新築住宅での雨漏りによる被害は、本来施工のミスなどがなければ発生する可能性が非常に低いトラブルとされています。 しかし、残念ですが実際には「雨漏り」は「ひび割れ」に次いで新築住宅で起きやすい不具合なのです。 参考 統計・資料等 | 統計・資料・出版物住まいるダイヤル(公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター) ゆえに、お家づくりの前に雨漏りへの対策を知っておくことは決して無駄ではありません。雨漏りが発生しづらいような設計にしたり、雨漏りが発生した際の対応を用意したりと、備えはできるだけやっておきたいところです。
今回は雨漏りが起きやすい場所と新築で雨漏りが起きる理由、雨漏りの被害について解説させていただきます。 また、雨漏りへの対策や、起きてしまった際の対応も併せてご用意しています。 現在新築住宅をお考えの方は是非ご覧ください。
雨漏りの起きやすい場所
実のところ、雨漏りしている箇所の特定は難しいことが多いとされています。 広い表面積のどこかでひび割れなどが起きて雨水が内部に侵食した場合、どこが出所なのかわかりづらくなるためですね。 そのため、まずは雨漏りが起きやすいポイントを知っておく必要があります。 雨漏りに見舞われやすい場所は、大きく分けて4箇所。 ひとつずつ見ていきましょう。
01.外壁
- 外壁のひび割れ
- シーリング・コーキング(外壁ボードの繋ぎ目)の劣化
- 外壁の欠け
外壁で雨漏りが起きる原因の典型例はひび割れによるものです。 塗装の劣化や施工不良、地盤の不安定さや地震による家の傾き、寒暖差などが原因で、外壁はひび割れしてしまいます。 また、外壁に仕込まれている防水シートの劣化や施工不良によっても雨漏りが起きてしまうことも。
なお、国土交通省においては「幅0.3mm未満のひび割れは瑕疵(かし。住宅の不備、欠陥、傷)の可能性が低い」と明記されており、日本建築学会の評価項目においても「屋外では0.3mm以下のひび割れを許容する」とされています。 参考 国土交通省告示1653号住宅:住宅の品質確保の促進等に関する法律 - 国土交通省 そのため、ひび割れ幅が0.3mm未満の場合は「ただちに手を打たなければいけない」というわけではありません。 ただし、小さなひび割れもいずれ悪化し、雨水の侵入を許す大きな不備となる可能性もあります。 早いうちの補修依頼や、ご自身での修理を行っておくとよいでしょう。
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- シーリング・コーキングの劣化
- 窓の近くのひび割れ
外壁と直接繋がる窓のサッシ。取り付け時に防水シートが貼られていない、または貼り方が不十分といった施工不良が起きてしまうと、サッシと外壁の隙間から雨漏りが起きることがあります。
近くの外壁や屋根、サッシと外壁の間を繋ぐシーリングがひび割れしていると、そこから雨水が内部にまわりサッシに雨漏りすることもあります。 台風などのかなり強い雨風にさらされた場合、引き違い窓(窓同士が交差する形式の窓)では隙間から雨が入ってしまうパターンも。
雨戸をきっちり締めておくことや吸水シート、防水テープの設置、シーリングの補修により対応したいポイントです。
また、天窓でも雨漏りが起きてしまうことがありますが、雨漏りかと思いきや窓の結露水がしたたることで雨漏りとは別の水が垂れてきていた、というパターンもあります。 この場合、家や窓の断熱対策など、別の対策を要することになります。
03.屋根
- 屋根の欠け
- 樋(雨水を流すパイプ)の破損
- 屋根材のズレ
屋根も外壁同様に、防水シートによって保護されており本来は雨漏りが起きない箇所です。 しかし、防水シートの不備や経年劣化があったり、防水シートではしのげない場所に施工不良の隙間が存在すると雨漏りが起きてしまうことも。
また、台風等の強風では思いがけない場所からの雨水の侵入を許してしまいます。
屋根からの雨漏りは「シミが現れた場所のすぐ上の屋根に、雨漏りの原因が必ずある」わけではなく、雨漏りした箇所の特定が非常に難しい部位となります。そのため、もしも「屋根からの雨漏りかな?」と感じた時は、いち早く業者を呼び、特定と修理を依頼したいところです。
また、屋根はつくりによって雨漏りへの性能が大きく変化する箇所です。 たとえば、
- 瓦を使用することで複雑になりがちな入母屋屋根や越屋根
- 軒が一箇所しかないため片側に雨水の負担が破損しやすく、屋根の裏側を雨水が伝い侵入しやすい片流れ屋根
- 平らなので雨水が長時間流れず、水はけが悪い陸屋根
などは、雨漏りのリスクが大きい屋根の筆頭となります。設計段階の時点でそれぞれの特性やメリット、デメリットを理解した上で屋根の種類を選びましょう。
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- 繋ぎ目のひび割れ
- 笠木の浮きや劣化
- ベランダの水はけが悪い
ベランダやバルコニーは、様々な要因で雨漏りが引き起こされやすいポイントです。 笠木(手すりとなる部分)と壁、壁と窓、壁と床の防水層など、ベランダには繋ぎ目が非常に多く存在します。そのため、その繋ぎ目や床部分にひび割れが入ったり、施工不良で隙間が生まれたりすると、下の階に雨漏りを起こすことがたびたび見受けられます。
また、排水口に土や葉っぱが詰まったり施工不良で流れが悪かったりすると、雨水の逃げ場がなくなりベランダに残留した水が雨漏りを引き起こすことがあります。屋根と同様に、思わぬ場所に雨漏り被害を及ぼす上に修理が大掛かりになりがちなベランダ。兆候が見えたら早いうちに修理を依頼しましょう。
雨漏りの被害
こちらでは、雨漏りによるお家への被害の代表例を解説します。
チェックポイント-雨漏りの被害編
- 上記の「“雨漏りの起きやすい場所”での兆候」がある
- 床がなんとなくふわふわとしている
- 湿ったような臭いがする。カビ臭い
- 家の中から乾いた音、空洞のあるような音がする
- 家の立て付けが悪い
- 家や家の周りに羽アリが増えた
- 蟻道(ぎどう。シロアリの通る土でできた道)が発見された
001.建材への腐食、強度の劣化
雨漏りが建材まで浸透した場合、木材は腐り金属は錆びてゆくこととなります。特に天井裏や壁の内部、床下は非常に通気性が悪く、雨漏りによる被害を強く受けやすいポイントです。 建材の腐食は建物の寿命を縮めるだけでなく強度が下がるため、地震や台風などの災害への危険性が高まってしまいます。
また、後述のシロアリの被害を受けてしまうことも。
002.シロアリの被害
湿った木材を好むシロアリ。天井や外壁などからの雨漏りで床下まで伝った雨水は木材を濡らし、シロアリの格好の餌となってしまいます。
建物が痛むスピードが上がってしまうだけでなく、排水管に悪さをしたシロアリによって水漏れが起き、急に月の水道代が跳ね上がってしまう、といったトラブルも起きてしまうようです。
003.カビの発生と健康被害
建材の内外や壁紙の裏、天井裏などに蔓延してしまう可能性があるのがカビです。
カビは、塗料や接着剤、木材や空気中のホコリなどを餌に、高温多湿な環境で増殖します。
そんなカビは独特の臭いで住み心地を悪化させるだけにとどまらず、カビ毒と呼ばれる毒素によって、住まう家族やペットの健康にまで悪影響を与えてしまうこともあるのです。
喘息やアトピー等呼吸器に関わるアレルギー症状や感染症、肺炎やガンなどのさまざまな被害を引き起こすおそれがあります。
参考 カビが引き起こす怖い病気オムロン ヘルスケア健康被害はカビだけにとどまらず、そのカビを食べるためにダニが増殖し、そのダニがアレルギー症状を引き起こす、という負のスパイラルが起きてしまうことも。 お家だけでなく、住まう方への被害も考えられるため、いち早く対処しておきたい被害です。
004.壁紙や家財への被害
雨漏りが起きて壁や天井の表面まで染みてしまうと、壁紙(クロス)にシミが生まれてしまいます。 さらに雨漏りが悪化すると水滴が滴り落ち、直下の電化製品が破損してしまったり紙類や衣類が汚れてしまうことも考えられます。
もしも水滴が落ちてくるような事態になってしまった際はバケツや雑巾を置くことで応急処置は可能ですが、お家の中の雨漏りは見た目より深刻な状態であることも考えられるため、なるべく早く修理依頼を出すことが好ましいです。
新築で雨漏りが起きてしまったら?修理費用はかかるの?
新築では通常起きることがないとされている雨漏り。しかし、冒頭でお伝えした通り、現代の新築で実際に雨漏りの被害を受けてしまう可能性はゼロとは言い切れません。 また、新築で起こる雨漏りの被害は多くの場合施工不良によるものとなってしまいます。
ここからは、もし雨漏りの被害を受けてしまった際の対策を紹介します。
保険によって新築から10年間は施工不良への補償がある
国土交通省によれば、住宅の品質確保の促進等に関する法律において「新築の完成引き渡しから10年間の瑕疵担保責任」が保証されています。 引き渡しから10年の間で住宅に欠陥があった場合、売主や施工業者は補償をしなければならない、という取り決めですね。 参考 室内の天井から雨漏りします。保険を使って補修できる?よくあるご相談 住まいるダイヤル(公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター)
新築から10年以内に雨漏りがあった際は、ハウスメーカーや工務店など、売主になるべく早く連絡をとりましょう。 雨漏りの起きている箇所を動画や写真に残しておくと、よりお話がスムーズに運びやすいです。
自然災害による雨漏りは火災保険の範囲になる可能性も
上記はお家に施工不良が認められた場合ですが、こちらは台風などの自然災害が由来での雨漏りのお話です。
台風で本来ありえないような向きの雨風により雨漏りしてしまった、樋や屋根などが破損して雨漏りに繋がってしまったといったケースでは、瑕疵担保責任の範囲内ではなくなり、火災保険の保証範囲内になる可能性があります。
こちらは火災保険・家財保険への契約内容によっても補償範囲が変動するため、一度ご自身の保険の加入状況を確認してみてください。
非公開: 火災保険は火災だけの保険じゃない!?新築で抑えるべき3つの保険もし解決しなかった場合は
雨漏りの原因を特定するのはプロの業者でも難しい仕事と言われています。
そのため、雨漏りの補修が一度終わったとしても
「その後すぐに雨漏りが起きてしまった」
「今度は別の場所から雨漏りが起きてしまった」
というトラブルも起きてしまうようです。
瑕疵の保証期間内であれば担保が働くため、再三依頼して根気強く工事をお願いしましょう。
しかし、何度か述べたように雨漏りの原因特定は難しいものです。また、瑕疵による雨漏りの場合、“欠陥のあるお家を建ててしまった”という業者に対しては、残念ながら信頼性もやや欠けてしまうというもの。
こうした場合は、雨漏りについて詳しい専門業者に調査を依頼したり、国土交通省指定の相談窓口である「住まいるダイヤル」などの第三者機関に相談することが解決の糸口となるかもしれません。
とにもかくにも、雨漏りは放置してしまうことが一番お家に悪影響を与えます。 「新築を建ててすぐに何度も工事をするなんて……」と思われてしまうかもしれませんが、状況が悪化する前にこまめに雨漏り対策を行っておいた方が結果的に手間がかからなかった、というパターンも数多くあります。 雨漏りが起きてしまった際は専門家を頼り、早めの解決をしておきたいですね。
新築の雨漏り対策についてのまとめ
新築住宅が被害を受けるおそれのある雨漏りについて説明させていただきました。雨漏りは、瑕疵の保証期間、お家の劣化、健康への被害、どれをとっても早期に対処すべきと言えるトラブルです。
もちろん、施工不良が起きない信頼できるメーカーや施工業者を選ぶに越したことはありませんが、どれほど慎重にお家づくりのパートナーを吟味していても、どれほど信頼のおけるお家づくりのパートナーでも、時には施工不良が起きてしまうことが考えられます。
早期の発見と解決を心がけ、雨漏りの被害を受けづらいお家を目指しましょう。