、ショールームめぐりなど事前準備に多くの時間を要するため、プランニングから引き渡しまでの期間を考慮して計画する必要があります。
フルリフォームなど大規模な場合は、新築と同じ期間を要することもあるでしょう。
- 住宅の価格が高いほど、工期も長くなる
- 建物完成までにかかる期間は工期だけで判断しない
- 大規模なリフォームの場合、新築と同じくらいの期間がかかることもある
施工費用
建物にかかる費用を比較すると、リフォームは約200万円〜2,500万円以上なのに対し、新築は約700万円〜4,000万円以上となっており、最低で約500万円以上の差があります。
これは、新築はゼロから建物を建築していくのに対し、リフォームは既存住宅を生かして工事を行うので、新しく取り替える部分の範囲が小規模な場合があるためです。
リフォームは現在の予算に合わせて内容を選択しやすい
リフォームは既存住宅あってこそできる工事なので、不便だと感じる部分や新しく変えたい部分を予算に合わせて内容を決めることができます。しかし、建物の劣化が激しい場合はその分補修する必要があるため、建物の強度や耐震性を事前に確認することが大切です。
また、フルリフォームをする場合には使う材料や工程も増えるため、規模や状況によっては新築よりも費用は上回るケースもあります。
新築建売+リノベーション費用はどのくらいかかるのか
建売住宅は、基本的には万人に住みやすい間取りで設計されており、注文住宅よりも価格は低い傾向にあります。
最近では、この利点を生かし、新築建売を購入した後すぐにリノベーションをする方が増えてきています。大幅に変えなくとも住みやすさを維持しやすいため、小規模なリノベーションだけでオリジナルのデザインに仕上げられます。
しかしリノベーションの内容によっては、注文住宅よりも費用が上回ってしまう可能性があるため、予算を超えないよう十分に資金計画を行うことが重要です。 規模によって価格は異なりますが、リノベーションにかかる費用は以下を参考にしてみてください。
リノベーション内容 | 費用の目安 |
---|---|
壁紙やフローリングをまるまる張り替える | 約50万円〜80万円 |
キッチンをガスからIHに変更し、洗面化粧台を交換する | 約80万円〜110万円 |
間取りの変更 | 約60万円~250万円 |
参照元:新築建売リノベーションって?成功させるポイント3ヶ条を徹底解説|幸せおうち計画
新築住宅を供給する事業者には、住宅の引き渡しから10年間の瑕疵担保責任を負うことが義務付けられていますが、リフォームで基本構造部分に手を加えてしまうと補償対象から外れる恐れがあります。
洗面化粧台やドアを取り替える程度なら問題ありませんが、窓や屋根など建物の基本構造部分に手を加える際には注意が必要です。
施工以外にかかる諸費用
新築には土地代+引っ越し代、リフォームには持ち家でない場合は中古物件代+引っ越し代が別途必要になります。「通常の土地」よりも「古家付き土地」のほうが価格は低い傾向にあり、物件価格は新築時から年数が経つほど低くなっていくため、まっさらな土地よりも中古物件のほうが価格は低いことが多いです。
しかしリフォームの場合、規模や状況によっては内装解体をする必要があることを念頭に置いておきましょう。
- リフォームは現在の予算に合わせて内容を選択しやすい
- 規模や劣化状況によっては費用が新築よりも上回ることも
- 一般的には土地よりも中古物件のほうが価格は低い
- 新築建売+リノベーションで注文住宅より費用を抑える方法もある
ローン
新築もリフォームも、ある程度はまとまったお金が必要になるため、住宅購入の際にはローンを利用する方は多いでしょう。
利用できるローンにも、新築とリフォームで大きな違いがあります。
住宅で利用できるローンは主に、新築にもリフォームにも活用できる「住宅ローン」とリフォームのみに活用できる「リフォームローン」があります。
例として、イオン銀行の住宅ローンとリフォームローンを比較してみましょう。
住宅ローンの場合、借入金額は1億円までで返済期間は最高35年ですが、審査期間が長く担保は必要。
リフォームローンの場合、審査期間が短く無担保で借入可能ですが、借入金額は500万円までで返済期間は最高10年など、内容や条件は大きく異なります。
ご自身の資金と相談しながら無理なく返せる範囲でローンを組むことが大切です。
「すまい給付金」の対象は、住宅ローン利用に限る
所得に応じて一定の給付金が受け取れる「すまい給付金」の対象は、住宅ローンを利用したときに限ります。
参照元:すまい給付金とは|すまい給付金
給付対象の要件は他にも、「返済期間が5年以上の借入であること」「第三者機関の検査を受けた住宅であること」などがあります。
住宅ローンをお考えの方は国土交通省|すまい給付金で詳しい内容を確認しておきましょう。
住宅ローンが残っていても、リフォームローンは借りられる
持ち家をリフォームする場合、「リフォームローンを利用したいが、住宅ローンがまだ残っている」というパターンもあるでしょう。
住宅ローンが残っていても、リフォームローンは借りられます。
しかし収入や住宅ローンの返済額によって借りられる額は異なるため、リフォームのタイミングをローンから見て考えることも大切です。
- 新築で利用できるのは住宅ローンに限る
- 「すまい給付金」の対象は住宅ローン利用に限る
- リフォームの内容や金額で利用できるローンが決まる
- リフォームのタイミングは、築年数だけでなくローンの借入条件も考慮する
固定資産税の減額措置
固定資産税とは、所有する固定資産(住宅)に対して課せられる税金のことで、査定評価額に応じて金額が決まりますが、新築一戸建ての場合、以下3つの要件を満たせば3年間は2分の1に、さらに長期優良住宅であれば5年間は2分の1に減額されます。
1.床面積が50平方メートル以上280平方メートル以下
2.併用住宅の場合は、居住用部分の床面積が2分の1以上
3.2022年3月31日までに新築された住宅
リフォームの場合は1年間、省エネ・バリアフリー改修は3分の1、耐震改修は2分の1に減額されます。
また、固定資産税ではありませんが、長期優良住宅化リフォームを行った際には「標準的な工事費用相当額の10%」が所得税額から控除されます。詳しい内容は国土交通省|各税制の概要から確認しておきましょう。
- 新築・リフォームともに要件を満たせば固定資産税は抑えられる
- 新築のほうが長い期間、減額措置を受けられる
新築とリフォーム、結局どちらを選ぶべきか?
これまで、新築とリフォームの様々な違いについて詳しく解説してきました。
新築、リフォーム、どちらにも良い面と悪い面があります。また、その特徴の振り分けは人それぞれです。
違いを理解できても、「結局どちらを選べばいいのか分からない」と悩んでしまう方も多いかと思います。
そこで、新築に向いているケース、リフォームに向いているケースをご紹介します。ひとつの判断基準として参考にしてみてください。
新築がおすすめ | リフォームがおすすめ |
---|---|
・劣化の少ない中古物件を探すのが面倒 ・既存住宅では、理想のデザインに仕上げられない |
・住みたいエリアに条件の良い土地がない ・リフォームの総額予算が新築取得費用の70%以下で済む |
こんな場合は新築がおすすめ
劣化の少ない中古物件を探すのが面倒
中古物件を購入してリフォームをする場合、建物の強度や耐震性、広さや立地など様々な条件の整った物件を探さなければいけないため、新築のベースとなる土地を探すよりも手間がかかる可能性は高いです。
忙しくて時間がない、住宅に求める条件が多い場合は新築が向いているでしょう。
既存住宅では、理想のデザインに仕上げられない
リフォームは、既存住宅の構造部分をそのまま生かすことが前提です。
今住んでいる家の構造上、間取りの変更が難しい、理想のデザインに仕上げるのが難しい場合は、新築を前向きに考えたほうがいいかもしれません。
こんな場合はリフォームがおすすめ
住みたいエリアに条件の良い土地がない
新築をする場合、最初にベースとなる土地探しをしなければなりません。
エリアによっては変形地や狭小地が多いなど、理想の新築を建てられるような条件の良い土地は見つかりにくいことも。エリア重視で住まいの場所を決めたいときは、中古物件の購入を前向きに考えてみてはいかがでしょうか。
リフォームの総額予算が新築取得費用の70%以下で済む
費用面で比較してみたときに、リフォームの総額予算が新築取得費用の70%以下であれば、リフォームを検討してみても良いかと思います。
新築よりもリフォームを安く見積る理由は、性能面で劣っている可能性が高く、内容によってはリフォームしても何年後かに再度リフォームする必要があり、その分費用もかかるからです。
比較する際は、同じエリア・似たようなデザインなど条件を近づけることをお忘れなく。
新築とリフォーム、両方を手掛ける会社に相談してみる
新築とリフォームの金額は、規模や状況によって変わるため、どちらがお得かは一概に言えません。
リアルな価格を把握し比較するには、新築とリフォーム両方の見積りを取得することが必要です。しかし、価格は依頼先の値段設定やプランにも左右されるため、1つの会社から新築とリフォーム両方の見積りを取ることをオススメします。
工事の内容や価格差が明確になるほか、新築・リフォーム別々に見積り依頼をする手間が省けるため、費用を比較するまでの時間短縮にもつながります。当サイト「コノイエ」でインタビューさせていただいた「つくり手」の方たちの中にも、新築とリフォーム両方を手がける会社さんはいらっしゃいます。
・デザインハウス所沢埼玉(株式会社アイライフ)
・工藤宏仁建築設計事務所
・株式会社小田倉建築設計事務所
・m・style一級建築士事務所
他にも色々なつくり手の方たちが存在します。工務店・ハウスビルダーはこちらから、建築家・設計事務所はこちらからお探しいただけます。
ぜひ参考にしてみてください。
新築とリフォームの違いについてのまとめ
新築とリフォームには様々な特徴があり、それらがメリットかデメリットかは人それぞれです。
そのため、「どちらであれば理想の住まいを叶えられるか」を総合的に判断することが大切です。
まずは自分の譲れないこだわりやポイントを洗い出し、それをクリアできるのはどちらなのか区分けしてみましょう。
費用面で判断する場合、土地や条件・依頼先で価格は異なるため、新築・リフォームごとに相見積りを取ってから判断することをオススメします。
新築とリフォームの両方を手掛けている会社であれば、1度に両方の見積りが取れるので一石二鳥ですよ。